引き続き60年前の古書、平凡社の世界教養全集を読んでいる。
最近、漫画を読んだりもしていて、こちらの方は休み休みなのだが、しかし、少しずつ読み進めている。
第24巻の第2作目、「人間の土地 Terre des hommes(サン・テクジュペリ Antoine de Saint-Exupéry 著・堀口大學訳)」を読み終わった。読み終わったのは東京駅八重洲北口にあるバー「The Old Station」内で一杯やりながらのことである。この全集では割合に中著の部類に入り、135ページからなる書である
サン・テクジュペリの本は、「星の王子様」「夜間飛行」を若い頃から読み
だからしっかり読み通したのはこれが初めてだ。
読んでみて、やはり、難解・
だが、既に壮年になって久しい私には、この思索に満ちた内容が染み入るように感じられる。
気になった箇所
他の<blockquote>タグ同じ。p.255より
君の心に、この出発を促す種を蒔いたかもしれない政治家の大言壮語が、はたして真摯であったか否か、また正当であったか否か、僕は知ろうとも思わない。種が芽を出すように、それらの言葉が君のなかに根を張ったとしたら、それは、それらの言葉が、君の必要と一致したからだ。それを判断するのは君一人だ。ムギを見分けることを知っているのは、土地なのだから。
現在、ヨーロッパには、二億の意味のない人間が更生しようと待望している。工業が、彼らを、農民としての伝統から引き離して、黒い貨車の列が混雑している集散駅のような、これら巨大な
猶太人居留地 のなかへしめ込んでしまった。労働者街の奥で、彼らは、目覚めたいと待っている。
しかし、こういう種類の偶像は、人を食う偶像だ。知識の進歩のために、または病気を癒すために生命を失う人は、自分は死ぬが、同時にまた、生命のため役立っている。領土の拡張のために命をささげることは、りっぱなことかもしれないが、今日の戦争は、その助成すると称するものをじつは破壊している。今日では、種族全体に活を入れるために、少量の血を流すなどということはなくなっている。飛行機と爆弾とでなされるようになってから、戦争は、一種血まみれな外科手術でしかなくなってしまった。お互いにコンクリートの壁で作った隠れ家の中にはいって、仕方なしに毎晩毎晩編隊を送っては、相手の内臓部を爆撃し、その生命の根源を破壊し、その生産と交換を付随ならしめる。勝利は最後に腐るほうの側にある。しかし双方とも、たいていは同時に腐ってしまうのだ。
上のような部分は、人間の本然の姿への回帰への衝動だと喝破しているかのようであり、感動を覚えた。これらの部分は、あえてだろうか、第7「砂漠の真ん中にて」の後に第8「人間」として置かれている。この構成と内容が
この書の真骨頂はこの章「第8」にこそあると思う。
次
次は引き続き第24巻から「たった一人の海 Seul à travers l’Atlantique, A la poursuite du soleil, Sur la route du retour」(アラン・ジェルボー Alain Gerbault 著・近藤等訳)を読む。一書にまとめられているが、どうやら「たった一人の大西洋 Seul à travers l’Atlantique」「太陽を求めて A la poursuite du soleil」「故国への道 Sur la route du retour」という3書の