日本ITストラテジスト協会関東支部オープンフォーラム2019

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 今日は日本ITストラテジスト協会関東支部主催「オープンフォーラム2019」に参席した。

 最近数年の会場は決まって「秋葉原UDX」(旧青果市場辺りの大きなビル)だったが、今年は「一橋大学の一橋講堂」で行われた。

 私はチラシの「一橋大学」を瞥見(べっけん)して、それだけを頭に入れ、エイヤッと国立市まで行った。駅前でノンビリと昼飯など喰った。

 文教都市を標榜する街で、すばらしく幅広い並木通りをノンビリと歩き、一橋大のキャンパスに入った。

 案内板を見たのだが、一橋講堂というものはなく、最も近い名前のものは「兼松講堂」である。時間は12時ちょっと過ぎであった。

 ハテ……というので、門内の守衛さんに「あのう、すみません、一橋講堂っていうのは、どこでしょうか?」と聞いてみたら、

「ハァ!?一橋講堂!?……いや、ありませんよコチラには。そういうのはちょっと……こちらにあるのは『兼松講堂』ですしねえ……」

「えっ、私、もしかしてとんでもない方に来たのかしら?」と私。

 守衛さんはちょっと考えて、パッと表情を改め、

「あっ、そうだ、わかる。一橋講堂ってのは聞いたことがありますよ、ちょっと待ってくださいよ、どこに書いてあったっけ……」

と、守衛所内に備え付けてある「マップル」をバラバラッと繰ってくれた。

「あ、ここだここだ。千代田区一ツ橋……これはあれですよ、水道橋の向こうの、アッチのほうですよ」

「ゲゲッ!……私、全然違う方に来たんですねえ、こりゃまいった、守衛さん、どうもありがとうございました」

「いえいえ、慌てずお気をつけて」

……というようなわけで、中央線の快速特快で急遽神田まで引き返し、十数分ほど遅れて着いたという塩梅式であった。

 東京の各大学のキャンパスは、アッチコッチにバラバラにあるからヤヤコシイ。

 高等教育に縁のない私は、今日という今日まで知らなかったが、一橋大学はかつて東京の一ツ橋、すなわち、現在の学士会館のあたり、今日のオープンフォーラムの会場付近に所在したが、関東大震災の被害をしおに国立市に移転したのだそうである。

 親戚のニイチャンが一橋大だったが、どこに通っていたのかも今日まで知らなんだ(笑)。

 多少遅れたものの、聞きたかった特別講演はだいたい全部聞くことができた。

特別講演1:『今、日本に必要なデジタルトランスフォーメーションとは?』 ~ 「所有」から「利用」へ、デジタル化がもたらす新しいビジネスモデル サブスクリプションが普及する背景

 江端浩人事務所代表・江端浩人氏による講演であった。

 江端浩人氏は日本マイクロソフト・日本コカ・コーラ等大企業のCIOを歴任し、デジタルで経営を牽引してきた斯界の第一人者であり、その手腕については堀江貴文氏やDeNA創業者の南場智子氏らと並び称される人物である。

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)という観点からは、氏は過去にもDXにかかわってきており、Windows95のエンタープライズへの導入やiPhone、クラウドなど、多くの事例で活躍してきている。

 氏は最近、「サブスクリプション・モデル」に着目しこれに注力している。

 サブスクリプション・モデルとは、例えば「Microsoft Windows」のライセンス形態の一部に見られるように、「使用権を賃貸する」業態である。最近はWindowsのようなソフトウェアだけでなく、スマホの定額通信や定額制の動画配信サービス、Amazon Kindleの読み放題など、デジタル業界では既に定着しているが、他にも自動車のシェアリングやスターバックス・コーヒーの定額サービスなどにも見られ、最近では月額定額の「ラーメン食べ放題」や、女性向けの定額の美容院、「定額住み放題の住居」などまで登場している。

 このモデルは利用者側から見ると「気に入ったブランドを気にすることなく安定して利用でき、割安感があり無駄な所有をしなくてすむ」利点があり、提供者側から見ると「収益を先取りして安定させ、多くの場合増収になる」という利点がある。

