次のエレクトロニクス・ガジェットは何だろう

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 はじめの頃のヘッドホン・ステレオっていくらぐらいだったっけ、とWikipediaでウォークマンの製品一覧の項目を見てみたら、初代のが33,000円とあって、なるほど、今のスマホより少し安い程度かなあ、という印象だ。あの頃はしかし、物価が高かったから、一概に数字だけでは比較はできないかな、とは思う。

 iPhone/スマートフォンはiPhone以前にはなかったように、ウォークマン/ヘッドフォンステレオも、ウォークマン以前にはなかったものだった。

 スマホの次の、こういう「数の出るエレクトロニクス・ガジェット」って、何だろう。どんなものが出てくるだろうか。

 私としては、何か、ウェアラブルだとか、記憶を補助できるようなものがもう少し出てこないかな、と思っている。人の名前が思い出せないときに、それが視野に投影されて助けてくれる、とか。あと、文字の入力がもっとラクになるとか。

CNN.co.jp : 北朝鮮が「水爆保有」を主張、専門家は疑問視

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 いや、そりゃまあ、電気分解で重水素作って、原爆で点火すりゃあいい、っちゃあ、そりゃ、そうなんだけどさー……。

 ……。

 ないわー(笑)。

情報源: CNN.co.jp : 北朝鮮が「水爆保有」を主張、専門家は疑問視

○ 水素爆弾の動作原理などをザクッと……(Wikipedia)

祝いまつれ畏みまつれ13日の金曜日

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PHM04_0714 キリスト教が嫌いである。

 であるにもかかわらず、クリスマスにはクリスマスツリーを飾って子供にプレゼントをやるという、思えば私も変ちくりんな仏教徒である。

 さておき、昨日は13日の金曜日であった。ゴルゴダの丘に磔刑(たっけい)のあった日ということで、この日をキリスト教徒は忌み嫌うという。その嫌い方は、日本人が病院の病室番号や車のナンバーに「四」(死)や「九」(苦・柩)を嫌うのと同じくらいに縁起を担ぎ、いろいろな番号に「13」が入るのを避けるのだという。

 しかし、変じゃないか?

 キリストは磔刑にかけられて、確かに母や友の眼前で苦しみ死にしたが、それは人間・ナザレのイエスその人の災難であって、救世主(メシヤ・キリスト)の立場でなら、それは聖なる事象であるはずだ。磔刑あってこそ敬虔なる復活の聖蹟があったわけだし、石抱き十露盤(そろばん)とか獄門台などと同列の拷問道具である「十字架」は、今や陰惨な責め具の位置をはるかに遠く離れ、キリスト教の聖なるシンボルになってさえいるではないか。

 してみれば、キリスト教徒は13日の金曜日を花火を上げて祝ってもいいくらいで、むしろ祝祭日ではいか。なぜ聖人の聖人たるべき所以の日、神の神たるべき聖なる日を忌み嫌うのか。まったく、キリスト教徒ってやつは、意味がわからん。

 まあ、そのまた逆に、こうしてキリスト教が起こったからこそ、いまだにキリスト教徒はイスラム教徒と戦争で殺し合いを続けなければならず、もともとそんなことに無関係であった日本でさえもがそのお先棒を担ぎかかっている昨今の世相を考えれば、確かに、人類にとって不吉な日かもしれないが……。

 ちなみに、Wikipediaにはこれは俗説であると書かれている。

大正7年の巡航ミサイル

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 驚いた。こんなブツがあったとは知らなかった。

 先月、ドイツのV1のことにも少し触れたエントリを書いたが、巡航ミサイルとしてはこのV1こそが古今未曽有の新着想だとばかり思い込んでいた。巡航ミサイルの発想が遠く第1次大戦頃のアメリカにまでさかのぼるとは、まったく思いもよらなかった。

