平凡社の世界教養全集第5巻「幸福論/友情論/恋愛論/現代人のための結婚論」を読み終わる。
どの評論も結局のところ海外のものの翻訳であったり抄録であったりするので、どうも論理に飛躍があるなどしてわかりにくいところも多く、「まあ、こういう論もかつて世にあったのだな」という感じで、面白い読書ではなかった。
但し、最後の評論、「現代人のための結婚論」は、平明でわかりやすい箇所も多く、この巻では最も共感の大きいものであった。
気に入った箇所
平凡社世界教養全集第5巻「幸福論/友情論/恋愛論/現代人のための結婚論」のうち、「現代人のための結婚論」から引用。
他のblockquoteタグ同じ。
p.512から
この本の冒頭にながながと述べたように、人とうまくやっていける技術と精神を身につけた人だけが離婚の十字架を負わなくてもすむかもしれない。そしてそう思えばこそ、「ゲット・アロング・ウイズ」ということを、私たちは何よりも強調したのだ。ゲット・アロング・ウイズは教育の事がらである。
p.513から
How do I love thee ? Let me count the ways.
I love thee to the depth and breadth and height.
My soul can reach, when feeling out of sight
For the end of being and ideal grace.
I love thee to the level of every day’s
Most quiet need, by sun and candle light.
I love thee freely, as men strive for right.
I love thee purely, as they turn from praise.
I love thee with the passion put to use
In my old griefs, and with my childfood’s faith.
I love thee with a love I seemed to lose
With my lost saints. I love thee with the breath.
Smiles, tears, of all my life ; and, if God choose,
I shall but love thee better after death.
下は、上の詩を佐藤俊夫が試訳したものである。誤訳等については寛容願いたい。
如何に汝を愛すや そが手段を数へ述べん
深きに広きに高きに汝を愛す
眼に見ざれば魂にて触ん
かの至善至高終るとも
汝を日夜愛す 陽と燈の欠くべからざるが如く
汝を自由に愛す 人正しきを求むるが如く
汝を純粋に愛す 人称賛より離るゝが如く
汝に情熱を注ぎて愛す
古悲しみに背けるが如く 稚き日々の信仰の如く
愛消るとも更に復た汝を愛す
聖魂失るゝとも 汝を愛す 息吹に
笑に 涙に わが生命の全てにより
神死を給てのち猶復た汝を愛さん
佐藤俊夫注記 原詩10行目後半「Childfood」は本書記載の通りとしたが、「Childhood」の誤字と思われる。
なおこの詩は、世界的に有名な詩であるようだ。イギリスのエリザベス・ブラウニングという詩人の作品である。私は知らなかった。翻訳もあまりないようだ。
p.515「解説」(堀秀彦)より
天才的な妻とは、たいへんやっかいな妻のことだ。非常に個性的な夫とは扱いにくい夫のことだ。結婚生活をしている限り、男も女もよい意味で平凡な人間でなければいけないようだ――だから、常識的でわかりきった結婚論がいちばんよい結婚論だとも言える。
p.516、同じく解説より
この本は人と人とがどうしたらうまくやっていけるか、という問題を出発点とし、一貫したすじとして書かれている。
上記は私の読後感と全く一致する。
言葉
ゲット・アロング・ウイズ
「Get along with」。簡略に言って「仲良く」であろうか。
引用元前記と同じ。下線太字は佐藤俊夫による。
p.512から(前出)
この本の冒頭にながながと述べたように、人とうまくやっていける技術と精神を身につけた人だけが離婚の十字架を負わなくてもすむかもしれない。そしてそう思えばこそ、「ゲット・アロング・ウイズ」ということを、私たちは何よりも強調したのだ。ゲット・アロング・ウイズは教育の事がらである。
単純な真理である。人と仲良くできないような者同士が結婚などできるはずもあるまい。
次
次は、同じく平凡社世界教養全集第6巻「日本的性格/大和古寺風物誌/陰翳礼讃/無常という事/茶の本」である。前巻と打って変わって全部日本人の著作である。但し、最後の「茶の本」は岡倉天心が英語で表したものであるから、翻訳である。