アンテナコンセント取付工事と「こしがやエフエム」

投稿日:

 自宅にDIYでラジオアンテナコンセントの取付工事をした。左の写真は完成図である。

生ラジオを即製ダイポールアンテナで聴く意味

 先日安価なラジオを買い、最近はそれを聴くのを楽しみにしている。今時(きょうび)ラジオはほとんどすべてインターネットストリーミングで聴取可能だから、わざわざ「生ラジオ」で手製のダイポールアンテナなんぞまで作ってラジオを聴く意味は(ほとん)どないが、これは往年の無線技士としての衝動のしからしむるところであって、意味などどうでもよいのだ。

 即製のダイポール・アンテナでラジオを聴くことの醍醐味(だいごみ)は遠距離の海外短波放送を受信することにこそあるが、それだけというのも芸がない。そこで両側合わせて20メートル以上もある短波ダイポールだけでなしに、両側合わせて180cm程度のFM放送用のダイポールも室内に張り、FM放送をあちこち聴いてみていた。

 FM放送を渉猟(しょうりょう)するうち、私が住んでいる越谷市に「こしがやエフエム」というコミュニティFM放送局があることを知った。開局はつい7年ほど前で、この前始まったばかりだ。

 聴いてみると、音楽の選び方が戦前の名曲から現代の曲まで幅広く、飽きが来ず面白い。

コミュニティFM放送局と災害

 先日、越谷市は水害に見舞われ、多くの人が被災した。幸い死者はなかったようだ。私の自宅は無事だったが、暴風雨のさなかに防災放送の拡声器で避難の呼びかけが行われても、「えっ、なに、なんか言ってるけど、何!?聞こえない……」ということになるのは当然で、しかもインターネットのラジオストリーミング放送は障害やエンドユーザの充電事情により意の如くならず、そこで威力を発揮したのが常々防災に意を用いているコミュニティ放送局の「生ラジオ」だったそうである。

 そのようなことがあって、更に「こしがやエフエム」に興味を覚え、聴くようになった。

 だがこの放送局、小さなコミュニティ放送局だから送信電力が小さい。20Wである。FM東京が東京スカイツリーの天辺(てっぺん)から10kW、つまり、こしがやエフエムの500倍の電力で送信していることを思えばその違いは歴然たるものがある。

 こしがやエフエムの送信所は地域から「市内で一番高い建物」として親しまれているタワー「越谷リユース」の天辺(てっぺん)にあり、私の自宅からもそれほど遠くはないのだが、なにぶん20Wの小電力だから、私の住まいのあるような住宅密集地だとささいなことで電波の陰になり、なかなか受信しづらい。

FM放送とテレビのアンテナ

 FM放送が受信しづらいとき、手っ取り早いのはラジオのアンテナ端子をテレビのアンテナに接続することである。もちろん、テレビ、就中(なかんづく)現在主流の地上波デジタルの場合、周波数は470~710MHzであり、FM放送の76~90MHzとはまったく適合しない。しかし、私の自宅のように、地上波アナログ廃止の前に自宅を建て、地上波アナログのアンテナを上げたままになっている家は多く、そういう家は事情が異なる。すなわち、地上波アナログの周波数は90~96MHzであるため、FM放送と異なってはいるもののかなり近く、ラジオの受信程度のことであればテレビのアンテナがかなり良好に働くのである。

 実際のところ、ラジオの3.5φミニコネクタのアンテナ端子とテレビアンテナのF型端子を接続するケーブルを買い、これでテレビのアンテナとラジオを直結してみると、感度の悪かったこしがやエフエムが、素晴らしい感度と音質、もちろんステレオ受信になって聴取可能となる。