 だが、この映像で見る限り、必ずしもうまく行った兵器とは言い難いようだ。第一次大戦には間に合っていないし、それほど長射程でもなければ精度が良いわけでもなさそうだ。

日本ITストラテジスト協会オープンフォーラム2015

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JISTA_l 私は「ITストラテジスト」という聞き慣れない資格を持っている。経済産業省所管の国家資格で、「情報処理技術者試験」の一つだ。全部で12種類ある情報処理技術者試験のうちでも最難関の一つと言われる資格である。

 ITと経営を融合させることがITストラテジストの使命だ、とでも言えば、資格の性質を端的に言い表し得ていると思う。また、経営とITの両方をよく知る者としての位置づけの他に、専門家として高いIT技能を持っていることも期待されており、その意味から開発の難しい「組込みシステム」に関する技術も有資格者には期待されている。

 この資格の保有者を中心としたコミュニティが「日本ITストラテジスト協会」で、私も仲間に入れていただいている。今日(こんにち)、会員は600名以上おり、全国各地域ごとの支部に分かれてそれぞれ活発に活動している。

 私が所属する関東支部でも、月例会が開催され、テーマ別ディスカッションやスピーチ、講演会や勉強会などを通じて会員相互に研鑽している。

 年に一度は秋葉原で「オープンフォーラム」を催している。斯界の著名人を招いての講演や、パネルディスカッションなどが行われ、充実している。

 今年(平成27年(2015))は例年のとおり秋葉原UDXで、11月7日(土)に行われる。私も端役ながら、タイムキーパーとして当日運営のお手伝いをする予定だ。

 ITストラテジスト協会への入会そのものは、資格をまだ持っていなくても、取得を目指しているのであれば準会員として入会可能なので、興味のある方はオープンフォーラムをご覧になって、入会を検討されては如何かと思う。

そういえば、と

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 そういえばまだアレをやっていなかったな、と思いつく。

 まだやっていなかったな、というのは正確ではない。やるのは30年ぶりくらいかな、というと正確だ。

 アレ、というのは「マルチバイブレータ」という回路のことだ。

 そう、この「マルチバイブレータ」という回路ををもとに少しづつカスタマイズを進めていくと「2安定マルチバイブレータ」、つまり「フリップフロップ」になり、それはそのまま1ビット記憶素子となり、やがてコンピュータそのものにつながっていくのである。

 その原点の、「マルチバイブレータ」というのは下のような回路である。

一般的な非安定マルチバイブレータの回路図
非安定マルチバイブレータ

 私などは若い頃、職場でこの回路を随分と叩き込まれたもので、当時は二つのトランジスタのところが真空管になっている回路がさまざまな機材の中にまだ現役で存在した。真空管でマルチバイブレータを構成する場合はヒータ回路などを一緒に考えなくてはならないことや、電圧が高いことなどで、実際に作動させるにはもう少し複雑な配慮が必要になる。その点、トランジスタで構成すると電力も少なくてすみ、単純明瞭だ。

 回路自体の知財権等がどうなっているか、ということを今日まで知らなかったが、今ネットで少し検索してみると、Wikipediaには「イギリス人の物理学者ウィリアム・エックルスフランク・ジョーダンによって1919年に作られた」とある。ウィリアム・エックルスは1966年に亡くなっているが、フランク・ジョーダンの没年は不明である。電子回路の知財権に関して、著作権はあいまいでよくわからないが、回路配置利用権については、日本では申請登録が必要で、かつ登録後10年となっている。要するにマルチバイブレータの回路図をネットでコピーしたり利用したりする場合の知財権関係の問題点は、回路配置利用権については申請されていないから存在しないが、著作権についてははっきりせず、よくわからないということである。しかし、マルチバイブレータの回路図は、あらゆる教科書に作成者の紹介もなく掲載されているので、多分ネットに書いても大丈夫なのではなかろうか。