 江端氏自身も「動画広告を作成するサービス」をサブスクリプション・モデルで立ち上げ、取り組んでいる。

 実は、昔から富山の薬売りや牛乳配達など、日本には昔からサブスクリプション・モデルがあったが、現在のサブスクリプション・モデルとはインターネットをはじめとする電子的な仕組みが介在するか否かが大きく異なる。電子的な仕組みにより、提供者側と利用者側の情報格差の解消などがかつてとは異なる状況となっているように思われる。

 サブスクリプション・モデルの普及には条件があると氏は考えている。すなわち、単なる定額ではなく「付加価値」「出会い」例えば新しいファッション、いつも一流の美容室、BtoB、日本に非常に合ったモデル(おもてなしなど)、常連さん文化、お小遣い制、顧客の手間を省く(リコメンド)等々である。

 また、サブスクリプション・モデルは原価が低い商材(すなわちデジタル情報など)に合ったモデルであり、原価が高く供給量が少ないものは合わない。

 これからのサブスクリプションモデルを含め、企業の経営全体を俯瞰すると、社会的な意義をもたない会社やブランドは支持されなくなる。単純なCSR活動だけでは不十分であり、世界的なSDGsの広がりが背景にあることを踏まえ、これらにも注力することが必要であると氏は言う。また、氏はブランドアクティブズム、ダイバーシティなど、改めて取り組むべき課題は多くあるはずであると指摘している。

 氏はデジタル・トランスフォーメーションの視座からサブスクリプション・モデルをとらえて活動中であるが、これと「デジタル人材育成」をもライフワークとして取り組み中とのことであり、「一番自分の身になるのが人に教えることと思う」として講演を締めくくった。

 聴講者からは、「利用者から見て『所有をしない』ことは有利なことのように思えるが、その一方、GAFAなどデジタル経営の成功企業は、例えばGoogleが検索により取得した情報を独占していることに見られるように、『所有』の利点を最大限に生かしている。この『所有』と『非所有』の相克を如何にとらえるべきか」との質問もなされ、この点でさらに整理が必要かとも思われた。

特別講演2:『POST2020に向けたITヘルスケアサービス/ウェアラブル技術を活用した生体情報センシングの研究とビジネス化』

 WINフロンティア株式会社CAO (Chief Algorithm Officer)・芝浦工業大学客員准教授・駒澤真人氏による講演であった。

 WINフロンティア株式会社は、ウェアラブル技術を使用した人間情報を扱う会社である。

 特に最近は心拍数の測定による感情の変化などを定量評価することに成功しつつあり、多くの応用を広げている。

 単に心拍を測定することであれば、従来から医療機器の長時間心電図採取などが利用されているが、最近はセンサの小型化、また周辺機器、特に記録の高密度・高容量化(SDカードなど)、スマホとの連携による通信、ひいてはクラウド・リソースの活用などにより、コンシューマー・レベルで気軽に心拍を測定することができるようになった。

 かつては記録に限界があったために、長期間の測定が必要な感情の変化などのモデルに当てはめづらかったが、現在はクラウドのストレージの利用などにより、ビッグデータを参照して心拍から感情の変化を検知し、個人のメンタルチェックを行うことができるようになった。

 これによって「自律神経の活動」を測定し、メンタルヘルスの管理に有用な製品が得られるようになったという。

 氏の会社では、指先の血流量をスマホのカメラで測定することのできるスマホアプリ「COCOLOLO」を開発し、産業医のカウンセリングにこれを活用するなどしており、「働き方改革」への応用なども提案している。

 今後の注力領域として、一般に心拍数は継続して測定してもらうことが難しいため、「ヘルスゲーミフィケーション」、すなわち、健康状態取得活動をゲーム化して面白くし、熱中してもらうことなどを試みており、既にそのようなゲームもリリースしている。また、「ヘルスリテラシ」、すなわち健康へのリテラシ向上、健康教育、知識の普及を図りたい、としている。

