朝鮮人ツヌガ アラシト

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 岩波の日本書紀(二)に収載の日本書紀巻第六「活目入彦五十狭茅天皇(いくめいりびこいさちのすめらみこと) 垂仁天皇(すいにんてんわ(の)う)」紀。

 朝鮮(任那(みまな))人「ツヌガ アラシト」の話が出てくるのだが、これが不思議な昔話風になっていてちょっと面白い。

 そこで、その部分を現代語訳してみる。

(上掲書p.20 11行目からの漢文を現代語訳)

 朝鮮人ツヌガ・アラシトは任那(みまな)からやってきた人である。崇神天皇の頃から日本に仕えたが、垂仁天皇の代になってから国に帰りたいと申し出てきた。

 (中略)

 そもそも、アラシトがどうして日本にやってきたのか、その(わけ)は次の通りである。

 アラシトがまだ任那にいた頃のこと。ある時、あめ色をした、めでたい牛に農機具を背負わせて田舎を歩いていた。ところが、その牛が逃げてしまった。しかたがなく牛を訪ね歩いた。そのうち、ある村で留まったところ、その村のお爺さんが出てきてこう言った。

「おぬしが探しておる牛は、この村へ入ったぞよ。ところが、村役人どもが

 『この牛に載っている荷物から推測すると、この牛は食われるために来たようなもんだ。食っちまおう。なあに、持ち主が来たら、何か代わりの物でもやっとこう』

…なんぞと言って、おぬしの牛を食ってしもうたんじゃ。

そこでの、おぬしよ。知恵を授けて進ぜるわさ。もし役人どもに『牛の代金がわりに、何がほしい?』と聞かれたら、カネとかお宝なんぞを望んじゃいかんぞ。『この村で祭っている、村神さまを貰おうかい』と言いなされ。」

 そうこうするうち、村役人がやってきて、

「おう、お前が牛の持ち主か。すまんのう、あの牛、食っちまった。代わりに何がほしい?」

と言う。そこで、アラシトはお爺さんに教わったとおりに村神さまを所望した。

 その村の神様は、白い石であった。この白い石を、牛の代金としてもらいうけた。そうして、宿に石を持って帰って、寝間に置いた。

 ところがなんと。夜にその白い石は、とてもかわいい美少女に化けたではないか!。アラシトの喜びようと言ったら!

 アラシトはさっそく美少女とエッチなことをしようとたくらんだ。

 が、ちょっと眼を離した隙に、美少女は消えうせてしまった。アラシトはびっくりして、自分の女房に「お、おい、いまここにいたカワイイねえちゃん、どこに行った!?」と聞いた。女房は「さあ。東に行ったみたいだけど?」と言う。

 そこで、アラシトはその美少女を追って家を出て行った。海に来ても止まらず、どんどん東へ突き進み、ついに日本国にやって来た。これが、アラシトが日本へやってきた訳である。

 一方、アラシトが追いかけた美少女は、大阪に来て、比売語曾社(ひめごそのやしろ)の神様になった。また、大分県国東にも行き、そこの比売語曾社の神様にもなった。こうして、この美少女神は、同時に二箇所に祭られていると言う。

 ついでに、この話の白文は次の通りである。

一云、初都怒我阿羅斯等、有國之時、黃牛負田器、將往田舍。黃牛忽失。則尋迹覓之。跡留一郡家中。時有一老夫曰、汝所求牛者、於此郡家中。然郡公等曰、由牛所負物而推之、必設殺食。若其主覓至、則以物償耳、卽殺食也。若問牛直欲得何物、莫望財物。便欲得郡內祭神云爾。俄而郡公等到之曰、牛直欲得何物。對如老父之教。其所祭神、是白石也。乃以白石、授牛直。因以將來置于寢中。其神石化美麗童女。於是、阿羅斯等大歡之欲合。然阿羅斯等去他處之間、童女忽失也。阿羅斯等大驚之、問己婦曰、童女何處去矣。對曰、向東方。則尋追求。遂遠浮海以入日本國。所求童女者、詣于難波爲比賣語曾社神。且至豐國々前郡、復爲比賣語曾社神。並二處見祭焉。

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