「ポーツマスの旗」を読み終わる。読書は通勤電車内の楽しみだ。
それほどの大著でもなかったが、読み始めてみると案外に味わい深かった。10日ほどかけてじっくり読んだ。
主題は「ポーツマス講和会議」だ。これは日露戦争の講和会議である。だが、それを主題としながら、その中に全権外務大臣・小村寿太郎の人間像が活き活きと描き出されている。
名作だと思う。
吉村昭の作品はこういうところがあるから、好きだ。歴史的大事件を描きながら、その中心人物に焦点をあて、苦悩や喜びを浮き彫りにしていく。
この作品で描き出されている小村寿太郎は、一言で言えば、「相当な変人」である。だが、その短小矮躯に秘められた、叡智というのでもない、情熱と言うのでもない、単なる官僚的生真面目さと言うのでもなく、まさか
さて、「ポーツマスの旗」を読み終わったので、その次の読み物をもとめるべく図書館に立ち寄る。
なんとなく、また吉村昭の棚へ行き、今度は「闇を裂く道」を手に取る。丹那トンネルの建設を描いた小説だ。
吉村昭の作品のうち、これまでに読んだ中で好きなものを挙げよと言われれば、なんと言ってもやはり「高熱隧道」がその一つに挙げられる。戦前の黒部峡谷におけるトンネル開削を描いたものだ。
吉村昭の筆致で同じような作品を読んでみたいと思っていたが、この「闇を裂く道」を知らなかった。これは同じ「トンネル系」の話である。興味深く読み始める。
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