もはや蛍光灯の時代ではない
自宅のリビングの40形直管蛍光灯。蛍光灯は寿命も短く、意外にしょっちゅう交換しなくてはならないし、蛍光灯器具は漸次製造が縮小されていてだんだん部品も無くなっていく。
無論、蛍光灯は白熱灯に比べれば驚くほどの省電力を達成した画期的な現代の明かりではあったものの、今となってはLEDに遠く及ばない。
自宅リビングの照明も明るくて長寿命のLEDでリプレイスしたいのだが、器具が合わないのでどうしようか思案していた。寝室その他、自宅内のほとんどの明かりは既に器具ごとLEDに取り換えてあるのだが、肝心のリビングの明かりだけは40形(120cm)の大きい器具が2つなので躊躇していた。リビングの器具全体を専用のLED灯具に買い替えて付け直すと何万円もかかるからだ。
生の直流LEDテープへの改装も検討の余地なしとはしないものの、それには間接照明の工夫が必要だ。そんなことをすると家のつくりが変わり過ぎ、大工仕事もしなければならなくなる。労力と費用を節約したいから、それはちょっと御免
よって、できれば既存の蛍光灯器具を生かしてLED化したい。そうすると、LEDテープよりも蛍光灯型のLED管に軍配が上がる。
LED管への換装のあらまし
既存の器具の中身だけを安いLED管にするには、器具を改造する必要がある。原理は簡単で、100V用のLED管を買い、100Vを直接LED管にかければよい。蛍光灯器具には「安定器」といって、高電圧や高周波による点灯開始と点灯後の放電電流を一定に保つための回路が組み込まれている。しかし、降圧・整流回路の組み込まれた100V用のLED管に安定器は不要で、むしろ安定器があるとこの種のLED管は作動せず、点灯しない。そこで、蛍光灯をLED管にリプレイスするためには、この安定器をバイパスするための改造を必要とする。
法律上、このような改造に伴う電気工事をするには、一般的には電気工事士の免許が
ともあれ、意を決して自分で安定器バイパス工事をした。
材料・工具その他
まず、材料がいる。
配線を付け替えてつなぐために俗に「ダルマスリーブ」と呼ばれる絶縁被覆付閉端接続子というのを必要数買う。器具内の電線は単芯で、その心線径は1sqくらいなので、端子のサイズはそれに適合する「CE-1」というのを選ぶ。この端子はバラ買いだと一つ8円くらい。器具一つにLED管が2本入るので、両極で4個、器具が2台あるので、合計8個必要だ。
それから、このダルマスリーブをカシメるための工具がいる。これはけっこう高い。5千円くらいする。しかしこれを惜しんではいけない。圧着端子というものは、正しい工具で正しく作業しないと、感電や漏電、通電不良の原因になるのだ。ペンチなどでいい加減な作業をすることは厳禁である。多少お金はいるが、一つあれば他のことにも使えるし、腐るものでもないので買っておいて損はない。
その他、ニッパーやコードストリッパー、ナイロンのケーブルタイなどは既に持っている。
圧着工具には多少お金がいるが、一方、LED管はまるでアホのように安い。10本で7680円である。私の家は一度に4本しか使わないし、LEDの寿命は長いので、こんなにあると多分私が死ぬまで持つのではあるまいか(苦笑)。
工事のあらまし
さて、工事にとりかかる。することは簡単だ。
まず、工事個所のブレーカーを切る。
ここからはほぼ非可逆になるから、注意深く、しかし大胆に作業する。「安定器」という鋼鉄のボックスには入出力の電線が多く出入りしているが、これらを全部、ニッパーでパチパチ切る。右の写真は安定器の線を全部切り外したところだ。
普通、電線には緑や白、黒などが使われているが、場合によっては茶色と黒が使われている。大昔は「黒はGND」と決まっていたものだったと記憶するが、今は黒が「L」だったりする。これはブレーカーなどをよく見て確かめる。私の自宅の場合は電灯器具には2芯の
見極めた電線の極性にしたがい、蛍光管ソケットへ100Vを配線する。私が購入したLED管は今主流となっている「片側給電」というもので、一方の端にしか給電せず、もう一方の端の端子はもとの器具に取り付けるだけのために設けられたダミーである。給電する側を左にした場合、上が「N」、下が「L」となる。
間違わないよう、テプラで「L」「N」と表示した小さいシールを沢山作り、これを電線や蛍光管ソケットに貼って分かりやすくし、間違わないようにする。
これにしたがって配線をつなぎ直し、閉端接続子でしっかりカシメて圧着する。
この時、線をねじって留めるだけだったり、ビニールテープを適当に巻いて絶縁するというようないいかげんな施工をしてはいけない。
最後に電線をまとめ、器具内の電線止めクリップや、必要に応じてナイロンタイなどを使い、しっかりとめる。このとき、器具内でブラブラしていると、熱が出るような場所に電線が触れたままになり、溶損の末漏電して火災などの原因になるから、熱が出るような場所を避け、よく考えて線路をまとめる。
済んだら、N、Lそれぞれの電源供給側とLED管端子とに、テスターを当てて導通と絶縁を確かめる。LとL、NとNが導通していなければならない。逆に、LとNに当てて導通していてはいけない。
確かめ終わったら、慎重にブレーカーを入れ、器具のスイッチを入れる。熱や煙などが出ていないことをよく確かめてから、テスターでLED管端子の電圧を測る。約100V出ていれば出来上がりだ。