 他に、感情を分析した製品開発、製品のリラックス効果を定量的に評価するなども試みており、例えばユニクロのジーンズのリラックス度の評価をセンサを使用して計測して定量評価し、他社製品と比較するなどといった業務にも成果を収めつつある。

 POST2020において氏は「ストレスマネジメントの総合プラットフォーム」を目指す、とし、今後さらに皮膚の下にインプラント型センサを埋め込んで詳細なバイタル・データを計ることなどを試みたいとした。

 「ゆっくり生きると自律神経が整う」ゆっくりよく噛んで食べることなど、何事も意識してゆっくり行動してみると、自律神経のコントロールに有用である、と結語した。

特別講演3:『あらゆるモノに知性を与える「エッジディープラーニング」の可能性』

 LeapMind株式会社CEO・松田総一氏による講演であった。

 社会では既にAIの応用が浸透し、各所で実用されている。一方、更にAIを活用するには、太い通信帯域やリソースにコストのかかるクラウドのみの利用に頼らず、情報発生源に近い「エッジ」においてAIによる高速な前処理を行うことが有利であることはかねて指摘されているところである。

 松田氏の会社は、この「エッジ」領域でのディープラーニング・ハードウェア開発で成長している。

 氏によると、日本におけるAIは、既に遠く米国・中国の後塵を拝する状況であり、世界をリードしようとするにはもはや手遅れの状況にあるという。しかし、唯一、「組み込み」ドメインでは米・中に勝るものがあると氏は見ており、その所以からエッジでのディープ・ラーニングにチャレンジし、成功しつつある。

 現在、AI~ディープラーニング界は急激に増大する「原データ」「ビッグデータ」と格闘しつつある。今後、スマホをはじめ、IoTデバイスが増えることでデータ量が爆発し、必ず「エッジ処理」が必要になる。

 クラウドはインターネットが必須、レスポンスが遅い、利用料金が高い。一方、ローカルに置かれたGPUはデバイス単価が高く、消費電力が大きい

 ところが、組み込み向けのFPGA・ASICは、ネット常時接続が不要であり、デバイス単価が安く、レスポンスも早くて消費電力が小さい。

 こうしたことから、ASICはテレビ、カメラ、電子レンジ、冷蔵庫などに応用され、FPGAは電車、フォークリフト、監視カメラ、ドローン等に応用されている。 

 これらはセグメンテーション・ノイズリダクション・姿勢推定、超解像、物体検出などに使用されている。

 世界の趨勢に眼を転じると、最近Google PIXEL4が発売され、美しい写真が撮れるカメラが話題になっている。既に光学的な技術については、カメラは限界に達していて、機械的・工学的に美しい写真を追及することはもはやできない状況にあるが、PIXEL4は撮影された生画像データを機械学習・ディープラーニングによる画像レタッチによって美しく加工しているのである。つまり、ソフトエアによるハードウェアの性能引き上げが常態化しており、この点でPIXEL4は時代の象徴的な製品であると言える。

 他にもエッジにおけるディープラーニング活用は応用が幅広く、自動車、製造業での異物・不良品検出、宇宙での応用、セキュリティカメラでの混雑状況検出、ドローンの自律操縦などで着々と成果を得ている。

 氏は今後更に低消費電力化・低システムコスト化を図って成長を狙いたい、として講演を締めくくった。 

JISTA会員による公開パネルディスカッション「POST2020における課題」

 モデレーターは富田良治氏、パネラーは赤沼直子氏、仲尾健氏、満川一彦氏、諸葛隆太郎氏の4方であった。

 「POST2020」における課題が世の中においても議論されている。いわく、「オリンピック後に景気が落ち込む」「2025年に団塊世代が75歳に」「労働人口が2000年から2025年に400万人減少する」……等である。

 また、経産省が先頃出した「DX(デジタル・トランスフォーメーション)レポート」も話題となっている。これにいわく、「2025年の崖」「既存システムの老朽化、複雑化、ブラックボックス化、データを有効に活用できない」……等である。

