矢野峰人訳の「ルバイヤート集成」、大晦日に読み終わる。
もう、涙、涙である。
解説が変わっていて、文学者の南條竹則氏と高遠弘美氏が書いているのだが、高遠弘美氏のそれは全文旧仮名遣いである。高遠弘美氏は昭和27年(1952)生まれであるから、戦後の人であって、「旧仮名遣いネイティブ」の人ではないはずなのであるが、これは訳者矢野峰人へのリスペクトであろう。
オッサンは生きている。
矢野峰人訳の「ルバイヤート集成」、大晦日に読み終わる。
もう、涙、涙である。
解説が変わっていて、文学者の南條竹則氏と高遠弘美氏が書いているのだが、高遠弘美氏のそれは全文旧仮名遣いである。高遠弘美氏は昭和27年(1952)生まれであるから、戦後の人であって、「旧仮名遣いネイティブ」の人ではないはずなのであるが、これは訳者矢野峰人へのリスペクトであろう。
ツイッターのタイムラインで、こんなビデオが流れてきた。
本当に、私は驚くべき時代に生きている。
私は以前から、翻訳・通訳に携わる人たちが知的な職業であることに疑いをいれる余地はないかのようになんとなく考えてきた。
しかし、最近なかなか精度の良いポケット翻訳機などが発売され、テレビで明石家さんまが宣伝しているのを見るにつけ、なにやら風向きが変わってきたな、と感じるようになってきていた。
そのぼんやりとした感じが、前掲のビデオを見て鮮明になり始めた。
遠からず、翻訳者・通訳者までもが機械的な作業に携わっているだけであるとされ、いずれAIに駆逐されてしまうという幻影が垣間見えるのだ。語学に通暁した者は、もはやAIに学習させるための教師や、翻訳ロジックを記述する仕事でもするより他はなくなるかも知れない。
そして数十年を経ると、AIは語学に関して「
キリスト教徒の所説によれば、その昔、バベルの塔を積み上げて自ら神たらんとした人間たちは神の怒りに触れ、人々の言葉は相通ずることなきようバラバラにされたという。塔の建設はそのため中断し、言葉の通じなくなった人たちは世界中に分かれてしまい、話すことができなくなったのだ。旧約聖書には「
全地 は一 の言語 一 の音 のみなりき
茲 に人衆 東に移りてシナルの地に平野を得て其處 に居住 り
彼等 互 に言 けるは去來 甎石 を作り之 を善 く爇 んと遂に石の代 に甎石 を獲 灰沙 の代 に石漆 を獲たり又
曰 けるは去來 邑 と塔とを建て其 塔の頂 を天にいたらしめん斯 して我等 名を揚 て全地 の表面 に散ることを免 れんとヱホバ
降臨 りて彼 人衆 の建 る邑 と塔とを觀 たまへりヱホバ
言 たまひけるは視 よ民 は一 にして皆 一 の言語 を用 ふ今旣 に此 を爲 し始めたり然 ば凡 て其 爲 んと圖維 る事は禁止 め得られざるべし
去來 我等 降 り彼處 にて彼等 の言語 を淆 し互 に言語 を通ずることを得ざらしめんとヱホバ
遂 に彼等 を彼處 より全地 の表面に散 したまひければ彼等邑 を建 ることを罷 たり
是 故 に其 名はバベル(淆亂 )と呼ばる是 はヱホバ彼處 に全地の言語 を淆 したまひしに由 てなり彼處 よりヱホバ彼等 を全地の表 に散 したまへり
いかにもキリスト教らしいおとぎ話ではあるが、これを奉ずる白人たちはAIやクラウドにより再び一つの言葉を手に入れようとしている。彼ら白人は彼ら自ら信ずるところを否定して前に進む。キリスト教徒にとってキリスト教は、もはや雰囲気を愛でるための詩以下でしかない。
へえ、こんなのがあるんだ?……315円とかなら、買ってもいいかな……?うーん、どうしよう。今度また国会図書館へでも行くついでがあれば、その時に読めるんだけど……けど、図書館で急いで読むのは、詩の読み方じゃないしな……。国会図書館、貸出はしてないんだよな……。
島崎藤村の「若菜集」に、「高楼(たかどの)」という詩がある。嫁ぐ姉とその妹との、夕まぐれのひとときの詩だ。
唐突だが、私こと佐藤、オッサン流に現代調へ翻案してみた。
「展望台」 原詩 島崎藤村 現代調への翻案 佐藤
お姉ちゃんが結婚することになりました。
ずっと一緒に過ごしてきたお姉ちゃん。結婚式までの間、寝ても醒めても、お姉ちゃんのことで頭が一杯です。
いよいよ明日はお姉ちゃんの結婚式です。
「ねえ、お姉ちゃん。ちょっと、展望台に行ってみない?」
と誘いました。お姉ちゃんは「うん、いいよ」と言ってくれました。
小さい頃にお姉ちゃんと、この山の展望台に何度も登って、息を切らせながら下を眺め、それからいろんな遊びをしたものです。
このところ、お姉ちゃんは結婚の準備もあり、忙しくて話もできませんでした。
だから一緒によく登った展望台に、お姉ちゃんを誘ったのです。
久しぶりに登る展望台の上からは、子供の頃から慣れ親しんだ、私たちの育った街の眺めが既にもう懐かしく、いっぱいに望めました。
「お姉ちゃん、明日着る服って、もう全部出来てるんだよね?」
「あたりまえじゃない、結婚式の前にウエディングドレスがないなんて、そんなことありえないわよ」
「ねえ、お姉ちゃん、ちょっと寂しくない?」
私の問いに、ちょっと間を置いて、お姉ちゃんが答えました。
「お別れっていうのは、何度もあるわよ、あんたも、私も、これからずっと。・・・なによ、あんたがそんなこと言うから、ちょっとしんみりしちゃったじゃない、・・・あんたと私と、お父さんとお母さんと、昔からずっと一緒だったよね。」
「お姉ちゃんは幸せだよね、好きな人とずっと一緒になるんだよね。明日からもうお姉ちゃんに簡単に会えないって思うと、寂しいよ。」
「あんたは、私と年も離れてるし、これから楽しいことがいっぱい、それこそいっぱいあるわよ。恋だってするし、友達と仲良くなったり喧嘩したり、やり甲斐のあることだって見つかるかもよ?・・・そのたびに、私を思い出すかもね。私、お嫁にいったら、あんたと離れちゃうし、ひょっとしたら、もう一生のお別れかもよ?」
「お姉ちゃんって、小さい頃から私のお姉ちゃんだったよ。眼も唇も、髪も綺麗で、私、いっつもお姉ちゃんみたいになりたいって思ったよ。もう、今日でおしまいなんだよね」
「いつも、あんたが楽しく明るくしてくれたわ。お姉ちゃんが綺麗だなんて、よく言うわよ。あんたの方が優しくて楽しかったよ。歌もうまかったし、ピアノを弾いたりして、小さいころから、あんたは面白かったなあ・・・もうあんたの歌とかピアノとか、聞けないんだ」
「お姉ちゃん、結婚したら、けっこう、大変なんじゃない?家のこととか、全部お姉ちゃんがするんでしょ?お姉ちゃんホントに心配だよ、病気になっちゃうんじゃない?・・・私、今日、お姉ちゃんにあげる花でも買ってくればよかったなあ」
「もう、何泣いてんのよ、しょうがない子ね・・・もう、泣かないで、かわいい私の妹が台無しじゃない、・・・拭いてあげるから、よしよし・・・お姉ちゃん、幸せになるから。あんたのこと、絶対忘れないから。」