 ところが。私の自宅の場合、リビングのテレビアンテナ端子はテレビでふさがっていて、しかも妻と娘が常時テレビ占拠状態であって私にはもとよりチャンネル権など皆無である。ラジオの感度を上げたいなどという彼女らにとっては「くだらん……」理由でアンテナ端子からテレビのアンテナ線を引っこ抜きなどすると、私はテレビ中毒の彼女らに殺されてしまうだろう。如何に、テレビのチャンネル権のない一家の大黒柱たるや。否、そんなことを気にしているようではダイバーシティを是とする現代社会は生きていけない。それはわかっているのだが、ここは意地を張り「だからテレビは嫌いだ」と()き捨てて、テレビなんか見てやるもんかバカヤローお前ら女子供が勝手に見とけフンッ……と背を向けるのがストイシズムというもの。

 ……休題。

 寝室のテレビアンテナの端子は寝床の近くにあるので、ラジオをそこに接続することができ、寝ながら「こしがやエフエム」を聴くことができる。だが、それだと寝る前にしか聴けない。

 私はリビングでノンビリとこしがやエフエムを聴きたいのである。

 ダイポール・アンテナを屋外に出せば、かなり適当な即製アンテナでも良好に受信できるようになるであろうことは、特殊無線技士としての私の経験上明らかである。

 そこで、屋外にこしがやエフエム専用に最適化されたアンテナ、波長から計算した長さ、すなわち片側が

\cfrac{3 \times 10^8(m)}{86.8(MHz) \times 4} \fallingdotseq 86.4(cm)

両側で
86.4(cm) \times 2 = 172.8(cm)

……の手製ダイポールアンテナを取り付けることにした。屋外のアンテナを屋内に引き込むには壁に穴をあける必要があるが、幸い、私の住まいは持ち家で、壁に穴をあけるのに必要な許可は私がすればいいのであって、何の遠慮もないのである。

 これまでにもコンセントの増設やスカパーのアンテナ接続コンセントの増設など、さまざまな工事を自宅に施してきている。そこで、今回もドリルやらなんやらをアレコレ取り出してきて、アンテナコンセントを取り付けた。

部品部材の取り揃え

 まず、必要な部材部品を揃える。

 壁付けコンセントに必要なものの第一は、当然定番パナソニックの「カラープレート」類だ。どこのホームセンターにも売られている。左から、はさみ金具、取付枠、プレートの裏、プレートである。それぞれ79円、69円、209円(プレート裏表)である。

 このプレートを壁に取り付け、アンテナのコンセントにしたい。アンテナの接続端子には様々なものがあり、千差万別だ。用途によって最適なものは異なるが、私は長年勤めた自衛隊の無線機で慣れ親しんだ「BNCコネクタ」を使いたい。これは頑丈で抜き差ししやすく、電波的な特性もそこそこ良いからである。残念ながら、パナソニックのプレートに合うBNCコネクタのモジュールはパナソニック純正の製品ラインナップにはない。だが、サードパーティのものがある。写真の左の二つがそれで、ホームワイヤリングというところで扱っており、ネットで入手可能だ。600円。

 それから、配線用に適当な同軸ケーブルとそれに合うBNCコネクタを買う。注意すべき点は、BNCのカシメ工具とコネクタ、ケーブルには決まった組み合わせがあることだ。この中で一番高いのは工具だから、結果として自分が持っている工具で扱うことができるコネクタとケーブルを買うことになる。

 私はホーザンのP-740というカシメ工具を持っているので、これでカシメることのできるコネクタとケーブルを買うことになる。写真はトーコネ(東洋コネクター)のBNCP-3A-K、ケーブルはこれに適合する3C-2Vというものを適当な量。コネクターは320円、ケーブルは1mあたり130円。

 屋外の開口部には水が入ったりしないよう、「引き込みフード」を取り付ける必要がある。これも最寄りのホームセンターで売られている。579円。

 屋外にこういうものを取り付ける場合、水が漏れ入ったりしないよう、コーキング材なども適宜必要だ。

壁の下調べ

 次に、コンセントを取り付けたい場所が、取り付けることのできる場所であるか否かを慎重に調べる必要がある。その部分が柱であればコンセントなど取り付けられない。柱か単純な壁であるか否かは重要だし、穴をあける場所の真下に電線その他の配管が通っていないかどうかも重要だ。無造作にドリルで穴をあけたらブレーカーが落ちた、などというだけならともかく、スパークして火災になった、なんて目も当てられない。

