デケェ(ささや)き声

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 あれはたしか、定年で自衛隊を()める1年くらい前、最終ポストの、情報セキュリティや守秘の責任室長(情報保証・保全室長)をしていた頃のことだったか。新コロの猖獗(しょうけつ)っぷりたるや、もはや最大火力と言ってよいほどの猛威を極めていたが、紙の秘密文書を(つかさど)らなければならない仕事の特性上、テレワークへのシフトが難しく、私はガラ空きになってしまった通勤電車で毎朝毎晩、自宅から市ヶ谷まで通勤していた。

 その日、私は早めに仕事を切り上げ帰りの電車の中の人となった。都心から北千住に向かう日比谷線は三ノ輪と南千住の間で地上に出る。次第次第に陽永(ひなが)となる心地よさ、暮れ(なず)んでいる黄色い光の中を電車はのんびりと走っ “デケェ(ささや)き声” の続きを読む

コロナウイルスどこ吹く風

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 それにしても大東京のサラリーマン諸氏には恐れ入る。学校が休みになろうが政府の自粛指示があろうが、なんの関係もなく押し合いへし合いの満員電車で沈黙通勤、混み具合なんか普段と全く変わらない。「テレワーク?なんスかソレ。営業は足で稼ぐんスよ」みたいな顔をしている人が半分ぐらいいて、残りの半分は「ワシはマスクなんか絶対するものか、アメリカでは効果がないと言っている、だいたいマスクなんてものは、菌がこもって気色悪いんぢゃッ!」……というような顔をしたスッピン・マスクなしの頑固爺の群れである。女の人も、ヒールの(かかと)の音も高くカツカツカツカツ、「何がコロナウイルスよお給料貰わなきゃ生きていけないでしょうがバカヤローあほんだら!」みたいな怒りを眉宇(びう)にパンパンに(みなぎ)らせて、物凄い勢いで下りエスカレーターの右側を駆け抜けていく。

 今日の夜なんて、いつもどおり「ハナキン」の夜、街の居酒屋の入り口をちょっと覗くと、今時(いまどき)煙草の煙がもうもうと立ち込めた店の中で、酔眼のおっさん連中が冷奴なんぞを前に赤い顔して「それがよォ、お(めェ)、アッチのほうがコレもんでよォ」などと、大声で御託(ゴタク)を並べている。ガールズ・バーの前にはいつもと同じお姉さん、キャバクラの前にはいつもと同じお兄さんが呼び込みに余念がない。

 思うに、ネットで恐怖説を拡散しているのは、おそらくこうした、どこ吹く風の実際の光景など全く見ていないような自営業の人などが主体なのではあるまいか。

 人類はこれまで、梅毒やペストや結核や黄熱病など、恐るべき微生物感染症を克服してきた。そこからすると、今般の事態が収束した暁には、また新たな人類に進化しているだろう。無論、それは、このコロナウイルスなどどこ吹く風の強靭な背広通勤集団によってなされるのであろうことに疑いを()れる余地はない。

雑感少々

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プロ

 「佐藤プロ~、ちょっと」と呼びかけられたので、「いや、プロだなんてそんな、よしてくださいよ」と謙遜したら、「何勘違いしてるの、プロレタリアートでしょ」と真顔で言われ、腹が立つという想像をした。

 ……想像かい。

空目

 「サイバー攻撃露が関与」という新聞の見出しを遠くから瞥見(べっけん)して、「サイバー攻撃霞が関?」と見間違え、また何かあったんかい……!と身構えたが、老眼と思い込みによる空目(ソラメ)だった。

言い換えの猥褻(わいせつ)

 昔から言われていることで、言い古されてもはや口にもしたくなく、文章に綴りたくもない飽き飽きした言い分だが。

 戦争への忌避感による軍事用語の言い換え、つまり、「軍事」を「安全保障」、「戦争研究」を「平和研究」、「戦闘」を「防衛」、「歩兵」を「普通科」……挙げていけばもうエンエンとキリがないが、これは猥褻である。

