およそ15年ぶりにスキーをした。
水上高原に
12月27日から29日までの2泊3日、家族で出かけたのだが、その折に使った「上の原 山の家」という宿が大変良心的だったので、ここに書き留めたい。
出かける前、折から暖冬で、雪があまりなかった。宝台樹スキー場は広大なゲレンデなのだが、ネット情報では開いているコースは1コースのみであるという。しかも27日は雨になるというではないか。どうしようかなぁ、などと迷っていたら、その「上の原 山の家」から電話がかかってきた。「どうなさいますか、キャンセルなさいますか?」というのである。
まず、これが良心的の第一弾である。たしかにスキー宿だから、スキーについて参考になる情報を提供するのはあたりまえといえばあたりまえではあるが、しかし、スキー場とは何の関係もない周辺の宿たるにすぎないのだから、黙っていれば客は泊まりに来て、カネは払っていくのである。それを、「キャンセルなさいますか?」とわざわざ電話をかけてきてくれるというのは、正直のあらわれというものだ。
もともと、家族で旅行をする、というのも私たちの目的で、別に雪が少なくったっていいやァ、と思ってもいたからキャンセルせず、関越道を突っ走って宝台樹に着いた。
「上の原 山の家」は、着いてみると古い宿であることがわかった。だが、掃除が隅々まで行き届き、玄関の引き戸の桟一本に至るまで、拭き清められてあって、ホコリが溜まっているということがまったくなかった。この宿は年配のご夫婦が経営しておられ、お二人が昔かたぎで真面目な人物である、ということがそれだけでわかった。
ネット上の前評判では、「食事の量が少ない」などというものもあったのだが、とんでもない間違いである。量は十分であり、かつ、決して贅沢ではないにせよ、一品一品、工夫を凝らした真心の献立であった。食卓に着くと、手作りの箸紙のひとつひとつに手書きで客の名が墨書してあるなどというのも、実にすばらしかった。
27日は午後に到着し、その日は結局一日中雨に降り込められてスキーは出来ずじまいだったのだが、それを、「明日はどうなさいます?キャンセルされますか?」とわざわざ聞いてくるのである。たとえ明日雪が降らなかろうと、黙ってほうっておけば私たちは金を払って泊まるであろうのに、である。
風呂に入ると、風呂も隅々まで清潔に掃除が行き届いており、本当に気分がよかった。
さて、その翌日、28日。雪が少ないせいで、宿には私たちのほかには一家族いるのみである。ところが、この日から、日本列島には寒波が到来した。28日から29日にかけて、どんどんザクザクと雪が降ったのである。宝台樹では一晩で40センチ。さあ、キャンセルした人も多くて、客の少ない宝台樹には、私たちのほかにはほんの40~50人しかいない。コースはまだ1コースしか開かないが、いいのだ、こっちは幼稚園児と小学校3年生の4人家族づれである。初心者コースでマッタリ滑れれば何も文句はない。
久しぶりのスキーは本当に楽しかった。宿に帰ると、「お客さんが少ないですから、お風呂は女湯男湯をひと家族で片側づつ、貸切り家族風呂にして使ってくださいね」と、なんともうれしいサービスである。これも効率や経済をガマンした、良心的なサービスであると思った。
良心的な宿と、のんびり滑れるスキー場で、本当によかった。