 さておき、この回路の動作原理は複雑で、理解するのは困難だが、動作結果や回路自体はご覧のように簡単なので、すぐに覚えてしまえる。すなわち、一方のトランジスタのベースをもう一方のトランジスタのコレクタにコンデンサをはさんで「たすき掛け」に接続し、それぞれの接続点に抵抗を全部で4つつなぎ、これを介して電源電圧を加え、最後にエミッタを接地する……、というふうに覚えるのだ。

 発振周期の計算は私は恥ずかしながら覚えていない。しかし、ネットを漁ると、

f=\cfrac{1}{T}=\cfrac{1}{ln(2)\cdot(R_2 C_1+R_3 C_2)}\fallingdotseq\cfrac{1}{0.69315\cdot (R_2 C_1+R_3 C_2)}

……と、すぐにその式は出てくる。つまり、コンデンサふたつと、真ん中の抵抗ふたつで周期が決まる。両側の抵抗ふたつはトランジスタに流す電流を決めると思えばよい。この両側二つの抵抗をLEDの電流調整抵抗とみなせば、LEDはここに直列につなげばよい。

 2秒に1回くらい、つまり0.5HzくらいでLEDをチカチカさせる場合を考える。とりあえず手持ちの部品で47μFの電解コンデンサがいくつかあるのでそれを使いたい。左右とも同じ周期で発振させるなら、この場合はR2とR3、C1とC2は同じ容量のものを使えばよい。なので、先ほどの式は

f=\cfrac{1}{T}=\cfrac{1}{ln(2)\cdot 2RC}=\cfrac{\frac{1}{ln(2)\times 2}}{RC}\fallingdotseq\cfrac{0.72135}{RC}

……というふうに簡単になる。

 手持ちの電解コンデンサ47μFで、0.5HzくらいのLチカをやりたいときの抵抗は、

R=\cfrac{0.72135}{0.5\cdot 47\times10^{-6}}\fallingdotseq 30695.74468\fallingdotseq 31k\Omega

……というふうになる。

 私のガラクタ箱の中に入っている一番近い値の抵抗は、10kΩだ。代わりにこれを使うと、結局、

f=\cfrac{0.72135}{RC}=\cfrac{0.72135}{10k\Omega\cdot47\mu F}=\cfrac{0.72135}{10000\times47\times10^{-6}}\fallingdotseq1.535(Hz)

……というわけで、2秒に3回くらいチカチカするものが作れる。

 とりあえず、C1とC4、つまり両側の電流調整用には330ΩとLEDを直列に入れる。

 適当なトランジスタがないので、買う。NPN型の定番品に2SC1815というのがあり、秋葉原千石電商で10個入りのパケットが150円だ。

IMG_3294

 この「2SC1815」は汎用的に使われている石なので、さまざまな電子工作にもよく登場している。余分に持っていて損はないし、10個で150円ならお金を使った気にすらならないので、一袋買っておくのは正解だと思う。

 ブレッドボードに並べれば、次のようになる。

IMG_3299

 上のほうに3端子レギュレータを設け、ACアダプタの13Vを5Vに落としている。切り欠きのあるトランジスタふたつ、切り欠きに向かって左からエミッタ・コレクタ・ベースなので、――昔はこれを「E-C-B」とも「エ・ク・ボ」とも覚えたものであった――ベースから黄色いジャンパで「たすき掛け」になっているところがよくわかる。R1・R4が下のほうの抵抗で、茶・黒・橙(1・0・3、10×10の3乗)の10kΩであることが見て取れる。

 動かすとこんな感じである。

 次に、この「Lチカ周波数」をできるだけ正確に測ってみよう。私はオシロスコープなど持っていない。そこで、LEDの電流調整抵抗の後に直列にArduinoのデジタル入力をつなぎ、LOW~LOWの間をμ秒単位で計れば、周波数がわかるわけだ。電源も5Vなので、ちょうどよい。