 猥褻。読んで字のごとく、ワイセツだ。

 つまり、「モザイクのかかったエロビデオ」を見ている感じがするのである。クッキリと写り込んだ違法ノーカットエロビデオよりも、余計にいろいろと妄想していやらしい。実際のところ、あんまりにもアケスケにクッキリ写ったのは、ちょっとした不潔感もあって多少こっちも辟易(へきえき)するが、モザイクのかかったソレはこちらの(あきた)りなさもあって脳内で勝手に清潔化され、かえって助平(スケベ)であり、いやらしいのである。

 軍事用語の言い換えも同じことだ。

 「戦争」を「平和」と言い換えてモザイク隠しにするものだから、もう、よけいにあんな戦争やこんな軍事……、とあれこれ考えが巡ってしまい、平和だの安全だの言えば言う程かえって危険で、漂うバイオレンスの香りがオトコノコを()き付け、暴走させてしまうのだ、だから猥褻だと言うんだ。

潘基文(ばんきぶん)

 ほんと、韓国人ってのも、トホホだよなあ。取り巻き連中が有力者の足を引っ張るわけだ。

 朴槿恵(ぼくきんけい)にしたって結局はそうだったわけだし、歴代韓国大統領ほとんど全部、取り巻きが私腹を肥やしたりしてダメになってンだもんな。

 まったく、チャンとしろよ、と。早く秩序を取り戻してくれないと、北朝鮮に向き合う国がなくなっちまうんだよ。韓国70万の陸上兵力は、朝鮮半島の鎮め石として、今後永久に持続してくれないと困る。しかも韓国は、本気を出せば動員令一下150万もの大兵力に膨れ上がる強烈な軍事国家なのだ。あの狭小な国土にそんな高密度の兵力を持て余す韓国軍部が国内情勢を(はかな)んでクーデターなんか起こしてみろ、目も当てられやしない。

 そういう点で、日本の右翼も、単に日韓合意不履行だけを癇癪(かんしゃく)まかせに言い募ってちゃアだめなのさ。連中の軍事力を当て込んで、コッチが楽をする道を考えるンだよ。アイツらをおちょくり誤魔化し操って、日本のために死んでもらうにはどうしたら一番いいのか、方策を必死で考えろ。昔のイギリスみたいに、卑怯に生き延びなくっちゃ、なあ。

三島由紀夫肉声テープ

 亡くなってこんなに経つのに、まだまだ話題性があるんだな、とむしろ不思議に思う。

 丁度世間で憲法問題も色々と取沙汰されている折柄だ。そのことを含みつつこのテープの一部を聴くと、三島が憲法について言っていることはストレートで、純というか、生真面目(きまじめ)というか、戦後70年を経て来た私達には(むし)初心(うぶ)にすら感じられる。

 三島由紀夫の忌日「憂国忌」は11月25日である。彼が市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部に乱入し、割腹自殺を遂げたのは昭和45年(1970)だ。今は防衛省の本庁舎となった市ヶ谷に、旧東部方面総監部庁舎の一部――それは実は旧大本営であり、極東軍事裁判所法廷でもある――が保存されており、そこには三島が斬り付けた刀傷が今も残る。

 三島由紀夫の膨大な作品群は、あと3年ほどで著作権が切れ、ネットなどで読めるようになるだろう。

任天堂

 ……う~ん……。

 まあ、通勤電車で年甲斐もなくゲームに熱中している中年のおっさん・おばはんが持ってるのって、10年ほど前は間違いなく「NINTENDO DS」だったんだが、今は爺・婆がスマホで無料(タダ)の「なんちゃらツムツム」だの「ポケンモンうんたら」だのに熱中しているのがもはや背後風景というか、そういうものになってるもんな。そりゃあ、わざわざカネ払ってゲーム機なんか買わんだろ。ゲーム機の主市場は、実感として、子供じゃなくって爺ィと婆ァなんだもの。

 通勤電車の乗車行列の前の方にゲームに熱中している爺婆がいると、熱中のあまり動き出しが遅く、混雑しているときなど本当に迷惑だったり、ポケモンなんちゃらなんて自動車運転中の使用で死人まで続出しており、その点大人や爺婆のゲームにはいろいろと難癖の付け所が多いが、まあ、それはスマホだろうが任天堂だろうが同じではある。