さえずり季題~草抜き~As time goes by~SOBA満月~土用鰻~花火

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 先週、今日の「さえずり季題」のお題当番が回ってきた。今日は「土用の丑」だ。それで、先週当番が回ってきた時から、今日は「土用鰻」で出題しようと決めていた。

 朝早くに支度をし、出題する。

 家の周りの夏草が梅雨を吸ってボウボウになっている。厚手のゴム手袋をはめて草抜きをする。ビニール袋3つがパンパンになった。散々蚊に刺される。

 熱いシャワーを浴びてキンカンを塗りたくってひと段落する。

 以前私が編集・作成した動画、「『カサブランカ』名場面ベスト3」というのがある。その中で、ピアニストのサムがヒロインの求めで「あの頃の曲」をせがまれて弾く名シーンがあって、ふと見たくなる。

♪ You must remenber this
A kiss is still a kiss
A sigh is just a sigh
The fundamental things apply
As time goes by

……なんぞと微吟して陶然となる。

 昼、行きつけの蕎麦屋さんへ行く。このところの気に入り店、新越谷駅傍の「SOBA満月」。

 今日の蕎麦前は「長芋の醤油漬け」で新潟の銘酒「吉乃川」を二合。

 この店の酒の肴はシンプルで飽きの来ない、美味しいものが多い。

 今読みかけの本を取り出す。平凡社の世界教養全集第3巻から、倉田百三の「愛と認識との出発」だ。「吉乃川」を呑みながら読む。

 この店は趣味の良い音楽を低く流していることが多い。今日も耳になじむ曲が流れている。読書するのにちょうど良い。気持ちいい……。

 と、そこでハッと気づく。これは、私が家でついさっきまで聞いていた「As time goes by」ではないか。しかも、繰り返し、繰り返し、流れている。

 本当に偶々(たまたま)だったのだが、実に嬉しいではないか。

 盃に一杯ほど酒の残っている頃おいに「おろし蕎麦」を十割の生粉打ちで頼む。

 大根おろしが爽やかで旨い。蕎麦の香りがよい。言うことなしである。

 「今日は花火に行かれるんですか?」と店主殿や奥様に聞かれて、「あ、いや、今日は台風6号による天候の影響で、中止と言う噂があるようですよ」などと、朝妻から耳で聞いたっきり、確かめてもいない情報を提供してしまった。結局、そのあと花火大会は実行されたのだから、ガセネタを流してしまったことになる。

 SOBA満月さん、ガセネタ流してごめんなさい。

 家に帰る。夕方まで本を読んで過ごす。いつの間にか眠ってしまう。

 晩御飯に鰻丼が出た。多少値が張るけれども、季節のものだからやっぱり美味しく、またぞろ一杯やりつつ平らげる。

 妻と連れ立って、近所の高所、「相生陸橋」へ花火見物に行く。多くの人が同じ目的で(たむ)ろしている。

 子供さん、お父さん、お母さん、若者、老人、皆ひろやかに花火を楽しんでいる。表情も明るい。

 台風の影響はほとんどないようで、しかも程よく風が吹き、涼しい。気象庁の梅雨明け発表は、関東甲信はまだだが、実感としてはもう梅雨明けと見てよかろう。

 帰りにコンビニでアイスキャンデーを買い、娘どもへのお土産にする。

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 旧六月廿六日、二十四節気は大暑二候、七十二候は「土潤溽暑(つちうるおいてじょくしょす)」である。

 昨日は雑節「夏土用」、就中(なかんづく)(うし)の日とあって、巷間(こうかん)鰻を食べることはよく行われる。

 このところ毎夜食事を(こしら)えていた長女。昨日は(いわし)を煮る、と言っていたのが午後になって面倒くさくなったらしく、「暑い~」なぞと言って手を付けぬ。IMG_3944

 得たりと妻は買い物に出かけ、このところ随分と高くなったはずの国産鰻を奮発してきた。それで、世間と同じく、例年通り昨夜の我が家は鰻の夕餉(ゆうげ)となった。

節季に、土用に、鰻に、泥鰌

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 夏至も過ぎた。だいぶ暑い。夏至を過ぎれば次の節季は半夏生が7月1日、7月7日が小暑で七夕、その次が土用、ということになろうか。

 今年の夏の土用は7月19日、正確にはこの日の15時3分だという。これは太陽高度で決まるので、このように時間まで出ている。細部は国立天文台の暦要項に詳しい。今年(平成28年(2016))のものはこれだ。

 こう書いて来ると、「じゃ、(ウナギ)食えるのはこの日ですかね」と一直線に短絡(ショート)されてしまうのだが、残念、鰻を食うのはこの日ではない。

 暦を繰ると、7月19日は旧暦六月十六日で、この日は「寅」の日である。この日から寅卯辰巳午未申酉戌亥(とらうたつみうまひつじさるとりいぬい)子丑(ねうし)……とカレンダーを数えていくと、7月30日、旧暦で六月廿七日が「土用の(うし)」だとわかるわけだ。

 鰻を喰うのはこの日、「土用の丑」の日である。

 こう書いて来ると、土用の丑に鰻を喰うのは、まるで古来の由緒正しく(ゆか)しい習俗、みたいに感じられるが、実際全然そうではなく、割合に最近──と言っても江戸時代──、派手屋の才人、平賀源内の広告活動によって広まったことはこのごろよく知られる。

 土用の丑まで待たずとも、今の時季、淡水魚で旨いものというと、やはり泥鰌(どじょう)だろうか。

 浅草の「駒形どぜう」が呼んでいる気がする。アレはうまい。また行きたいなあ。

 泥鰌に舌なめずりしなくても、私の住む大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)元荒川(もとあらかわ)流域の平地では、昔から(なまず)が名物である。白身で、天婦羅などに向く。

 夏は暑さで食欲も減退し、相対的に旨いものが減るが、なに、気の持ちようだ。氷もビールもウィスキーも日本酒もワインも肴も、どうしても旨い。