半野良のハート

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 近所に住む半野良猫のハート、最近どうも老いてきたようで、厳しい寒さもあってか、餌を飼ってやると玄関に香箱(おまる)を作って座り込み、なかなか家から出て行かなくなった。玄関の上がり(がまち)に置いてある座布団に丸まり、放っておくと半日も眠っている。どうかすると知らぬ間にリビングのクッションに丸まり込んで、家の者が気づかぬのをよいことに一日がところ寝ていたりする。一体どこで脱糞などしているのか、謎だ。

 別に邪魔でもないので放っておいている。癖になるとよくないのはわかっているが、老猫(ろうびょう)なのでこっちにも惻隠(そくいん)の情というものが湧き、あまり苛烈には扱っていない。弱いものを扱うのに、万物の霊長たるの鷹揚悠然は(これ)あって(しか)るべきだろう。

 近所に住み着いてからかれこれ8年ほども経つ。猫は人の6~7倍のスピードで歳をとると言うから、ハートも近いうちに死ぬように思うのだが、どうすればよいかは、まあ、その時考えればいいだろう。あいつも、苦しくとも自由な半野良のほうがきっといいに違いない。