 こうした現状認識の下、斯界の中核を担う日本ITストラテジスト協会の正会員4名が討論を行った。

 経営陣におけるデジタルに関する現状認識と、技術陣におけるそれにはやはり乖離なしとせず、ここにおいて「ITストラテジストの存在意義」があろう、というコンセサスが概ね討論の結論となったように感じた。

 また、「意外と経営側の人は足元が見えず、社内にどういう技能を持った人がいるかがわかっていないことが多い、社内にこういう人がいて、足りない人はこういう人ですよ、とか、そういう当然のことが提案でき、把握して報告できる、そういうこともITストラテジストの職能の一つではないか?」との意見もあり、自分の職場にも人材育成上そういうところがあるな、と感じて参考になった。

秋期情報処理技術者試験とITストラテジスト

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 昨日(10月第3日曜日、今年は10月20日日曜日)は秋期情報処理技術者試験の日であった。

 私は「ITストラテジスト」のキーワードでこのブログに記事を書いていることもあり、毎年秋のこの時期と、合格発表のある、2か月先の12月~年明け頃になると「ITストラテジスト」のキーワードでの検索アクセスが増える。

 「ITストラテジスト」はなかなか歯応えのあるテストだが、経験を積み、勉強をすれば必ずしも合格不可能と言う事はなく、それよりもなお、なかなか役に立つ資格であるから、興味のある向きは奮って受験してみては如何。

「ITストラテジスト」の偏差値

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 おお、これまたなんだか、ちょっと偉くなったような気分になるなあ。

 「ITストラテジストの偏差値は『71』」と来た。……何を基に計算したのか、まるで謎ではあるが。

ITストラテジスト試験

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 今の時期、このブログのアクセス状況を見ていると、「ITストラテジスト」等のキーワードでの検索結果をもとに訪問してくる人が多くなる。そのため、以前書いた「いやはや、ITストラテジストもえっらいモノと同列になって」という記事のアクセス数が上昇する。

 ITストラテジストの試験は秋にあり、合格発表がちょうど今頃なので、合格した人や、惜しくも落ちた人などがネットで検索してこのブログを見に来るのだろう。私も数年前にこの資格をとったとき、同じようにネットで検索したから、その気持ちはよくわかる。

 「ITストラテジスト試験」はいわゆる「独占資格」ではない。この資格をとったから一生安泰と言うような資格ではなく、できるだけ正確に言うなら「試験に合格した人の能力や技能を証明する資格」なのである。能力を測定することにその主眼がおかれており、医師や弁護士などのように、資格から直接食い扶持を引き出せるようなものではないのだ。この点、ストイックな試験であると言えば言える。

 だが、受験する価値は、大いにある。

 ITの技能は測定し難い。私はこんなことができます、こういう能力がありますなどと申し立てたところで詮無きこと、それは個人が自らを飾って言うだけのことに過ぎない。自ら言うのでなければ、仕事をして実績を残すしかないが、その仕事をさせてもらえるところにまで漕ぎ着けるには、業種にもよるだろうが、万に一つの僥倖を掴むような、宝くじを購入して当てるのにも似た運を必要とする場合さえある。

 そんなIT能力を、国の立場から冷静に評価判定しようというのがこの試験なのだ。したがって、種々批判はあるようだが、試験の内容は考え抜かれ、磨き抜かれている。

 「自分が評価されていない」とお悩みのIT技術者は、この試験を受けてみては如何か。啓かれるところ多大であろう。この資格のみで稼いだり、評価されることは難しいが、稼ぐスタートライン、あるいは評価されるための場所に立つことはできる。スタートラインに立たなければ、何もさせては貰えない。評価される云々以前に、話にもならないのだ。

 単なるテスト勉強と言うなかれ、テスト勉強を「ただのテスト勉強」に堕さしめるか、地に足の着いた自分の血肉の一部にするかは、一にかかって、得た知見に対する自分の姿勢によるのだ。

