平成26年正月から平成26年秋ごろまでの佐藤俊夫俳句

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晴れに過ぐ淑気の門や恐ろしく

正座して食ぶ七草の粥惜しく

けふ人の日と子に教ふ日は落ちぬ

をとなしき妻いたはりて薬喰

襟巻きのてんでに縊る駅舎込む

読初に離す書面やかくも老ゆ

冬北斗光る工場のスパナかな

餅の花死に人さへも無くもがな

柝の音の色かたちして寒の月

外濠や鴨点々と瑕の如

遠火事を聞きて見てまた眠りけり

耳鳴りもしんと言ひけり榾の宿

友垣の時差幾許ぞ日脚伸ぶ

笑ひあふ母子待春の日曜日

廃村や湯婆の残る捨布団

報せまで十日残るや春隣

春立つや烹炊の湯気ぬくぬくと

カフェ・オ・レの依りたき色や冴返る

新しきゐかきみづ菜を待ち設く

いま別る影はや遠し春の雪

料峭を真つ白に燃え尽きてゐる

凧見張る世はおそろしや逃げ逃げよ

はだれ雪澄まして詠むよ濡れ帰る

卒業の子と講堂を見つめけり

あのひとの封書あらたむ春夜かな

詠めば猶嘘のやうなる二月かな

恋猫の短調に鳴く底の街

春燈やけふ為すべきを止む瞳

終電のあと音もせず春の雨

むさし野の土黒く濡る鳥雲に

終電のあとのしゞまや春の雨

また会ふと言ふ煌々と春の月

あめつちも否未だ優し芽吹き初む

受験子の髪の乱れに触れにけり

わたつみもゐませ春濤返りけり

抜く足のあと水光る春の泥

春禽の羽の緑に悼みけり

うすみどり接穂挿す手は強からず

春天に歩みも永し成すべかる

燦光と霞のあひにをりにけり

春燈や正弁丹吾亭の路地

春分の指鍵盤を翔けあがる

むごきもの生らず生れけりさくら花

つばめ疾し信号青に変りけり

卒業の子と空見あぐ青かをる

息を吸ひていよゝいだすや花衣

小女子煮噛むや陽は落つ愛を泣く

拒む如糸遊たちぬ墓遠し

破れ柄杓遍路濡らして古社の杜

佐保姫の息芳しや日光路

春雨やブルースの声枯るゝ昼

世と良きの音似たりけり春の雨

虫出し来懊悩叩き出せよとや

花筏水都の夜をうづむらん

真つ白に消ゆ鳥風を浴びるべし

弥生てふ光なむ抱く重みかな

庭の妻急くわけもなし花苺

鳴る如くかつ朧夜は抱く如く

ノセントとぞ言ひて咲く小町の忌

一盞をいつくしみけり春は闌く

健児らに穀雨降るらむ背の高さ

春時雨押してアルミの私鉄かな

つつじみなアルトの声に歌ひ初む

はらからは遠し葱坊主と並ぶ

届かざる声喜怒あらず蜆取

ざらゝゝゝ蜆あれよと煮られけり

人あまた斯くまでをるや夏隣る

灯明も揺れず孤堂の暮春かな

飛行機も電車も五月直線に

雨すでに寂を押しけり今日立夏

雨粒を大きく見せて夏木立

柿若葉銀のごと輝る出勤路

柿の花うつくしき事ゴミに似る

祭髪結うて色々捨てる宵

雨止みてそろそろ高し祭笛

映す空飲み下してやソーダ水

軒深き家はしり茶をしんと置く

夏氷老若色もとりどりに

扇風機家族皆見る久しぶり

頑なに甘藍締まる陽の厨

公園の跣足みな笑む土曜かな

何をして生きる人かよ五月尽く

梅筵はや頬いたむ迂闊かな

蜈蚣唯をりて空き家の心かな

傘無理に舗道を歩む女梅雨

花皐月ひとを送らばしをれけり

雷をしほに説かばや時季の空

猫の影真つ黒にして夏の月

ナイターの右に皇居は鬱蒼と

ネクタイもせず桜桃忌明けはじむ

冷奴かどに矜持もありにけり

いずこかのベース嬰から夏至を暮る

縁遠き三人かしまし夏料理

遠雷を聴きて酔ひけり降る降らず

金魚玉二度揺れにけり三回忌

香水の箱しらじらと結納日

酒舗暮るや子燕の切る窓あをし

外濠に梅雨闌けたり褄重し

夏の音してあく雨戸朝六時

帰省子の嵩の高さよ声あふる

揚花火デジタル機器も一斉に

去るひとのジェット機凌げ雲の峰

夜低き街繰り返す残暑かな

夕凪や昔ながらの豆腐売

責任もなき青空よ原爆忌

薄化粧して盂蘭盆の閼伽を換ふ

一僧もゐぬ山門の文月かな

詩集はや閉ぢて男の秋暑かな

靖国や秋蝉千古降るが如

コーヒーの湯気まだ淡し秋の昼

シャガールも白し秋思の部屋にゐる

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