引き続き60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第21巻のうち3書め、「北の人」(金田一京助著)、早朝の通勤往路の、秋葉原の駅構内で、歩きながら読み終わる。
金田一京助と言うと、私などが子供の時分、国語辞典の編者に必ず名前が載っていたものだが、実は私は、この人がどんな業績を残した人かはよく知らなかった。
本書は金田一京助が若い頃から没頭した「アイヌの研究」に関する思い出などを記した随筆である。
この書のテーマなど知らないままに読みはじめたのだが、この書によって金田一京助の業績の大きなもののうちの一つがこの「アイヌ研究」であることを、本書によって知った次第である。
本書は、さすがは国語辞典の編者の筆頭に挙がる言語学者がものしただけあって、精緻であるにも関わらず平明で読みやすい。
私などには、この書から、金田一京助その人の、アイヌ民族への限りない愛と尊敬、
読書と昔の人の評価は、時代の影響を割り引いてしなければならない。端的に言えば、江戸時代に切腹や打ち首があったから江戸時代が残酷で野蛮であったということにはならぬし、戦後すぐあたりまで日本の野菜が「
言葉
題簽
「簽」という字は「便箋」の「箋」と同じ意味であり、読みも同じ「
- 題簽(コトバンク)
他の<blockquote>タグ同じ。下線太字は佐藤俊夫による。p.215より
たまたま題簽のお願いに柳田國男先生へ伺うと、それよりも「北の人」がよいではないかと、さっそく書いてくだすったのがすなわち本書の名となったのである。
囹圄
「
- 囹圄(コトバンク)
今のように日本語のよくできる者のなかった時代に、アイヌ部落を一身に背負って立ち、土地の官権を向こうに廻して、六年にわたる悪戦苦闘、ついに東京まで来て、大隈伯や西郷従道侯を動かして、首尾よく旭川土人の命、今の近文の給与地を安んじた偉功、そのためには最愛の妻の死にも帰らず、あまつさえ
冤罪 に問われて、囹圄 の裡 に囚われの悲壮な物語であった。
次
次も同じく世界教養全集第21巻を読む。次は「東奥異聞」(佐々木