休暇前から楽しみにしていたルーブル美術館展を見に行ってきた。六本木の国立新美術館でこの2月から開催している。
テーマは「風俗画(ジャンル画 Peinture de genre)」であり、市井の人々の暮らしの絵や静物画など、さまざまな題材の企画展である。
昔のヨーロッパ美術は、キリスト生誕や聖母マリアなどの抹香臭いものを描き留めた宗教画が最も崇高なものとして価値を認められており、市井の風俗や静物などは一段低いものとされていたそうで、ところが逆説的に、画家は風俗画に自由な裁量を持つことができ、後世芸術的に優れたものが多く残る要因となったそうである。
普段であれば、誰かに誘われたというのでもなければそれほど興味もなく、広告も見過ごしてしまうところだったのだが、今回は違う。行ってみようと言う気になったのは、フェルメールの「天文学者」が、広告のキャッチ画像になっていたからだ。
それはこの絵である。有名であるから知っている人は多いと思う。
そのフェルメールの「天文学者」も、絵そのものをよく知っていて前々からずっと見たいと思っていた、というわけではない。この絵を私が知っている理由は、別のところにある。
私は、微生物の発見者としてその名を永久に記憶されているオランダの科学者、アンソニー・レーウェンフックを大変尊敬しているのであるが、フェルメールのこの絵のモデルは、彼、レーウェンフックではないかと言われており、そのために知っていたのである。
私がレーウェンフックを尊敬する理由は、彼が学府の学問を受けた本職の学者ではないからである。だがしかし、彼がうち建てた科学上の金字塔は、彼以外の誰も達成しえなかったほど巨大である。
そのことをまた、忘れないよう改めて書き留めておこうと思う。