読書

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 引き続き60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第21巻の最後、5書めの「猪・鹿・狸」(早川孝太郎著)を読み終わった。珍しく「THライナー」という日比谷線の座席指定券を買い、のんびりと座って帰宅する間に本文を読み終わり、帰宅してから解説を読み終わった。

 この書は猪・鹿・狸それぞれを狩猟する話や、これら三つの獣に関する逸話を集めたものである。実に多くの話が集められているが、ところが、その話の収集元は著者が生まれ育った愛知県長篠の「横山」というところの周囲数kmの中に限られる。狭い村落にこれほどの分量の獣にまつわる逸話があるというのは驚くべきことである。

 物理的な狩猟譚の他に、特に狸については狩って食べる話だけでなく、「化ける」「ばかす」話が多く収められており、明治時代でもそうした薄暗い地方伝承の中に多くの日本人は生きていたのだな、ということを再確認した。

 この書の著者早川孝太郎も柳田國男につながる人だそうで、本書は出版されるや芥川龍之介や島崎藤村、中国の文人・周作人などに激賞され、大正時代の末期の大ヒット作であったらしい。

言葉
山彙

 そのまま「(さん)()」と読んでよい。「()()」という言葉があるが、これは言葉の集合とでも言うような意味で、「彙」という言葉に「あつめる」「あつまる」という意味があることはここからもわかる。

  •  (漢字ペディア)

 したがって、「山彙」は「山の集まり」と解してよい。ただ、「山脈」「山系」とはやや異なり、個々の山々が一むれになっているようなものとしてのニュアンスがこの「山彙」という言葉にはある。

平凡社世界教養全集第21巻「猪・鹿・狸」より引用。
下線太字は佐藤俊夫による。p.484「解説」(鈴木棠三)より

いったい、この地方は、伝記で名高い鳳来(ほうらい)()の入り口にあたり、山としてはいわゆる()(やま)というに近い。しかし、この奥山つづきは神秘な伝承にみちた山彙であった。獣たちも、伝奇の光輪を身につけて、人里近く出没したのである。

 次は、同じく世界教養全集から、第22巻に進む。第22巻は「山行」(槇有恒著)「エヴェレストへの長い道 The True Book About Everest」(エリック・シプトン Eric Shipton 著)「山と渓谷」(田部重治著)「アルプス登攀記 Scrambles Amongst the Alps」(エドワード・ウィンパー Edward Whymper 著)の4書である。これは前21巻とは違い、題名を見ただけでどんな本かはわかる。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

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