食い物差別

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 まことに単純極まる話であるが、犬が駄目なら豚も牛も駄目であり、魚も貝も鯨もすべて駄目である。では狂信的菜食主義者(ヴィーガン)にでもなればよいのかと言うとさにあらず、山川草木はおろか、細菌などに至るまで、全てにかけがえのない愛おしい命があることに論を()るる余地などない。

 結局これらは命がどうとか知能がどうとかではなく、「私にとって気持ちが悪い」という好き嫌いの問題、通じやすい言葉で書くなら「エゴ」の問題でしかない。

 エゴ。差別意識である。野菜を喰らう者は魚を喰らう者を(さげす)み、魚を喰らう者は獣を喰らう者を蔑む。獣を喰らう者は獣を喰らう者の中でまた、牛を喰らう者は豚を喰らう者を、豚を喰らう者は犬を喰らう者を蔑む。

 人間は醜い差別によって社会を維持しようとする。いがみあい、蔑み合う。呵々(かか)大笑(たいしょう)、未来永劫(えいごう)()むことはあるまい。