ほっつき歩き用にバッグを一つ買う。
私の語彙では、これは「雑嚢」、英語で気取るなら「Haver sack」と言うべきものだ。兵用品の一つである。
ところが、最近はこれを「Messenger bag」と言うようだ。これは「伝令行嚢」とでも訳することができようが、そう訳したとしても、やはり兵用品の一つと言うことになる。Wikipediaの「メッセンジャ・バッグ」の項目を見ると、「自転車従事者の使用するもの」というふうに書かれているが、その解釈は無理があると思う。
洋式の男の身の回り品や服飾にはそういうものが多く、トレンチ・コートやダッフル・コート、もっと言うならサイドベンツの背広やポケットの雨蓋など、みな軍服の名残である。
女性の服飾にそういうものがないかと言うとさにあらずで、最も目に付くものと言えば女子高生のセーラー服であろう。
セーラー服はいうまでもなく各国海軍の兵服であり、いわば世界標準である。海上自衛隊の海士の制服は今もこれである。イギリス由来のものであるため、「ジョンブル」を転訛してか、俗に「ジョンベラ」と言うようだ。
ところが面白いのは、女性海士の制服はセーラー服ではなく、ブレザーとなっていることだろうか。
写真の男女は両方「海士長」の階級章をつけており、同階級の男女なのであるが、ご覧のとおり男はセーラー服、女はブレザーである。
海士は若い下級の隊員であるため、当然女性海士も20台前後の若者ということになるわけだが、昔、制度が開始された頃、若いとはいえ大人の女性にセーラー服を着せていては「シャレにならん」……とでもいうような配慮でも働いたのかどうか。詳しいことは定かにはわからない。