とか言って妄想していたら

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 晩めしの関東煮(かんとうだき)で飲む妄想をしていたら、まざまざとウィスキーの味が口腔に甦り、これはさながら良い方のフラッシュバック。飲みたくなって矢も楯もたまらず、自転車に飛び乗って近所のウェルシアへ。

バランタイン924円w。 まだまだ雪も降ろうかと言う厳寒の(みぎり)だが、今日など、ふと早春の薫りが風に交じるのが見出される。人家の軒端、午後の陽光の(きらめ)きは春そのものだ。

 そんな浮ついた気分で大急ぎ、いつものバランタイン、924円で(もと)めて帰る。

 まだ日も高いが、せめて光る杯、一盞(いっせん)に鋭気を養わねば戦いの日々は()たぬ。(うそぶ)きつつ、黄金なす命の滴、干せば玉響(たまゆら)気持ちは悟道めいて、昇仙の心地。

晩めしの関東煮(かんとうだき)

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 晩めしの関東煮(かんとうだき)を、ウィスキーで食うか、日本酒で食うか、真剣に考える。まことに悩ましい。

 蒟蒻のぷるぷる熱々のところに溶き芥子(がらし)をタップリ付けて、ふぅーっ、と吹いて、ぶりゅっと齧って間髪を入れずぬる燗をぐーっ、次に大根のまだ少し固い目なところを皿に取って山椒の多い七味唐辛子をパラッと振って、その間にもう一口、ぎゅーっ、と、……ああ、こたえられん、と思う反面、大ぶりの氷をロックグラスに一つか二つ、けちけちせずになみなみと注いで、餅巾着(もちきんちゃく)か、厚揚げのよく味の()んだところを相手に、ひと口、ふた口、飲んではつまみ、やおら鍋に手を伸ばして煮抜(にぬき)卵をとって、半分齧ってウィスキーをひと口、黄身のところに煮汁をしみこませて、それを相手にまたひと口……ぬぅ、捨てがたい。

 晩酌はやはり、御菜(おかず)の一皿を相手にするのが旨い。

次女の書初(かきぞめ)

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28年智香埼玉県書きぞめ中央展覧会 金釘流の私にまるで似ず、次女は字がうまく、毎年県展の常連である。

 学校に提出した書き初めがいつものとおり県に上薦されたので見に行ってきた。銀紙の優良賞である。

いやはや、ITストラテジストもえっらいモノと同列になって

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 私は数年前に「ITストラテジスト」という資格をとった。経済産業大臣が出す国家資格だ。ITに深くかかわる仕事をしていたので、テスト勉強を通じて、ひとつ自分の知識に磨きをかけてみようと思って受験したのである。

 なかなか難しかったが無事合格し、関係者コミュニティの「日本ITストラテジスト協会」というところにも顔を出している。日本ITストラテジスト協会に参加するようになったのは、仕事の幅を広げようとも思ったし、定年が近いので、再就職のヒントを得ようと思ったこともひとつある。……年金貰えるまで、働かないと生きていけませんからね(苦笑)。

 ところで、以前からWikipediaの「ITストラテジスト」の項目には

引用;

「IT系の資格では唯一、弁護士、公認会計士、医師、技術士等と並び、厚生労働大臣によって「専門的知識等を有する労働者」に指定されており、労働基準法において特例扱いの対象となる。」

……とあって、この資格もなかなか大したモンではあった。ただ、これは旧システムアナリストからの置き換えでそう書かれていたに過ぎないきらいがあり、従来ははっきりしていなかった。

 ところが、先日、厚生労働省のサイトを見ていると、こんな告示があった。平成27年3月18日付とあるから、去年の春の告示だ。

 これらの告示には、キッパリ「ITストラテジスト」が挙げられている。しかもなお、それこそ唯一、情報処理技術者試験で挙げられているのはこれだけだ。

 えっらいこっちゃ……。

 医者やら博士やら特許持ちやらと同列になっているではないか。

 いやまあ、この告示は、「専門家は非正規でも5年雇ったりもっと長期雇ってもいいよ」という法律の細部定義なので、手放しで「わーい、俺ってすごいや」と喜ぶようなことではないのだが、だがしかし、なんとなく偉くなったような気になるのも一種の人情だ。

一杯

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 今日も引き続き、肴は蕎麦掻(そばがき)、浅草・薬研堀「陳皮多いめ」特別調合の七味唐辛子をピリリときかせ、酒は愛用の美濃風の片口になみなみと()や、安物備前風の猪口で。

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ガソリン安

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 洋諺(ようげん)に「大きな損の後には小さな得がある」といわく、これは例えば、火事で家が焼けて財産を失ったが、焼け跡を更地にしたら昔なくした貯金箱が出てきて1万円入っていた、というようなことを言い、そこからすると今日のことは当たらないのだが、しかし、それに似たちょっと得したような気になることがあった。