 スケッチをこのように書き……

//
//  MB2f.ino
//    非安定マルチバイブレータの周波数を測る。
//    27.08.23(日) 1400~
//    佐藤俊夫
//
#include <stdio.h>
//
const int MB = 2;  //  デジタル2番ピン
//
void setup() {
  pinMode(MB, INPUT);
  Serial.begin(9600);
}

void loop() {
  static unsigned long int prevtime = 0;
  static int prevstatus = HIGH;
  int nowstatus = digitalRead(MB);
  if(nowstatus != prevstatus){
    if(nowstatus == LOW){
      unsigned long int time = micros() - prevtime;
      float f = 1000000.0 / (time);
      char s[32], sf[32];
      sprintf(s, "t = %ld microsec, f = %sHz", time, dtostrf(f, 5, 3, sf));
      Serial.println(s);
      prevtime = micros();
    }
    prevstatus = nowstatus;
  }
}

 それから、このように繋ぐ。

IMG_3301

 Arduinoのシリアルモニタで観測すると、波長から周波数が計算されてくる。

非安定マルチバイブレータ周波数測定

 2.062Hzとなっているから、最初の計算の1.5Hzからすると、だいぶ誤差があるが、CR回路の発振なんて、こんなもんである。

 さて、この「非安定マルチバイブレータ」は、回路にコンデンサが含まれていることにミソがある。ふたつのコンデンサが入っているからその充放電の働きにより発振し、放っておいても時間ごとに切り替わるのである。

 そこでこのコンデンサをとっぱらい、少し回路の配置を変える。

 そうするとアラ不思議、状態を保持する1ビットの記憶素子、「フリップフロップ」になるのである。

フリップフロップ(2安定マルチバイブレータ)
フリップフロップ

 この場合、トランジスタのベースから出したスイッチを押すたび、状態が切り替わる。

 ブレッドボードに組むとこうなる。

IMG_3302

 動かしている様子である。

 ボタンを操作するたび、光っているLEDが代わる。二つの状態のいずれかを保持しているということであり、それが1ビットの記憶ということである。2安定マルチバイブレータが1ビットのメモリーだということがここからもわかる。

宰相と長門

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 このところ軍事に関して議論百出し、国会も紛糾しているようだ。議論に取り紛れてもう忘れられてしまっているが、先々週だったか、共産党の委員長がポツダム宣言に関して質問し、総理大臣の答えぶりが少々まずかったというので話題になった。

 「ポツダム宣言」は、日本の歴史に大きく関わる外交資料だ。古今未曾有のものと言ってよい。宰相たる者、自ら宰領せんとする国の重要史料の内容をわきまえていないとはどういうことだ、と、その無知をあげつらう人も多いようだ。

 しかし、戦争前後の出来事に関する知識の多寡(たか)が問題だと言うなら、まあ、戦後生まれの我々世代ごとき、片頬(かたほお)だに政治家を(わら)うことはできないだろう。

 戦後70年になんなんとし、もはや戦争の記憶は風化どころか消滅寸前である。それにつけ込んだ外患勢力が事実歪曲の歴史を創作して流布しようとし、これをまた無批判にうべなおうとしている人が大多数であるように見受けられる。この点、政治家も人々も、あるいは活動家も右翼も左翼も、はた、知識人であろうとバカだろうと、どいつもこいつも似たりよったりなのである。

 無論、かくいう私もまた、そうした衆愚の一人たるをまぬがれぬ。

 屈辱とは、こういうことを言うのだろう。

 カイロ、ポツダム、原爆、戦艦ミズーリ、……などと、最近のニュースをきっかけに考え出すと、とめどもなく思いが乱れ、胸をかきむしられるような物語が連鎖していく。

 共産党の書記長の発言にあったポツダム宣言をきっかけに、私がついそれからそれへと連想した戦艦ミズーリは、今も米国の記念史跡として永久保存が決定され、アメリカ合衆国の栄光と誇りのモニュメントとなってハワイで見学可能である。舷側にはいまだに日本の特攻機が突入した傷を残しているという。