 そこで、下地調べ用の工具などを使ってよく調査する。私の自宅はツーバイフォーなので、家の端から45.5cmごとに柱が入っている。基本的にはそれを避ければ良いが、窓の周りなどはちょっと難しい。それで、電子式のもの、写真の左のようなものや、針で穿孔して調べるものなどを使い、慎重に調べる。

 コンセントを取り付けたい場所を慎重に穿孔し、壁裏には何もないことを確認する。

穴開け寸法と墨付け、穴開け

 取り付けられることを確認し、壁に印をつける。パナソニックのサイトで「施工説明」を見て、壁にどれくらいの穴をあければいいのかを確かめる。今回の場合は、9.5cm×5.1cmの四角い穴を屋内側の壁に開ければよい。

 直接壁に鉛筆で印をつけてもいいが、間違いもあるので、ボール紙で型紙を作る。正確に作った型紙を壁に当てて、それで壁に線を引く。

 引いた線の四隅にドリルで穴を開ける。ドリルビットの半径を注意深く差し引いて、引いた線の内側に穴を開ける。

 あけた穴にジグソーを入れ、慎重に切り抜く。

 こうして、石膏壁に四角い穴が開く。

 この穴から外へ、長い木工用ドリルで穴を開ける。雨水が入らないよう、外に向かって下へ開けなければならない。

 壁内の断熱材が巻き付くので、あらかじめこれをよく手で掻き分けておき、穴を開ける。

 電動工具を使えば、個人の木造住宅の壁など、あっという間に穴が開く。

屋外の処理

 こうして空いた穴の屋外側に、引き込みカバーフードを取り付ける。

 水が漏れてはいけないから、コーキングをする。

配線

 次に、屋内から屋外へ、ちょうどよい長さのBNCケーブルを作る。現物合わせで、20cmほどだ。同軸ケーブルを切り取り、これにBNCコネクタを取り付ける。

  ケーブルにはあらかじめ熱収縮チューブとBNCコネクタ内容品の圧着スリーブを通しておく。それから同軸の被覆を2cmほど剥く。次いで芯線の被覆を3.5mm剥き、シールドの網線を芯線の被覆と同じくらいの長さに切り揃える。芯線を中心のコンタクトピンに挿し、これを圧着工具でカシめる。それからBNCコネクタを通す。コンタクトピンはバヨネットプラグ方式になっており、ギュッと挿し込むと「カチッ」と音がして外れなくなる。

 圧着スリーブをかぶせ、圧着工具でカシめる。

 カシめ終わったら、あらかじめ通しておいた熱収縮チューブをヒートガンで炙り、密着させる。

 間違いがないかどうか、テスターで確かめる。BNCコネクタの外の金属部分どうしは導通していなければならないし、内側のコンタクトピンは、内側同士で導通、内と外とでは非導通でなければならない。

コンセントプレートの組み立てと取り付け

 出来上がったケーブルを壁の穴に通し、パナソニックの取付枠とホームワイヤリングのBNCコンセントとを組み立て、ケーブルをつなぎ、はさみ金具を取り付ける。

 はさみ金具をうまく壁裏に入れ、レベルを使って取付枠の垂直を確認しながらはさみ金具付属のビスを締め、まっすぐに取り付ける。

 それから、プレートの裏……

……プレートの表を取り付ける。

 家の外に先日作成した即製のダイポールを持って行って金具で留め、外に出したBNCでつなぐ。

 引き込みカバーのふたを閉め、雨などが入らないようにする。黒いドーナツのようなものは、私が作成したアンテナバランサーである。

機嫌よく「こしがやエフエム」を聴く

 こうしてリビングの自席のすぐそばに、いつでも高感度でラジオが聴けるアンテナコンセントが備わった。早速(さっそく)「こしがやエフエム」を聴く。

 ゴキゲンである。

 インターネットですべてのラジオのストリーミングを聴くことのできる今、こんなことになんの意味があるのか。

 ……意味なんかどうでもいいんだ、やりたいからやったんだ、文句あるか(笑)。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください