唄入り観音経・本題

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 唄入り観音経と言うと()題付(だいづけ)の「〽 遠くちらちら明かりが揺れる……」というところが知られている。

 だが、唄入り観音経の本題はこれではない。奥州一円で観音経がヒット曲になるという、可笑(おか)しくも悲しい、ケレン味のあるエピソードが本題だ。ところがどうしたことか、「唄入り観音経」の本題は、三門博の最も新しいテイチクの録音には入っていない。はっきりとはしないが、戦前の大ヒット浪曲「唄入り観音経」を、戦後吹き込み直した時に大幅に改作したものと見受けられる。そのため、間違われてしまうようだ。

 私はその辺は知っていた。ところが、ふとネットを渉猟していたら、美空ひばりがハリー・ベラフォンテに唄って見せたというエピソードの残るこの唄入り観音経、外題付の方とどうやら間違って書いているらしいブログ記事などがある。

 ハテこれは、というので更に渉猟していたら、「唄入り観音経の歌詞がわかりません」というような質問が、Yahoo知恵袋などにあり、そのベストアンサーがいい加減で間違っていたりする

 これはいかん。ここに書き記しておかないと、名曲・唄入り観音経が消えてしまう。

 美空ひばりもカバーした唄入り観音経の歌詞は次の通りである。

(……観音経とは知らないから
それからそれへと真似をして
果ては奥州一円は
観音経で持ち切りです
乳母(おんば)子守に至るまで
子供を寝かせる守唄(もりうた)に)


〽 泣くな よしよし ネンネしな

坊やの母ちゃんどこ行った
あの山越えて里行った
里のお土産(みや)に何(もら)
でんでん太鼓に(しょう)の笛
鳴るか鳴らぬか吹いてみな
いい子だ いい子だ お宝だ
ひとつ唄ってやるほどに
(イェ)泣かずにネンネするのだよ
さあさあ出したぞ(ヨーイヤナ)
念彼観音力(ねんぴかんのんりき)(エー)
刀尋(とうじん)(キタコラ エェ~)段段壊(だんだんえ)
(アァ)ネンネせェ
眠るどころか(アァ)目が()める

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

「唄入り観音経・本題」への4件のフィードバック

  1.  美空ひばりの唄う 唄入り観音経 を 楽しむうえで 一番 的確で 必要な 記事(待ってました!)。 ここで 語呂の面白さから呪文のように登場させている ネンピカンノンリキ トウジンダンダンネ の 観音経の一節については 別途 紹介 解説が 現代では必要だが。
     それよりも 小生には この浪曲の原文作者(ゴーストライター、脚本家)の存在が見えて気になる部分がーーー。三門博も 大ひばりも いい子だ いい子だ お宝だ と やっているけれど、あれは演者の原稿の読み間えで、ほんとは、その前の土産の 笙の笛 のことではないかいな。つまり 真の作者としては、アァ いいネ(音)だ いいネだ お宝だ と 子供に共感する形を取りたかったのではないかと思う。
     当時は 子 を 子 丑 寅 での ネ と同じように ひらがな感覚で使っていた。
     いまとなっては余計なお世話かもしれないけれど、小生はこの下書き作家の優しさを捨てがたく思い、ひばりさんの唄を聞くときでも、この部分にさしかかると、コをネと耳が自動的に翻訳するようになっている。
     佐藤先生の浪曲学、粋人術のブログ。美味しい肴を出してくれる隠れた、それでいてさりげない名店を見つけた気分。呑みな よーしぃ よおしー 今後ともよろしく どうぞ。 

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