前から「気づき」「学び」「気づきがあった」「学びがあった」などとする書き方や言い方の流行に
語 | 学ぶ |
語幹 |
活用形 | 活用 | 下接語 |
---|---|---|
未然形 | 学ば 学ぼ |
ない う |
連用形 | 学び 学ん |
ます た(だ) |
終止形 | 学ぶ | (言い切り) |
連体形 | 学ぶ | とき こと |
仮定形 | 学べ | ば |
命令形 | 学べ | (命令言い切り) |
一言でいえば、口語文法の場合、活用語尾が「ます」「た(だ)」につながる活用形が連用形である。この「気づきます」「学びます」の語部分「気づき」「学び」を名詞として使うものが「連用形の名詞化」だ。
理屈はともかく、日本語として違和感があることは否めない。文法的な違和感に加えて「気づき」だの「学び」だのと言いたがる人が苦手だということが私にはある。こういう言い方書き方をしたがる人というのは、
「気づいたことがあった」というのを「気づきがあった」としてしまう乱暴な動詞連用形の名詞化が許されるなら、「ムシャムシャ食べた」という状況を「旺盛な食べがあった」と表現することが許されるでしょう、そんな言い方書き方、しますか?……というのを、連用形の動詞化がおかしいと主張する例として、これまで私はよく使ってきた。早く言えば「『食べ』……ッて、そんな名詞、あります?」ということだ。
ところが。
先日、通勤電車に乗っていて、
ああいう広告というものは、無造作に貼られているように見えて、広告代理店その他の編集会議や校正やコンプライアンス審査など、様々な関門を
そればかりか、この惹句はなかなかにリズミカルで、よく出来てもいるではないか。温かい恋愛と文化と口福とが
……だがしかし、だがしかし、である。
ぬぅ……。遂に、「
ことここに至れば、今は使われておらず違和感があるにもせよ、近いうちに名詞化されるであろう動詞の連用形とその使用例を列挙しておくことに意味なしとしない。これから10年ほど経った後にこの列挙を読み返したとき、感慨深いものがあるだろうことは疑いない。以下にメモしておこう。
語 | 連用形 | 連用形名詞化用例 | 従来の言い方・書き方 |
---|---|---|---|
書く | 書き | Twitterその他のSNSで多数の書きが見られた。 | Twitterその他のSNSで多数の書き込みが見られた。 |
愛する | 二人の間には |
二人の間には |
|
似る | この兄弟には強い |
この兄弟はよく似ている。 | |
起きる | 起き | 今朝は気持ちの良い起きが得られた。 | 今朝は気持ちよく起きることができた。 |
混ぜる | 混ぜ | 小麦粉にしっかりと混ぜを入れます。 | 小麦粉はしっかりと混ぜます。 |
来る | おじいちゃんとおばあちゃんの |
おじいちゃんとおばあちゃんが来るのは10時ごろです。 | |
やる | やり | さあて、そろそろ本腰の入ったヤリをするかァ! | さあて、そろそろ本腰入れてヤルかァ! |
する | し | ねえ、「し」をする♥? | ねえ、する♥? |
はてさて、これらのうち、どれが当たり前に使われるようになるだろうか。その頃には、私は年金で暮らしていることだろう。今よりも増して尚
適当に思いつくまま動詞を列挙し、最後に「する」の連用形「し」の名詞化例として、「ねえ、『し』をする?」というヘンチクリンな例を書いた。普通は「ねえ、する?」と言ったり書いたりするのだ。何の気なしに書いたのだが、これまでのように、無闇矢鱈な動詞連用形の名詞化はいかがなものかという例に「食べ」を使うよりもよさそうだ。というか、しかし、この例が一般化したら淫靡でオモロい。