貧困など増えていない

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 先日のことだ。見るともなし、つけっぱなしになっていたテレビから、NHKの人気番組の惹き文句が耳に入ってきた。

 「子供の6人に1人は貧困である」という。

 私の知人にはデータに取り組んでいる人も多く、統計に詳しい人もたくさんいる。この人たちは、おそらくであるが、この番組の惹き文句を聞いて、私と同じように「やれやれ…」と思っているに違いない。

 所得の分布が正規分布に従うとしよう。

 もう、こう書いた時点で、私の友人知己のみなさんは、「ああ、わかったわかった、言わずもがなのわかりきったことを言うなよ佐藤よ。ばかばかしいじゃないか」と言うだろう。だが、痛々しく、かつくだくだしく、書かずにはおれない。

 仮に、「国の貧困基準」なるものを、平均から1σ下げたところに決めるとしよう。残差自乗平均だの分散だのということは今さら解説すまい。計算するまでもなく、1σより下が貧乏人だというなら、ざっと17、8パーセントは常に貧困だ。そりゃ、6人に1人は、貧乏に決まっている。

 施策を打とうがなにしようが、貧困というのが他者との比較に基づく相対的なものである以上、そうなる。

 テレビって、なんでこういうものの言い方をするんだろう。