昨日夜遅く、くたびれ果てて帰ってくると、妻子がテレビを見ている。見るともなしにそれに耳が向いた。
不世出の歌手、矢沢永吉が自動車のコマーシャルに出演している。
何か、
「やりたくないことをやる人生など面白くない。やりたくないことをやる人生など愚かだ。俺はやりたいことだけをやってきて、愉快だ。そういう人生を送るべきだ。」
……というような意味のことを言っている。
こっちはそんな言葉を聞かされて、不愉快だ。
無論、矢沢永吉の言葉ではあるまい。チャラチャラした広告屋の台本だろう。それにしてもしかし、生活人たるもの、やりたくないことでも我慢し、何かのために奉仕して生きる、そこに何らかの意味を見出す、苦しくともそれに喜びを見つける、そういう態度が必要なのと違うか?
あんなふざけたコマーシャルを作るのが年に給料1000万貰っている電通か博報堂の社員だか何だか知らんが、まったく賛同できない。あんな言葉を聞かされて、そうだそうだと愉快がる人間が一体世の中にどれくらいを占めているか、そんなことにすら見当がつかない連中があんなコマーシャルを作って世間に垂れ流している。
テレビを見ると、そういう連中に金を払うことになるから、だからテレビはあまり見ない方が良い。
テレビは大嫌いだ。テレビ屋も、こういう映像づくりばかりしていると、どんどん視聴者が減り、自分の首をじわじわ絞めることになると心しておいた方がよかろう。