当然のことながら、この工事を施した器具に、旧来の蛍光灯や、「両側給電」と呼ばれる違うタイプのLED管は「絶対に」使用してはいけない。使用したとしても蛍光灯の場合はせいぜいフィラメントが一瞬で焼損するだけだが、それでも破裂や火災と言うことにならない保証はない。
そこで、私の自宅の場合は、24mmの太いテプラで「片側給電仕様LED管用バイパス工事済み・通常の蛍光灯使用厳禁」と大きな字で書いたシールを作り、器具内の目立つところに貼り付けた。これで、私がいないときに家内や娘が間違うこともあるまい。
こんな具合で自前でさっさと工事をすませた。
点灯テスト
完全に「遊んだ状態」になった「安定器」は、捨てるのがかえって面倒ということもあり、私の自宅では今のところついたままになっている。通電していないから特段危険はないが、気になる向きは取り外して捨ててしまえばよかろう。
注意 DIY電気工事は決して他人にお勧めはしない
ともあれ、私は免許はないが、電気工事にはだいぶ経験があるので、今回も自分で工事した。
このブログを参考にする方もいると思うので、ここで注意事項を述べておきたい。
私はこの記事中では一貫して「工事」と書いているが、これは法律上の「電気工事」ではない。では、私がしていることは何なのか。
述べれば、この灯具の取付・取外しには、右の写真の赤矢印で示した宅内の配線を器具に挿入あるいは抜去する必要がある。この部分は法律で規定されている単純なコンセントやローゼットではないため、そうした作業を行ってしまうとこれは法律上の電気工事にあたり、電気工事士の免許が必要となる。灯具のメーカーのカタログを参照すると、「取付には電気工事士の資格が必要」と明記されているが、それは右の写真の、この灯具の電線接続部分の構造によるものだ。
どのような電気工事に免許が要り、あるいは要らないかは、経済産業省の資料(PDF)に詳しく記されている。
詳細は上の資料にあるので省くが、写真中央の白線の右側の線を取り外すだけでも、これは免許の要らない「軽微な電気工事」から逸脱し、免許が必要な法律上の「電気工事」となってしまうのだ。すなわち、線を取り外しただけで違法ということになる。
他方、この記事中で私は、写真の中央の白線の左側に手を加えているだけだ。つまり、この記事で私が「工事」と書いていることは何なのかというと、これはいわば「照明器具の改造」である。あくまで自分が所有する照明器具の内部の配線を改造しているだけであって、法律上の電気工事ではなく、違法ではない。
しかし、普通の方に当記事のような改造をお勧めすることはできない。100Vの家庭用電源は、少しでも間違えると火災などの原因になり、危険なのだ。また、仮に私が他人にこのような作業を頼まれたら問答無用で断る。他人に対してそのような責任は負いかねる。
したがって、普通の方は近所の電気工事店などに工事を頼んだ方が良い。
だが、この記事のような器具の改造を電気工事店に頼めば、おそらく「灯具の買い替えと取付工事」を勧められることだろう。それが高くつくからといってあくまでDIYで作業しようという場合には、これは「自己責任」ということになるので、この点注意が必要である。
絶縁被覆付閉端接続子ではなくて、ハンダコテで接続してゴムテープで3巻以上巻くのはリスクは高いでしょうか?
カシメの工具が高いので。。
>NINJA300様
コメントありがとうございます。
拙文中にも書いてありますように、私は電気工事士等の資格はありませんので、責任を持った権威ある回答はできないことをはじめにお断りしておきます。その上で申し上げますが、この種の工事を半田付けで施工するのは、おすすめしません。
理由はいくつかあります。
半田付けと絶縁テープだと、時間が経ってから半田のフラックスとテープの接着材が溶け合うのか、ニチャニチャになって弱くなり、ショートなどを起こす恐れもあります。圧着端子だとそういう恐れはありません。弱電と違って、家庭用の100Vというのは結構怖いもので、ショートは火災などの原因にもなります。
また、私がこのエントリでした工事の場合だと、全部で16か所ほど接合箇所がありますが、これだけの個数があると、半田付けの場合、慣れた人でないと失敗半田が生じる恐れが大きくなります。失敗したって、そこを切り取ってやり直せばいいわけですが、見て明らかにわかる失敗よりも、「実は失敗しているのに一見くっついたように見える」施工が一番怖いです。いわゆる「芋半田」の類ですね。これが、時間が経つうち何かの拍子でポロッと取れて、壁や器具の地金でショートでもしたらと想像すると恐ろしいです。それに、半田は腕前が左右しますから、慣れないと仕上がりもバラバラになります。圧着端子は一定の圧力で締め付けられますし、規格に沿った製品を使いますから、仕上がりがバラバラになるということがありません。
それに、半田付けは圧着に比べて時間がかかります。圧着端子はクリンパーで「カチッ」と挟めば、それで終わりですので、早く仕上がります。
電気的には半田付けも圧着端子もそう違いはないそうですが、圧着は実は非常に接合度合いが高く、誰が施行しても均一にできます。
圧着の難点は、やはり、ご指摘の通り「工具が高価」だということでしょう。どこかで借りられればいいと思いますが……。でも、工具は腐らないので、一丁購入して持ち物に加えておくのも悪くないと思いますよ。