10年前はこんなことをシレッと書いていた。当時47歳だったが、毎日毎日この調子だった。去年自衛隊を定年退官したので、もうこんなことをする義務はない。苦役から解放され、実に晴れ晴れとした気持ちだ。
苦役。そう、苦役である。
往時内閣法制局長は、数代にわたり、政権がひそかに徴兵制を検討しているのではないかとの野党の質疑に対し、「徴兵制により自衛隊に入隊させることは、憲法第18条において否定されているところの本人の意に反する『苦役』を強制することに当たるものであり、よって憲法により禁じられていると解される」と言い放ってきたもので、国会議事録を検索すると続々とそうした発言がヒットする。
「本人の意に反する」というのが公権力によって何かさせられる、ということであり、それが「自衛隊への入隊」であるなら、自衛隊の活動は苦役である、という論理になる。
当然私は自らの意思で希望して入隊したのであるから、それについてどうこう言う立場にないが、入隊時に「君が今からやろうとしていることは憲法で強制することが禁じられている苦役である」とは、採用する側の自衛隊では誰も言わなかった。
私は中学校を出てすぐに自衛隊に入った。無知な中学生でしかなかった私に公的な政府の見解を積極的に開陳しなかったのだから、これはいわば詐欺である。
野球やサッカーや筋トレや駆け足なんか大嫌いという私が、40年もの間自衛隊で体を鍛え続け、定年直前でも体力検定1級を維持していたことなど、苦役でなくてなんであったろう。無期懲役の人殺しだって、30年ほどすれば仮釈放になるのだ。それを40年とは、我ながら悲しくなってしまう。