猫踏んじゃった

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 私のピアノは独学で、まったくのところ初心者の域をいつまでたっても出るものではないが、私の次女(小3)は近所の実力派の先生のところへ習いに行っており、少しづつではあるがピアノの演奏力を蓄えつつある。

 次女はピアノを習い始めた頃、先生に示された課題曲をいっこうに稽古しようとせず、ピアノに向かえと言うと「猫踏んじゃった」ばかり弾き、しかもその弾き方ときたら弾き飛ばしてばかりいて、ちっとも親の言うことを聞かなかった。

 だが、このところ、以前に比べれば実にしおらしく真面目に課題曲に取り組んでおり、やっとうわついた調子が収まってきたなと感じられる。

 ついこの頃のことなのだが、ある時、次女はピアノに向かうなり、しばらく弾いていなかった「猫踏んじゃった」を珍しく弾き出した。私は他の事をしながら聴くともなしに聴いていたのだが、そのうちハッとなった。

 すばらしく上手になっているのだ。たかが「猫踏んじゃった」なのだが、まるで近所に住んでいる鷹揚な物腰の、中年の雌猫「ハート」の、歩む姿を真似ているようだ。

 今日、思いついて、ピアノを稽古している次女に「オイ智香(次女)、ちょっと『猫踏んじゃった』弾いてみろよ、ちょっと丁寧にさ。録音してやるよ」と言ってみたら、ニヤッと笑ってたちどころに弾いたのがこれである。

 どうでしょう。親の贔屓目とは分っていますが、なんだか、「これが『猫踏んじゃった』なの!?」というような実に念入りな抑揚だと思うのですが。