WordPressの脆弱性(4.7.0と4.7.1)

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 ウチは先週、4.7.2がリリースされ次第アップデートしたので心配ないが、改ざんされているサイトも多いというネット噂を目にした。

サイバーセキュリティのレイヤ構造

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 ある雑誌記事を漫然と見ていて、ふと思った。

 「外交」という雑誌の、上掲の号だ。特集が「技術革新と安全保障」で、その中に「政府はサイバー空間を守れるか」という対談記事がある。

 実のところ、なんだか最近この種記事に食傷気味というところもある。脅威を言い立てて不安感を(あお)るばかりに見える、こういう「啓蒙言説」に飽きてしまったのだ。

 その「聞き飽き」を踏まえての事なのだが。

 「サイバーセキュリティ・マネジメント」について、「レイヤ構造」に整理したようなディレクトリというか、BOK(バディ・オブ・ナレッジ)はないのだろうか。

 というのは、こういう啓蒙言説を聞き飽きる理由は、「政策」や「脅威の評価」といった抽象的な事項と、物理的な機械や人員配置と言った具象的な事項が、直ちに短絡していたり、綯い交ぜに語られたりすることが多く、それが、あまり詳しくない者には煽っているだけのように見えるからなのではないか、と思い当たったからだ。

 それで、この要素とその要素は、そこはもう少し離れていやしませんかね、今はこの辺の抽象度の部分について言ってますよ、というような、「議論の地図」がないかな、と思いついたわけである。

 私が見たいと思う整理は、次の図のような姿をしている。

図 サイバーセキュリティのレイヤと言うか、ヒエラルキと言うか……

 この中間の「モヤモヤ部分」を誰か綺麗に整理してないものかな、と思ったのだ。

 それで、少しばかりネットを検索してみると、一昨年、2015年の6月2日にIPAが「多層防御」を提唱しており、それがGoogleの検索アシストにもあらわれてくる。よっしゃしめた、コレだ!!……とばかりに飛びつくのだが、その中身を見てみると……

 これは「多層」というよりは、むしろ「多角」とか「多面」「複数野」と言った方がいいようなことで、私が見たい「層」ではなかった。

 いや、これはこれで、正鵠を射ているとは思う。例えば、軍事には、「防御は丸く、攻撃は三角に」などというような例えがある。つまり、敵を攻撃するときは、自らが得意とするものを十二分に発揮するのだ。良い戦車が沢山あるならそれを押し立てていくし、優れた戦闘機が沢山あるならそれをどんどん使っていく。だが、防御は違う。敵はどこから来るかわからない。だから、敵の情報を探って十分準備するということはもちろんだが、思わぬ弱点を突かれて奇襲攻撃されることがないよう、あらゆる方向をまんべんなく、漏れなく手当し、円満に「丸く」守る、というのが常道なのだ。そこから考えて、IPAの発表は正しい。

 だが、私は抽象と具象を矛盾なく繋ぐ整理、ネットワークのOSI参照モデル7階層のような、エンタープライズアーキテクチャの4層のような、ああいうもののサイバーセキュリティ版が見たいのだ。

 そこで、ISMSの方へ眼を向けてみる。

 すると、「JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)」にある「管理目的及び管理策」(付属書A)というものの整理が、私が見たいものにだいぶ近い。

 しかし、近いことは近いが、これはどちらかというと要素の漏れのない列挙であって、構造的に層化はされていない。

 「JIS Q 27002」の中に散在する要素も近い。これを取り出して、KJ法的に帰納し、構造化すれば、欲しいものに近づくかもしれない。

 うーん。自分で作業しなくちゃ、ダメかあ……。いや、こういうの、誰か頭のいい人がとうの昔に既にやった後で、どこかにあるはずだと思うのだが……。

日本ITストラテジスト協会関東支部 オープンフォーラム2016

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 私は情報処理技術者の資格を幾つか持っている。そのうちの一つ、「ITストラテジスト」は「高度な知識・技能」というものに区分されており、合格するのはなかなか難しい。

