日常雑々

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ブルース・ハープ

 若い頃からハーモニカは好きだ。同音が上下2列になった所謂(いわゆる)「クロマチック」で舌を使って伴奏を付ける吹き方などを10代の頃にマスターした。この吹き方ができる人は戦前の人などには多かったが、私の世代では古臭いと思われるのか、あまりやる人はおらず、しかし、人前でこれを披露などすると、できる人があまりいないせいか珍しがられたものである。

 一方、私の世代だと、音に「ベンド」をかけて半音や微分音を入れた渋い吹き方のほうが恰好よく受け取られる。勿論、私も「テン・ホールズ」というタイプのブルースハーモニカをいくつか持っていた。これはホーナーの「マリンバンド」、トンボの「メジャーボーイ」などだったが、こっちはそれほど上手く吹けるようにもならないまま、マリンバンドなどはどこかへ失くしてしまった。たしか、長女か、誰かにやったのだったか。

 ふと、バディ・グリーンの見事な演奏動画を見ているうち、テン・ホールズを久しぶりに吹いてみたくなった。

 テン・ホールズというとホーナーが世界的に有名だ。「マリンバンド」「ブルース・ハープ」と言った銘柄があるが、ブルース・ハープは定番と言ってよい。

 大きな楽器店でないとテン・ホールズのハーモニカなどは置いていないものだ。私の家の近くの大きな楽器店には越谷レイクタウンの「島村楽器」がある。先日立ち寄ってテン・ホールズを探してみたが、F#(嬰ヘ長調)などの変わったキーの品物はあるのに、基本的なC(ハ長調)やF(ヘ長調)がない。やはり基本的なものからよく売れてしまい、変なキーのものが売れ残るからだろうか。

 こういう時はやっぱりAmazonである。クリックすると数日を経ず届く。早いものだ。


 Cで「アメイジング・グレース」などを試してみていると、そりゃあバディ・グリーンには及ぶべくもないが、それでも惚れ惚れするようないい音が出る。いや、これは腕前ではなくて、楽器がいいからである。さすがは世界的定番品だ。

廣澤虎造

 新越谷の行きつけの蕎麦屋「SOBA 満月」へ行った帰り、サンシティのイオンへ入ったらCDやDVDのワゴンセールをやっていて、その中に廣澤虎造の清水次郎長伝があった。

 この手のものには古い掘り出し音源をCDに焼いたような粗悪品があり、どうせその(たぐい)だろうと斜めに見ていたのだが、箱の裏をよく見ると、「この作品は株式会社テイチクエンタテインメントから発売されていた音源です」とあるではないか。

 私はテイチク版の「石松金毘羅代参」「石松三十国船道中」「石松と見受山鎌太郎」「石松と都鳥一家」「石松と七五郎」「閻魔堂の騙し討ち」「お民の度胸」「石松の最後」の8話は、2話ずつ合計4枚のCDを持っていて愛聴している。かれこれ20年ほど前、品揃えで有名だった秋葉原石丸電気のレコード売り場で買ったものだ。ただ、このCDは高価で、ひとつ2千円だった。

 しかもこの盤は既に廃番らしく、今Amazonで検索してみると、中古でも5千円近い値段がついている。20年前だって、家族や周囲にもあまり理解されない趣味のために8千円も使うのはどうも遠慮しいしいということになってキマリが悪かった。

 それに、私の持っているのはこの4枚だが、話には続きがあり、本座村為五郎の悪事の(くだ)り、追分三五郎と追分宿の仇討というふうに話が続く。私の持っている4枚の最後は「切れ場」といって、いわば次の話を聴かせるためにあともう少しと言うところで話が切られている。だから、長年続きが聴きたくて仕方がなかった。

 そこへこの廉価版CDだ。

 これはもう、買うに不如(しかず)、である。

 パッケージには戦前の浪曲番付のチラシを復刻したものが同封されていて、これで1780円は安い。なかなかにお得だ。

 聴いてみた。まさしく、聴きなれたテイチクの音源に違いない。しかし、少しばかり編集されているようではある。私が気付いたのは、石松三十国船道中で乗客がお国自慢の雑談をするところだ。元のテイチクのCDには「武蔵坊弁慶と野見宿禰(のみのすくね)が相撲を取ったらどっちが強いだろう」という雑談を石松がそばで聞いて笑うというというところがあるが、その部分は今回買った方ではバッサリ落とされていた。

 また、本座村為五郎の悪事は、結局最後どうなったかわからずじまいである。

 しかし、値段と内容から言って、まず及第点ではあるだろう。

 余談、我が家にはCDプレイヤーの満足なものはない。10年ほど前、数百枚はあった手持ちのCD全てをリッピングしてMP3にエンコードし、Google Play Music、後にはYouTube Musicを使ってスマホで聴いているからだ。それで、今回もMP3にエンコードしてYouTube Musicにアップロードした。リッピング、エンコードにはWindowsのメディアプレイヤーを使った。

 ところが、エンコードした時のヘッダのファイル情報、これはID3タグと呼ばれるものだが、これがもう、メチャクチャであった。見受山鎌太郎は「身受け山鎌太郎」になって、誰の身受けするんだよというような変な名前だし、都鳥三兄弟は「宮古島三兄弟」などと、誰じゃソレという名前になってしまう。本座村為五郎の部分などは聞いたこともないマレーシアの歌手の作品になっている。Windowsのメディアプレイヤーは、CDの「TOC情報」と呼ばれる情報をネット上のCD情報と照合してこれを持ってくるのだが、そのネット上の情報がメチャクチャらしい。まあ、戦後すぐ、昭和28年(1953)頃の純邦楽のCD情報など、だれも見向きもせず、整備もしていないのだろう。

 しかもなお、メディアプレイヤーでリッピングすると、ID3v2部分がShift JISで書かれるため、YouTube Musicにアップロードすると文字化けしてメチャクチャになってしまう。ジャケット画像などもない。私はこれを、ID3uniやMp3tagなどと言ったフリーソフトを使い、Unicodeで書き直し、ジャケット画像も付け直してアップロードしている。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

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