応用曲「エリーゼのために für Elise」その0.37

投稿日:

 盆も仕事の私である。

 さて、「エリーゼのために」、相変わらず練習中である。

 先週、珍しく家内が「ねえねえ、あの『辻井伸行』さんの『英雄ポロネーズ』、買ったやつ聴かせて」と言うから、ヘッドフォンステレオをピアノのスピーカーにつなぎ、二人で聞いた。すばらしい演奏だ。

 その時、思いつきで、ついでに大導寺錬太郎という人の「エリーゼのために」も聴いた。この人は高名なピアノの先生だ。

 「エリーゼのために」くらいの初心者向けの曲は、有名な奏者の演奏を聴いて参考にしようと思っても、なかなかレコードなどが見当たらない。しかし、「ピティナ」のホームページへ行くと、その中の「ピアノ曲事典」の中に、上の大導寺氏の演奏と、同じく高名なピアノの先生の故園田高弘氏の演奏の二つがあり、無料で聴くことができる。

 通勤時にでも聞いて稽古の足しにしようと思い、ダウンロードしてヘッドフォンステレオに入れてあったのだ。

 そこで、チョイとイタズラをした。

 大導寺氏の「エリーゼのために」を家内と聴いた後、「それじゃあ、ちょっと勉強に、ドイツ音楽の権化と言われている、南米の名ピアニスト、クラウディオ・アラウの『エリーゼ』を聴いてみようよ。これは最近発見された珍しい録音なんだ」とかなんとかテキトーなことを言って、まったく別の演奏を鳴らした。実はそれは、前回の私の演奏である。

 家内と娘たちはフムフムといいながらそれを聴き、「おお、やっぱり音色が違うわねぇ」などともっともらしくうなずいている。

 1~2分ほど聴いて、適当な頃合、

「ええい、愚か者めらが!!これはなァ、昨日のワシの演奏ぢゃッ!!」

 と、暴露してやったのであった。家内は眉間をよせて変な顔をしたが、「ナニよそれもう」と言って笑った。

 しかし、固く信じ込んで聴くと、私の素人演奏も、老いて円熟した往年の名ピアニストの演奏に聞こえなくもないところがなんだか笑える。