 東京湾に停泊した戦艦ミズーリで、目眩のするようないいかげんな降伏調印──興奮したアメリカ人どもは、世紀の重大調印であるにもかかわらず、署名箇所を間違えていい加減な調印文書を作ってしまい、重光葵以下日本外交団の「このような瑕疵のある文書では、枢密院の審査が通らない」という懇願で渋々文書を作り直したという──が終わり、その後のミズーリ艦上では将兵に対し「誇りというものはこういうものだ。勝利というものはこういうものだ。それをもたらした諸兵らの尽力こそ、合衆国の宝といえるだろう」との訓示が行われたという。

 あまり強くはない将兵を国家挙げての戦略で勝利させ、しかしなお「この勝利は君たちの努力奮闘、勇気によって勝ち得られたものだ、ありがとう!」と褒めてみせる米国。それに対し、劣悪なエリート将校どもが精強純真な兵をこれでもかとぶん殴り、「キサマら徴兵など、一銭五厘のハガキ一枚でいくらでも集められるのだ」と侮辱し、拙劣極まる指揮の下の玉砕、正気とは思えぬ特攻を繰り返し、結局は戦略で敗れた日本。

 こんな対比は、想像するだけで、米国への嫉妬で気が狂いそうになる。

 その後ミズーリは、依然米国による世界戦略の重要欠くべからざる要素として居座り続け、驚くべし、湾岸戦争にいたるまで現役艦として威容を誇示し、ペルシャ湾岸にあってその巨砲弾をおもうさまイスラムの人々に撃ち込んだ。

 嫉妬と情けなさ、悲しさで気が狂いそうになるのはもちろんこうしたミズーリの腹の立つ正義っぷりもそうだが、対する日本の戦艦群がどうであったか、また後世、当の日本人たちが自らの過去をどう言っているかを思う時に耐えられぬところに達する。

 菊水特攻作戦の大和、フィリピン戦の武蔵もそうだが、これらはあまりに有名だから、多くをここでは触れまい。試みに「長門」のことを書いてみよう。

 戦艦長門は大和の前の聯合艦隊旗艦である。

 実は大和のほうは、戦後になって有名になったもので、戦前・戦中は条約違反のことなどもあってその建造や保有が秘密になっており、戦後までその艦名などはあまり知られておらず、単に「聯合艦隊旗艦」などという呼称が一般に流布していたので、この長門が太平洋戦争時の聯合艦隊旗艦であると思い込んでいた国民も多いという。

 およそ3万9千トンを超える排水量、41センチの巨砲を備え、全長は200メートルを超えていた。大正時代の初期に建造された戦艦である。無論、世界的な水準であったことは言うまでもない。当時の日本の技術力を懐疑する向きは多いが、冷静に考えると、航空や造船についていえば、現代よりも戦前のほうが日本の技術力は世界的なレベルにあった。

 この長門は、有力艦として極力温存されたため、終戦時まで稼働状態で残存した。

 私がミズーリと比べて悲しくなるのは、この後である。

 長門は、日本人の矜持粉砕のための見せしめ効果を狙ってか、昭和21年にも至ってから、原爆実験の標的艦となったのである。

 核実験場のビキニ環礁に引き出された長門であったが、日本人精神の、滅びゆく最後の鬼哭慟哭がこもったためだろうか。一発目の原爆「エイブル」をくらって艦体は大きく吹き飛ばされたものの、驚くべし、長門は沈まなかった。

 Wikipediaなどで長門の項目を見れば、巨大なきのこ雲の根本で耐え忍ぶ長門の写真が見られると思う。

 約20日後、二発目の原爆「ベイカー」の炸裂を浴びたが、なお長門は沈まなかった。

 しかし、損傷は大きく、その日、まる1日をかけて、ゆっくりゆっくりとビキニ環礁近くの海底に沈んでいったという。放射性物質まみれとなり、米国人の冷笑を満身に浴びつつ、さながら、一寸刻みに日本人の精神を絞め殺していくような具合に。

