梅雨のフロート

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 雨の匂いはするけれど、簡単には降り出さない。暑い曇りの一日になった。私の住む越谷市は、日本でも有数の暑熱の街で、何年かに1回は南国・那覇をもしのぎ、暑さ日本一となる。さすがに暑熱王国の群馬前橋や、埼玉熊谷には一歩譲るのだが……。

 そんな日曜日の午後である。

 以前、友達が「フロート」というウィスキーの飲み方が好きだと言っていたのを思い出した。

 フロートの作り方は簡単だ。ミネラルウォーターをタンブラーかロックグラスにほどほどに入れ、少しステアし、10秒がところ冷えるのを待つ。そこへ後からウィスキーを注ぐ。この時、ミネラルウォーターと混ざってしまわないよう、そっと注ぐのだ。そうすると冷水との比重の違いにより、美しいグラデーションのシンプル・カクテルができる。

IMG_3884 使うウィスキーはバーボンでもスコッチでもよいが、グラデーションの美しい色合いを楽しみたければ色が濃い方が面白いので、樽色の濃いバーボンのほうがいいかもしれない。

 これはガブガブ飲むものでもなく、いい匂いを楽しみつつ、文庫本の一冊も手元にもってきて少しづつ飲むのだ。しばらくして喉元に(ほの)明るい蠟燭の灯火(ともしび)のようなものが(とも)る頃、不意に澄んだ水の味がして、あっさりさっぱりとする。カクテルの一分類である割にはカロリーも少なく、洒落ている飲み方だと思う。なにより、旨い。

 暑い中、かちわり氷を砕いて、いつもの酒でフロートを作ってみる。

 ()し方、反省と言うのでもなく、だがいろいろと考えるところ多し、である。