今日の成り行き

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 今日は休みであった。

 先日、職場で廃棄ハードディスクドライブが2台ほど出てしまった。

 もともと壊れてしまったのはRAID5の中の1ドライブだ。わざわざRAID5にしているのはここで、これならデータの損失はないし、これまでの使用時間から言ってもやむを得ない。処置して事なきを得るかに思われた。サポートを頼み、ドライブを交換してもらった。

 ところが、である。最近の工業製品の余命というものは、複雑緻密きわまりない設計と驚くほど精密な製作によって、計算通りにピタリと尽きる。まるでタイマーでも仕込んであるようで、逆に感嘆せざるを得ない。つまり、同じ製品は同じ時期に壊れる。所謂(いわゆる)、「MTBF」(Mean Time Between Failure、平均故障間隔)が同じだからだ。

 そういうワケで、私の職場のRAID5も、ドライブ1本を差し替えた途端、冗長ディスクのもう1本が時をほぼ同じうしてイッてしまった。そりゃ、そうだろ、同じ時期に製造された品物を同じ時期に購入して、まったく同じ時間運転してきた同じMTBFの機材なんだから、似たような時期に壊れるのは道理というものだ。

 これは「よくある」けれども「最悪」である。リビルドする前にドライブ2台がイッちまったんだから。RAID5のドライブ2台が同時にイッちまうのは泣くに泣けぬ。「よくある」ってのは、基本的にRAIDは同じ銘柄、同じ種類のハードウェアで構成しなければならないが、先に述べた如く、同じ時期に調達したドライブは当然同じMTBFである。しかも、これは新規調達時期でないと手に入らない。というのも、最近のIT業界の経営スピードたるや、ほんの10年前の10倍には達しており、去年発売のドライブなど、市場で調達しうるかどうかも心もとない、という状況にあるからだ。

 幸い、運用の裁量の範疇で、テープにバックアップを取ってあったから、すぐに両ドライブとも交換を命ずることができた。

 ゴロン、と、ハードディスクの廃品が二つ出た。

 私の勤め先は大組織だが、私の一次所属先はまことに小さなところで、こうしたことは自分たちで始末しなければならない。

 製品の利用条件通り、製造元に持って帰ってもらうとマズい。故障品とはいえ、いろいろとデータが入っていたドライブだ。仮にイッちまったのが電子回路のみだったとしたら、引き渡したドライブのプラッターを取り出せば、いろいろと読み取られてしまう。そういうことが起こって責任問題となり馘首(クビ)になるというのなら潔く馘首にもなってやるが、賤職ごとき、免職になったからと言ってそれで済むのは私だけで、たくさんの人たちが(こうむ)る迷惑は(あがな)えない。責任の取りようがない。

 しかたがない。製造元と調整して、こちらで廃品ドライブを破壊して返却することを了承してもらった。

 最近はこういう調整もなかなか簡単ではない。昔なら、業者さんも「ああ、いいですよ、ドライブの二つや三つ」と鷹揚だったが、故障を偽って正常なドライブを交換し、横流しして懐に入れるというようなことがままあったものだから、交換した古品は持って帰って調べを受けなければならず、それが故意に壊されていたとあっては、フィールドエンジニアさんも独断では説明することが難しい。しかし、そこはよく頼んで調整してもらい、了承を得た。

 さて、そうなったらそうなったで、破壊、ったって、私の職場は工場ではないので、工具なんかない。下部には大工場もあるが、なにぶん大組織で、しかも腐っているので、私の立場から系統を通じてハードディスクドライブの破壊処理を命じたら、書類の始末だけで2年くらいはかかってしまう。そんなばかばかしい調整など、ハナからする気にもなれない。Fuck’in(笑)。

 それで、私物の電動ドリルと鉄工用のドリルビットを職場に持ち込んで、破壊処理をすることにした。普段、家の修繕などに使っているドイツ・ボッシュのインパクト機能付きのやつと、適当に選んだ5ミリほどの鉄工用ビットを職場に持って行ったのである。プラッターのところや緊要なコントローラのところを狙って、10か所も穿孔すれば、たとえ分解して磁気顕微鏡で解読したところで、ろくな情報は読み取れない。

 職場に私物工具一式を持ち込み、もくろみ通りダークな情報を飲み込んだドライブはズタズタに破壊できた。

 だが、私物ビットもズタズタになってしまった。そりゃそうだ、如何に長年愛用の鉄工用ドリルビットと言えど、完璧を期して、プラッターだけではなく、中心部の回転軸までバスバス穿孔したのだ。現代の超高速高密度のハードディスクドライブの命脈である回転部には超硬度のベアリングが仕込まれており、私ごときが私物で持っている程度のドリルビットでは歯が立たないのである。それを無理やり力任せに穿孔破壊したのだ。破壊中には火花が散り、刃先が赤熱して下に敷いていたダンボールに引火したほどであった。結果、十分に塗油していたにもかかわらず、刃先はナマクラ、加えてビットの根方が折損してしまった。ぬぅ、結構高かったんだがコレ。しかし、古いものだからあきらめるよりほかにない。

