読書

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 「雪の花」を読み終わる。150ページくらいの中編だ。

 この小説は、もとは「めっちゃ医者伝」という題で出版されたものだ。一旦出版後、主人公の笠原良策の子孫から多くの資料が提供されたことをきっかけに、作者の吉村昭が大幅に加筆修正して「雪の花」と改題して再度出版された。

 「めっちゃ医者伝」の「めっちゃ」とは、福井の方言で天然痘による痘痕(あばた)顔、転じて天然痘そのものをも指すという。

 種痘の普及に命懸けとなり、私財をなげうって邁進した江戸時代の町医の生涯を描いている。

 吉村昭の他の小説と同じく、実話を題材とし、丹念な取材に基づいて書かれたものである。冷静で抑制のきいた筆致なのに、美しい風景と厳しい疫病の落差、人々の哀歓などが躍動的に描き込まれてもいて、いつものとおり、期待を裏切らない。

 引き続き別の本を読む。こちらも図書館で借りたもの。

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 片岡義男の「豆大福と珈琲」、通勤電車で読み終わる。

 短編集で、全編、コーヒーの香りがする小説だ。研がれた、独立不羈なのに相手を大切にしているカッコいい人たちのたしなむコーヒーの小説である。

 続いて、「雪の花」。吉村昭の中編。

 吉村昭がこだわったテーマの一つ、医学史の一(こま)を描き出したものだ。種痘に奔走した江戸時代の町医者、笠原良策を題材にした小説である。

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 春から以来(このかた)、定年後の就職の便(よすが)にと思い、通信講座で行政書士の勉強をしていたため、法律の教科書以外の本を読んでいなかった。

 勉強はしたにもかかわらず肝心の本番試験の願書を出しそびれ、受験が見送りになるというなんとも締まらぬ()ッぽこなことになってしまったが、通信講座そのものは終了し、修了証が出た。

 ともかくも、また読みたい本が読める。市立図書館の南部分室へ行き、3冊ほど借り出してきた。

 1冊目は入り口近くのディスプレイでふと目に留まった本。片岡義男の「豆大福と珈琲」。

 パラッと(めく)ってみるだけのつもりで手に取ったのだが、1ページ目の書き出しで吸い付けられてしまったので借り出した。短編集だ。

 表題作の「豆大福と珈琲」は、情の希薄な学者の両親の代わりに祖父母に育てられた主人公が、自分なりに再定義・再構築した家族愛に目覚めていく、というものだ。ただ、こう書くと主人公は冷酷漢のような感じがするが、決してそうではなく、暖かくのびのびと育てられた善人である。

 片岡義男独特の端正な文章がよく合う内容だ。

 2冊目は、好きな作家である吉村昭の「雪の花」。

 江戸時代に種痘を普及しようと奮闘した福井県の町医者、笠原良策の物語である。

 最後に、「絵でみる江戸の食ごよみ」という本。これも、単に目についた本を手に取っただけだ。1冊目の「豆大福と珈琲」の近くのディスプレイに置かれていた。「食べ物」が市立図書館南部分室のこのところのテーマらしく、そのディスプレイに置かれている本は全部食べ物が関係するものだった。

 読んで字のごとく、江戸時代の食べ物について、絵入りで分かり易くまとめた新書だ。

 図書館の帰り、明日に控えた衆議院選挙の期日前投票をしようと思った。私の住む新越谷では、図書館にほど近い新越谷駅のコンコース内に、仮設の建物で期日前投票所が設けられるのだ。しかし、投票所に詰めかけた数百メートルに及ぼうかと言う長蛇の列を見てウンザリし、期日前投票はやめにしてしまった。明日、ノーマルに投票すればよい。