 その後、あまり知られていなかった大和のほうは、松本零士が日本人的懐古趣味、屈折した自己犠牲の美しさや詩情を「宇宙戦艦ヤマト」で表現することに成功したが、古い長門は日本人の矜持とともに、どこかへ忘れさせられたままである。

回教とダイエット

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 「ダイエットなんつう贅沢なことで悩むような人は、いっそ相互理解のため回教徒の断食のマネでもしたらどうか」などと暴言というか、雑想を書きつけてから、追っとり刀で回教徒の断食のことをWikipediaで読んでみた。

 回教の断食月とは彼ら独特の陰暦の9月のことを言い、この月に1ヶ月間行われる断食のことを「サウム」という。

 まさかに、1ヶ月も断食を継続するわけではない。日の出ている間飲食をしないという戒律であって、逆に日中の戒律を守るためには、日没後は大いに飲み食いすることが推奨されるのだという。このため、断食の時にはかえって食料品の消費が上がり、肥満する者が増えるのだそうである。

 肥満する者が増える、と言うのは、それはそうだろうなあ、という気がする。つまり、相撲取りが稽古のあとでチャンコを食って昼寝をし、それによって成長ホルモンの分泌を促してあの巨体を手に入れるのと似た理屈だ。喰い溜め・寝溜めは成長期には身長を伸ばすが、成長期以外は「横幅を伸ばす」のである。

 そうすると、回教徒のマネをしてダイエットしようなどというのは、まったくの逆効果であるばかりか、幾分、回教徒に対して失礼というか、不謹慎な気もしてきた。

 まあ、異教に対して失礼だということを言うなら、その昔のキリストの誕生に思いを致す気なんかさらにないくせに、クリスマスツリーなど飾ってプレゼント交換するくらいならまだしも、若者はクリスマスと言うと彼女とホテルに籠って性交三昧に励むことだとでも勘違いしている、なんてことのほうが、よっぽどキリスト教徒に対して失礼なのではあるが……。日本を取り巻くキリスト教圏白人国家は、よくこんなキリスト教をバカにしているとしか思えない日本人を許しておくものだと思う。

 回教の見解では、「回教徒が断食によって受けられるご利益は、異教徒が仮に断食しても、ない」のだそうで、するだけ無駄とのことである。

 この断食の起こりは、次のようなものであるそうな。

 その昔、回教が呱々の声を上げたばかりで、マホメットも教団の隆昌のために粉骨砕身努力していた頃、武勇を尊ぶ彼らは強盗をやって暮らしていた。おいおい(笑)という感じもするが、誤解のないように言っておけば、強盗をしていたからといって、時代とその地域、またかの地の文化ということを幅広く考え合わせれば、必ずしも責められることではないのである。

 で、メッカから富裕な隊商がやって来るという情報に接した彼らは、教団全勢力を挙げてこれに襲いかかったのであるが、食うや食わず、腹が減っていることもあって、また、思いもかけず敵の予備兵にしてやられ、全滅寸前のところでアラー神の加護あらたか、回教の消滅を免れたものだそうな。こうした苦難の教団揺籃期を忘れぬため、いまでも断食をして、その頃に思いを致すことになっているのだ。

 他に、面白いことが書かれていた。回教圏では今も陰暦を使うが、かつてのアジア圏のように「閏月」を置かないので、どんどん暦がずれていき、1月2月といった月の名前は、季節を表してはいないそうだ。このずれは約33年間で一巡し、もとの季節に戻るそうである。断食月の9月が浮動するわけで、だから、断食は夏であったり冬であったり、季節は一定しないのだそうである。


 このエントリは、Facebookのウォールに書いたものの転載です。