 ドリルビットは家で修繕や工作をするのによく使うから、ないと困る。

 前置きが長いが、今日秋葉原に来たのは、これを買いなおすためだ。

 千石電商に行くと、目当てのスチール用のフルセット、21本組が2千円くらいである。これと、ドリルビット用の研ぎ工具も買った。他に、自転車用のLEDランプなんかが300円とかで売っているからこれも買った。こういうものがいくらでも売っているから秋葉原は好きだ。

 さて、秋葉原と神田は隣街とは言うも愚か、ほとんど完全一体不離の街と言ってよい。そりゃあ、せっかく来たのだから、昼めしは蕎麦に決まっとる。

IMG_3994 「神田・やぶ」も、もちろん見捨てるわけにはいかないが、ついこの前も行ったばかりだから、今日は御無沙汰している「まつや」だろう。

 まつやで焼き海苔を肴にとって、蕎麦味噌と一緒に一合、それから「もり」を一枚。かー、やめられまへんて。IMG_3995

 蕎麦を手繰ったらさっさと帰ろうと思っていた。万世橋の方向へだらだら歩き、神田川のきらめきを見ていると、ああ、そう言えば(つば)広の中折れ帽を長女に取られたんだったと思い出した。コッチはだんだんハゲてきてるっていうのに、長女のヤツぁ、親父の帽子を無心するとは。今日はだから、素頭(スアタマ)で出てきたのだ。愛用のカスケットは夏には暑いし。

 暑いし、ハゲに悪いし、思わず旧万世橋駅の煉瓦ガード、「mAAch エキュート」へ逃げ込む私であった。ここはひんやりと涼しいし、静かで、飲み物も食い物も、商品も洒落ている。IMG_3996

 上野へ行って帽子を買おうかと思ったのだが、面白そうだから浅草へ行ってやれ、と思った。

 押上の駅で降りて、ダラダラ歩いていく。吾妻橋の向うに名物「浅草ウンコ」が見えるから、橋のたもとで自撮りしたら、頭にウンコがくっついたヒドい写真になってしまった。IMG_4004_arrow

 ここまで来たのだから、「業平橋(なりひらばし)」を見てみようと思った。東武スカイツリーライン・東京スカイツリー駅というのは、これができる前は在原業平(ありわらのなりひら)ゆかりの地で、「業平橋駅」という小さな駅だったのだ。だが、この業平橋そのものの実物はついぞ拝まずに過ごしてきてしまった。いい機会だ。

 業平橋は本当に小さな橋だ。橋のたもとは、子供たちが遊べる親水公園になっている。IMG_4008

 小倉百人一首に

 ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くゝるとは

 また古今集に

 名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

 いずれも業平これを(つく)るとされる。

 業平橋を渡って隅田川の向うに下ったら、やっぱり威容を誇るスカイツリーの野太さが私を呼ぶ。実は愚娘(ぐじょう)どもが小さい頃から、何度も東京スカイツリーには来ているのだが、やっぱり「アホと煙は高いところが好き」なのである。そして私は、アホだ。

 たまたま小遣いを持っていたものだから、つい数千円払って、てっぺんまで上った。

 かねてから、今日は玉音放送があることを思い出していた。ぬぅ。

 スカイツリーのてっぺんに上ったのが14時30分頃。玉音放送は15時ちょうどから予定されていた。

 まず皇居の見えるスポットを探し、そこに位置を占め、宮城遥拝を実行する。IMG_4018周囲の観光客(鮮支英欧米ほか各人種多し)には、あらぬ方(皇居方向)に向かって深々と頭を下げている私がよっぽど変な人に見えたに違いないが、そんなもん知るかボケ。人が何しようがほっとけやアホンダラ。

 スカイツリーから遥拝する宮城は今日も緑の中におさまり、右に屹立する防衛省の電波塔、左に繁栄を謳歌する都心のビル群に囲まれ、今日も静謐に鎮座まします。

IMG_4021 愛用のスマートフォンのワンセグは、さすがに電波発信源の直下で受信しているわけであるから、もう、溢れんばかりのビンビン感度である。

 で、遥かに皇居を眺めながら、玉音放送をすべて見たのであった。

 畏し。謹んで大御心(おおみこころ)を承り、なんとしても国民一丸、挙げてこの問題に取り組むことこそ、御言葉に沿い、かつ国民にとっては「老齢化」ということへの対策となることでもあろう。

IMG_4034 御言葉に打たれたようになって粛々とスカイツリーを下り、押上駅から帰ろうと思ってフラフラ川沿いに出たら、橋のたもとで若いお兄さんが「十間(じっけん)川を船でご案内しますよ~、50分のクルージング~」と売り込んでいる。「川にスカイツリーが逆さに映るから、面白いですよォ~」という文句につられた。船着き場の近くにセブンイレブンがあり、そこでI.W.ハーパーのポケット瓶を買って乗ってみた。

IMG_4046 無邪気で気楽な昼の川見物で、鬼平犯科帳に出てくるような十間川を旧中川まで、ゆっくりと下るのだ。

 おお、確かに、これはスカイツリーが晩夏の暮れ加減の逆光の中、逆さに水面(みなも)に写って、まことに面白い。川風を胸元に入れながら、ハーパーのポケット瓶は瞬く間にカラになった。IMG_4038

 船着き場に帰り付いて、スターバックスでドリップのトール、冷たいハウスブレンドを一杯。

 今日はそんなことをして、なんだかダラダラと無計画に日を送った。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

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