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 吉村昭の短編集「羆」を読み終わる。

 吉村昭と言えばノンフィクションに題材をとった緊張感のある作品が持ち味だが、この作品集は違っていて、様々な動物に関わる人間たちを描いている。

 5種類の動物が題材だ。仔から育てた羆に裏切られる猟師を描いた「(ひぐま)」。金魚の飼育に関わる周囲の男女たちを少年の目から描いた「蘭鋳(らんちゅう)」。闘鶏にかける青年と、その虚無を描いた「軍鶏(しゃも)」。苛酷な伝書鳩レースにまつわる男女を描いた「鳩」。豊漁に湧く寒村と、それに背を向けざるを得ない悲しい親子を描いた「ハタハタ」。

 どの作品も、どこかに、何らかのエロチックな要素を持っていて、それが生命というものを連想させ、かつ、人間臭い哀感を高めている。吉村昭の腕前の凄さ、作家のテクニックが味わえるのは、この中では「蘭鋳」だろうか。

 さて、次は図書館でなんとなく手に取った一冊。「新訂 魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝」である。

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 引き続き吉村昭作品を読む。「敵討」。敵討ちに関する短編作品2話収録。

 これは平成13年(2001)初版と言うから、吉村昭が亡くなる5年前、晩年の作品だ。

 次は動物に関する短編5話収録の「羆」。