 この資格の関係で、関連団体の「日本ITストラテジスト協会」(JISTA)というところに参加している。

 日本ITストラテジスト協会は、試験合格者等を中心に、所属する企業や団体の枠を超えて情報発信や人材交流による自己研鑽を行うプロフェッショナルコミュニティで、全国8個の支部に分かれて活動している。

 これら各支部のうち、「関東支部」では毎月月例会を開き、テーマ別ディスカッションなどを行って研鑽している他、年に1回、標記「オープンフォーラム」を開催している。

 今年のオープンフォーラムは来週の土曜日、11月12日の午後に開催される。

 今回のテーマは上記の通りだ。識者による基調講演や、会員によるパネルディスカッションが予定されている。

 私はこのところ仕事が多忙だったため、昨年・今年は協会の活動にほとんど参加できなかった。今年はオープンフォーラムの運営には携わることができなかったが、昨年までは2、3年ほど、当日のスタッフとして時間管理などをしていた。

 最近のIT界隈は、サイバーセキュリティに関する呼び声がかまびすしい。これは重要なことではあるが、しかし、そもそもサイバーセキュリティは、人間の諸活動を利便化・高度化するというITの本来の目的を助けるものであり、それ自体では何の役にも立たない。サイバーセキュリティという要素そのものが働いて物を作ったり何かを分析したりしてくれるわけではないのだ。この意味から、ITストラテジの分野はますます社会の基盤要素として一般化し、深く社会に組み込まれつつあるものと思われる。

 ITのプロフェッショナルを目指す向きは、是非この資格やコミュニティに興味を持たれては如何。また、オープンフォーラムは誰でも参加できるので、是非参加してみては如何。

いやはや、ITストラテジストもえっらいモノと同列になって

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 私は数年前に「ITストラテジスト」という資格をとった。経済産業大臣が出す国家資格だ。ITに深くかかわる仕事をしていたので、テスト勉強を通じて、ひとつ自分の知識に磨きをかけてみようと思って受験したのである。

 なかなか難しかったが無事合格し、関係者コミュニティの「日本ITストラテジスト協会」というところにも顔を出している。日本ITストラテジスト協会に参加するようになったのは、仕事の幅を広げようとも思ったし、定年が近いので、再就職のヒントを得ようと思ったこともひとつある。……年金貰えるまで、働かないと生きていけませんからね(苦笑)。

 ところで、以前からWikipediaの「ITストラテジスト」の項目には

引用;

「IT系の資格では唯一、弁護士、公認会計士、医師、技術士等と並び、厚生労働大臣によって「専門的知識等を有する労働者」に指定されており、労働基準法において特例扱いの対象となる。」

……とあって、この資格もなかなか大したモンではあった。ただ、これは旧システムアナリストからの置き換えでそう書かれていたに過ぎないきらいがあり、従来ははっきりしていなかった。

 ところが、先日、厚生労働省のサイトを見ていると、こんな告示があった。平成27年3月18日付とあるから、去年の春の告示だ。

 これらの告示には、キッパリ「ITストラテジスト」が挙げられている。しかもなお、それこそ唯一、情報処理技術者試験で挙げられているのはこれだけだ。

 えっらいこっちゃ……。

 医者やら博士やら特許持ちやらと同列になっているではないか。

 いやまあ、この告示は、「専門家は非正規でも5年雇ったりもっと長期雇ってもいいよ」という法律の細部定義なので、手放しで「わーい、俺ってすごいや」と喜ぶようなことではないのだが、だがしかし、なんとなく偉くなったような気になるのも一種の人情だ。

NESMAと野村総研技法

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 ソフトウェアの外注で値段の尺度を出すのに、どうも「ダロカン」みたいなのに頼る向きが周囲に多く、定量的な尺度を持ってもらいたいものと常々思っている。

 FPでは規模は出るが、工数、ましてや金額など出ない。それで、SLOC/FPの統計を適切なところから引っ張ってきて、SLOCから人月を出し、人月単価をまた適切なところから引っ張ってきて、それで金額にする、ということをよくやる。これはCOCOMOの技法に似ている。