 すなわち、車検で、近所のトヨタへ愛車ラクティスを預けてあった。それが仕上がったので取りに行った。5年目なのでタイヤに(ひび)が入っていたりして、思いのほかお金がかかってしまった。このところ何かと()り用が多いこともあって、なんだかつまらない気持ちで車を受け取った。

 その帰り、ついでにガソリンを入れに行った。ニュースなどから認識はしていても、いざ自分でお金を払ってみるとあらためて驚く。ガソリン単価1リットル98円。

 ここ数年油が高かったこともあって、車の燃料計が下を指していてもどうもさっさと油を入れる気になれず、ついついタンクは空に近いことのほうが多かったのだが、今日は満タンにするのがなんだか嬉しいではないか。得をしたような気になった。

 経済専門家に言わせれば原油安は手放しでは喜ぶようなことではないということなのかも知れないが、生活者にとってはモノが安けりゃ単純に嬉しい、というところだ。

お、おもしろかったッ

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太郎は水になりたかった 珍しく長女が読め読めとすすめるものだから、どちらかというと億劫ながらも、という感じで読んでみたのだが、(あに)はからんや、面白すぎて、思わずゲラゲラ声出して笑ってしまった。

 「もち……?」というところが最高に面白かった。それから、妄想部の部活動風景が超現実的(シュール)でよい。

 面白いんだけど、なんっか、地味ぃ~に暗いのと、「ああ、こういう心の動きの時って、俺も中学生ぐらいの頃、あったよなア」などと思わせるところがあり、秀逸だ。

 もともとはこの漫画、「トーチWeb」というリイド社のWebマガジンで連載されていたものらしい。物理本の他に、Kindleでも読める。

Kindle本

けしからん考

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 文語体で書くときの現在推量の助動詞に「らむ(らん)」がある。

 「今まさにこうであろうなあ」という場合に使う助動詞で、私などは俳句を()むとき、この「らむ」をよく使う。去る秋、こんな俳句を詠んだ。

松茸の土やかの空青むらむ
(https://satotoshio.net/blog/?p=2893)

 この松茸のとれたところの、空が今ちょうど、青くなってるんだろうなあ、と思ったので、即吟、そのまま詠んだのだ。ちなみに、似た働きを持つ助動詞に「けむ」がある。これは「過去推量」だ。「多分、これ、こうだったんだろうなあ」という時に「けむ」を使う。

老母さぞ舞ひけむ祇園囃子過ぐ
(https://satotoshio.net/blog/?p=1488)

 これは夏に詠んだ句だ。祇園ばやしを昔舞ったものなんだろうなあ、と思ったので、そのまま詠んだのだ。

 ところで、過日、憎んでいる人物について文章を綴っていて──いや、私だって、嫌いな奴、許せない奴はいますよ、社会に生きるおっさんですからね──その人物のことを「けしからぬ奴」と書いてから、ふと、筆が止まった。

 これは、多分間違っている。

 「けしからん」の最後の「らん」は、現在推量の「らむ(らん)」ではなかろうか。

 おそらく、「けしからん」は、「()しく」「ある」「らん」のつづまったものだと思われる。つまり、「たぶん、彼奴(あやつ)はイヤでダメであろう」という現在推量だ。

 そうすると、最後の「ん」は、否定の「ぬ(ん)」ではなく、「む(ん)」である。音読するときにはどちらも同じ「ん」でも、「ぬ」と「む」では意味が違うのだ。

 「けしからん」という言葉で「けしからない(けしからず)・けしかって・けしかる・けしかれば……」などと活用を試みると、これはもう直覚的に「そんな活用はナイ」ということがよくわかる。「けしからない」なんて言い方はないのだから、文語的な「けしからぬ」というのもないはずだ。そこからも、「けしからん奴」の「らん」は、現在推量の「らん」だろう、と思われるのだ。

 ただ、ではというので「けしからむ奴」と書いてそれが通るかと言うと、通るまい。こういう書き方も見たことがない。だから、正しいのはやっぱり「けしからん奴」だろう。

 他方、池波正太郎の小説など読んでいると、「けしからぬ…」という使い方がよく出ていたように思う。

 それで通るなら、まあ、それもアリかな、と思う。大小説家にしてはじめて許される、愛すべき言葉の芸と言える。こういうのは可なのだ。

(ただし、コッチにはこういうふうに書いてある;「けしからんとは」http://yain.jp/i/%E3%81%91%E3%81%97%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%93;どうも、わからんね。多分これも正しいんだろう。)

 だがしかし、私にはそれは許されまい。やはり、私如き辺りは、「けしからん奴」と書くのが良い。