読書

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 引き続き60年前の古書、平凡社の世界教養全集を読んでいる。

 第16巻を読み始めた。この巻には「人間の歴史」(M.イリーン著・八住利雄訳)「世界文化小史」(H.G.ウェルズ著・藤本良造訳)「歴史とは何か」(G.チャイルド著・ねず まさし訳)の三つが収められている。

 まずは一つ目の「人間の歴史 Kak stal chelovek gigantom / Как человек стал великаном」(ミハイル・イリーン Mikhail Il’in / Михаил Ильин著・八住利雄訳)を往きの通勤電車の中で読み終わった。

 私は子供の頃に「燈火の歴史」でイリーンに親しんだ。これは短い本だったから、小学生の頃読んだ。しかし、この「人間の歴史」を読み通したのはこれが初めてである。

 「人間の歴史」はもともと子供向けの読み物だそうだが、なかなかどうして、大人が読むに足る。

 人類の発生から有史直前までを壮大な視野とスケールで語るもので、これはそのまま、著者イリーンと言う人がどういう視野を持つ人であったかを物語る。

 最近は国際的に「SDGs」が提唱されている。しかし一方で、人間は環境との不適合による困難と、その克服によってかくまでに地上の王、万物の霊長たりえた。本書を読むとそういう思いが深くなる。

気になった箇所
平凡社世界教養全集第16巻「人間の歴史」より引用。
他の<blockquote>タグ同じ。p.146より

 他の民族に対する古代の敵意の名残りや断片は、現在でも見られる。これは不思議なことである。鉄器時代、いや、さらにアルミニュームや電気の時代になっても、他の民族に対する敵意や人種的な憎悪を説いている人々がいる。その人々は、人間は自分たちだけだと考えている。彼らの意見によれば他の人々は人間ではなく、低い種類の存在であるようである。

 他の人々(異種族)、他の血縁の人々に対する敵意は、古代原始人たちの感情や信仰の名残りである。

 歴史は、私たちに、この地上には高い民族も低い民族もないということを教えている。進歩した民族と、文化の途上でとり残された民族とがあるだけである。仕事の暦によれば、いっさいの現代人たちは、まったく同じ時代には属していない。進歩した民族は、おくれた民族を助けてやらねばならないのだ。

 が、ヨーロッパには、黒人たちや、オーストラリア人や、その他の「未開人たち」に対しては、上から見おろすような態度が取られている国がある。

 そのような国の人々は、たとえば、現在のポリネシア人は過去のヨーロッパ人であるということを理解しないし、また理解することを欲しないのである。

p.148より
アメリカの発見

 アメリカを発見したヨーロッパ人たちは、新しい世界を見つけだしたと考えたのである。

 コロンブスは、次のような言葉をきざんだ勲章を贈られた。

カスチリア(スペイン王国)とレオンのために
コロンブスは
新しい世界を発見したのである。

 が、この新しい世界は、実際は古い世界であった。ヨーロッパ人たちは、アメリカにおいて、もうとっくに忘れてしまった自分たち自身の過去を発見したのであったが、それには気がつかなかったのだ。

 イリーンは上の記述に続けて、コロンブスがアメリカを訪れた頃の先住民が母系社会を作っていたこと、また、多くの地域、もちろんヨーロッパでも古代は母系社会であったことを紹介し、論拠としている。

 次は同じく第16巻から「世界文化小史 A short history of the world」(H.G.ウェルズ Herbert George Wells著・藤本良造訳)を読む。著者のH.G.ウェルズは、SF小説の中でのことではあるが、「タイム・マシン」を世界で初めて「発明」した作家として知られる。ジュール・ヴェルヌと並ぶSF小説の父であるが、評論や論説も数多く残しており、本書はそのうちの一つである。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

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