 ただ、ユーザがIFPUG法でFPを出すなんてことは、きちんとしたIT部署を持っていないと難しいと言わざるを得ない。

 そこで私はよく、「データモデルを迅速に作る」→「NESMA技法と野村総研技法を応用してアレンジした方式でFPを出す」ということをやる。不正確で誤差も大きいが、ダロカンで見積もって根拠がないために紛糾するよりはマシだと思っている。

 野村総研はNESMAに近い迅速方式を公表しており、ドキュメントもこのようにある。

  •  注目される新しいビジネスモデルのプロジェクト見積り手法(野村総研サイト資料)
  •  以前はオランダ・NESMAのサイトには日本語のPDFドキュメントもあったが、今は見当たらないようだ。しかし、NESMAは存外に雑な方法と言うわけではなく、今やISOにも入り、「ISO/IEC 24570:2005」として確固たる権威を持っている。

     ただ、これらの方法を用いるには、誤差が大きいということをよくわきまえ、それを関係者全員に周知徹底する必要がある。そうしないと、後になってまたぞろ紛糾することになる。

     そのことを説明するために、IPAの出している資料類を用いることもする。

  •  ソフトウェア開発データ白書(IPAの資料)
  •  この129ページ辺りの資料を示して説明すると、だいたい多くの人は納得する。

    「システム監査技術者」試験の勉強が難しい

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     先日、なんとか合格することができた「ITストラテジスト」試験である。日本ITストラテジスト協会にも入れてもらうことができた。なんとかこれで、仕事の幅を少しづつでもひろげていきたいと思う。

     今の高度情報処理技術者の試験には、以前と違って、こうやってどれかに合格すると「免除制度」というのが適用される。中小企業診断士の科目も免除になるし、同じ情報処理技術者試験の、午前試験の前半は2年間免除だ。

     そこで、次は「システム監査技術者」に挑戦してみることにした。

     だが、簡単ではない。

     私は、情報処理技術者試験では、いわゆる「高度区分」とされる資格を二つ持っている。「テクニカルエンジニア(システム管理)」と「ITストラテジスト」の二つだ。

     システム管理は、長年の業務経験があったし、ITストラテジストも、長年企画などの業務に携わってきたから、試験合格にはそれがプラスに作用した面がある。

     しかし、「監査」という仕事は、したことがないのだ。

     今、「午後Ⅰ」(午後の前半)の記述式の勉強をしているが、その業務経験がないということが祟ってか、私にとっては大変難しく感じられる。

     平成19年の過去問で、こんなのがある。

     この中の、問2。

    設問番号
    私の答案
    試験センターの解答
    設問1 D社の中小規模の顧客に対応した適時適量の納品を行うためのリアルタイム処理をC社側システムで確保できるか否か、最優先課題である顧客への影響の最小化を根拠に確認する。 バッチ処理が所定時間内に終了しない障害が起こっているので、D社システムの処理量が追加された場合に、C社システムの処理能力が十分かどうかの確認が必要である。
    設問2 最終的な監査報告を作業進捗ミーティングで行う事で経営トップのガバナンスが作用しなくなり、監査結果が全社的な取り組みにつながらないリスクを内包する。 監査報告が、監査依頼者である統合委員会に対して直接行われないので、統合委員会が、プロジェクト内の重要な問題を把握できず、適切に対応できない。
    設問3 該当「(4)」、移行に必要なノウハウを持つ社員の慰留及び確保の処置と、代替処置、新規採用、外注等の対策の実施。 該当「(4)」、リソースの減少によるプロジェクト進捗への影響を把握し、スケジュールの調整または見直しを行う。
    設問4 WGリーダへの直接のシステム仕様の変更指示は、本来経営トップを通じて行うべきことである。 C社システム上で実現できる範囲に機能を限定するようにシステム仕様の変更を指示していること。

     もう、なんか、全部の答案が、全部、的をはずしている感じである。