「渚のアデリーヌ」を弾こうと思って楽譜を買い、数小節弾いてみるなどし、楽しいなあ、と思っていた私である。
私のピアノは基本的に独学だ。だがしかし、こういう曲を弾くとなってくると、独力ではどうしても限界がある。そこで、時々、次女のピアノの先生に助けて頂いて来た。この4年間に、5回ほど、「単発」でレッスンをしてもらったのだ。
今回も、基本的に独りで弾くとはいうものの、次女のピアノの先生の助けはあったほうがよい。いずれ、先生に相談するつもりであった。先生に相談すれば、もちろん賛同してくださるだろうと思っていたのだ。
だが、あにはからんや。
去る火曜日のいつものレッスンで、次女がポロッと「お父さん、『渚のアデリーヌ』を弾きたいらしいです」と言ったところ、どうも、難色を示されたのだそうな。
「悪い曲ではないが、200年300年と残る曲かというと、そうは言い切れない。しかし、例えばショパンなら、これは絶対に200年経っても生き残ることは確言しうる」
…とのご趣旨であったと言う。
うーん。どうしよう。
先生はクラシックが本来のご専門ではあるものの、次女の教材には、次女の進捗や素質などから、躊躇なく現代曲も与える闊達な方なので、賛同してくださると思っていたのだ。
そこで考え直し、ショパンの「別れの曲」を弾いて見ようか、という気になった。
イヤイヤ弾くというわけではない。もともと、別れの曲も、いい曲だなあ、と思っていたからだ。
それで、島村楽器へ行って、全音のピースを開いてみて、だがしかし、ビックリ…。とても弾けそうにない。けれど一応、買った。
![]() |
ピアノピースー063 別れの曲/ショパン (ピアノピ-ス) 価格:¥ 525(税込) 発売日:2008-08-29 |
困ったなあ、と楽譜売り場をうろつくうち、あるじゃないか、前になんとなく、「弾いて見たいなあ」と思っていた曲が。「プレリュードOp.28-No.15『雨だれ』」。
![]() |
ピアノピースー072 雨だれの前奏曲/ショパン (MUSIC FOR PIANO) 価格:¥ 525(税込) 発売日:2009-08-04 |
楽譜をひらいてみると、別れの曲よりは、いくらか簡単そうではなかろうか。これならなんとかなるんじゃないか…?
そう思って買って帰って、またまた、アレレレ、となった。
ち、調性が、「変ニ長調」なんていう、フラット5個の、謎の調(私にとって)なのであった。
こ、こりゃあ、参った…。
だがしかし、そこで考え直す。
私のピアノは、なにも義務でやっているわけではない。よい音楽を演奏して、楽しく暮らしたいだけだ。
だからなにも、雨だれの曲を1年以内に絶対に弾かなければならないとか、そんな義務はないのだ。
正式に次女のピアノの先生の弟子になったというわけでもない。
この曲を2年とか3年がかりで弾いたってよい。極端な話、イヤになってやめてしまったところで、誰に文句を言われる筋合いもない。ピアノも、自分の小遣いを500円づつ貯めて買ったもので、誰にも後ろ暗いところはないのだ。
オッサンの初心者、素人の、独学のピアノの醍醐味は、そういうところにこそ、あるのではなかろうか。
目標を持たず、ブラブラと歩くようにして、「雨だれ」を弾いて見よう。