(ふゆ)(うら)らか

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 昨日は旧暦十一月三日で、日中は(ふゆ)(うら)らかに良く晴れていた。

 久しぶりに神田「まつや」へ蕎麦を手繰(たぐ)りに行った。

 入れ込みで少し寒い入り口傍の席に座を占め、蕎麦前に酒をぬる燗で一本、肴に焼海苔。

 向かいに座った頑固者らしい不愛想な男が身欠き(にしん)の煮たのを健啖していて、まことに「まつや」らしい一景と感じられた。

 「花まき」の熱いのをふうふう吹きながら手繰った。

 心地よい海苔の香りが立ち上る。蕎麦の喉越し、蕎麦汁の加減、どこをとっても申し分なし。

 程よく(ほと)びた海苔を味わいながら、そう言えばそろそろ新海苔の季節だな、とも思うが、まだ少し早い。名店「まつや」といえども、まさかに11月から新海苔など出すまい。

 海苔は春に収穫されるが、新海苔は冬寒いうちから「初物」を珍重して早々と出るのだ。暮の贈答用に選ばれるということもある。

 宵の口には針のように細く、キリッと尖った三日月が陽とともに沈んでいった。脇にクッキリと宵の明星を従えていく。

 冬らしくなった。明日はもう十二月、師走である。

 今朝は今週の「さえずり派」の季題を出題した。「さえずり派」はTwitterの俳句ハッシュタグ「#saezuriha」で詠む素人俳句だが、名の知られた俳人の方もいる。季題当番は適当に回る。当番は先週の土曜、平坂謙次さん @hedekupauda から回ってきていたのだ。

 「短日」で出題した。実際、とうに秋も終わり、夜長と言うより短日の実感が濃い。(うべな)うべけんや、研ぎすまされた針のような三日月も落日を追いかけようというものである。