引き続き60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第21巻、「海南小記」(柳田國男著)「山の人生」(柳田國男著)「北の人」(金田一京助著)「東奥異聞」(佐々木喜善著)「猪・鹿・狸」(早川孝太郎著)に取り掛かった。
まずは「海南小記」(柳田國男)。職場で昼休みに読み終わった。
この巻は一体何がテーマなのかわからないままに読みはじめたのだが、この「海南小記」のしみじみとした読み応えによって納得がいった。
この書は日本民俗学の泰斗、柳田國男その人が、大正時代に九州から沖縄、先島諸島までを旅したときの記録である。ところが、紀行文としてまとまった紀年体になってはおらず、訪れた土地や島々での深い印象を、さながら印象記のようでありながら、ところが明晰かつ丹念な聞き取りの記録としてこれを
日本人は大陸から来た、否、南洋から海伝いに来た、と、昔から議論は尽きない。今は遺伝子分析により相当な学術的探究がなされているが、この書が著わされた頃には、口碑や遺跡により推定するしかなかった。柳田國男は本書で、日本人大陸渡来説に真っ向から異を唱えることを控えつつ、様々な伝承や風俗の痕跡から、もしかすると日本人は南から海を渡ってきたのではあるまいかという提言を立てることに成功している。
戦争で完全に破壊された沖縄には、この書にある古い古い日本は、もはやひとかけらも残っていない。その点で稀有にして貴重の書だと思う。
本書は書かれた時期から言って全文旧仮名で書かれていたであろうことは疑いないが、この全集では仮名遣いを新かなづかいに直してあり、また文語体ではないので、昨日書かれたもののように読みやすいばかりではなく、文章に味わいがあって美しい。
言葉
盤崛
音読みは「
他の<blockquote>タグ同じ。下線太字は佐藤俊夫による。p.21より
昔工藤
犬房丸 の子孫が遠く下って、この辺に盤崛しなかったら、すなわち酒谷 盆地の歴史はないのである。
……というものであり、どうも「曲がりくねる」では意味が通らない。あるいは編集による誤植であろうか、ひょっとして、名文家柳田國男にして「
劈く
「
護国の神今は何かあらんと、おおいに憤ってその神石を劈き、分かって四塊となしたという、石の長さ五尺ばかり、青色堅実なり、十文字に割れていると、遺老説伝などにはあるが、今見るところは二尺以内の灰色の石で、竪に二つに割れている。
次
次も同じく世界教養全集第21巻を読む。次は「山の人生」で、著者は同じ柳田國男だ。これも、どういう内容か想像がつかない。