夜と晩夏

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 暑い。

 しかし、来たる8月7日(月)が立秋であってみれば、実は今が「晩夏」であるということは即座に納得のいくところである。

 時候で言えば、去る7月23日が「大暑(たいしょ)」であり、今は7月29日だから二候、これを(とな)えて「土潤溽暑(つちうるおいてじょくしょす)」の候、と言う。

 溽暑(じょくしょ)、というくらいだから暑いことには違いがないが、先述の通り時候としては既に秋隣(あきどな)りといってよい。そう思ってみると、陽が陰った時の蝉の声などに(うた)た侘しい感じが増していくようだし、夏至から既にひと月、心なしか日が短くなったようではなかろうか。

 これくらいの季節の夜のことを「夜の秋」という。「秋」とついているが秋ではない。夏の夜、それも、ちょうど今ぐらい、夜になるとふと涼しさを感じる一瞬、虫の声に秋を感じるひと時もある。こうした、そこはかとない秋を夜だけ感じる、そんな晩夏の夕べの秋の気配のことを「夜の秋」と言うのだ。歳時記でもこれは夏の季語に分類されている。「竹の秋」とか「竹の春」などというような、真逆の極端な季語とは違うが、言い得て妙の面白い季語だと思う。

夕凪(ゆうなぎ)

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