ショパン・プレリュードOp.28-No.15「雨だれ」 まだまだ稽古

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 毎朝のようにピアノの稽古を続けている。

 自分では「間違っていたことを正しくした」つもりでも、「正しかったことを間違った風に変えてしまった」という、とても分かりやすい反省体験をした。

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 写真は、ショパン作曲、プレリュードOp.28-No.5変ニ長調及び嬰ハ短調、通称「雨だれ」のプレリュードの楽譜の一部である。そう、私がもう、この2年と言うもの、阿呆のように毎日毎日稽古している曲だ。

 ある日、長楕円で記したところの弾き方が、どうもしっくり来ないような気がした。この部分は大分前に暗譜してしまっていたから、楽譜を見ることはほとんどなかったのだが、あらためて目を近づけてよく楽譜を見た。

 ピアノの楽譜であるから、どの指で打鍵するかを示す「1」「5」などの数字や、どちらの手で弾くかを示す「[」のようなくくり記号が入っているのがおわかりいただけると思う。

 この曲は平明な曲で、初心者向けなのだが、最初に述べたとおり「変ニ長調及び嬰ハ短調」、すなわち♭記号5つに♯記号4つという、初心者には指がつりそうになる曲でもある。

 で、写真の部分の、左手(下の段)をよく見た。「1」と数字の入っているのが親指で「ド」だ。うんと手を広げて、小指で「下のレ」だ。写真には入ってないが、調性は「変ニ長調」であるから、「ソラシレミ」が半音づつ下がる。なので、左手小指の「レ」は、ひとつ向こうの黒い鍵を弾く。

 しかし、実は、これは間違っている。写真の「誤」と朱筆した弾きかただ。

 写真の「正」のほうの鍵盤図が正しい弾きかただ。すなわち、左手親指の「ド」は、実は半音下げて、ドには黒鍵がないから、下の「シ」を弾くのが正しい。それは、その二つ前のところで、写真に小さな矢印をつけた「臨時のフラット」がついているからだ。臨時についた調性は、その小節内ではそのまま保つ決まりだ。

 私は、はじめはこのことを正しく理解していたらしく、正しく楽譜を読み、正しく弾いていたようだ。

 だが、なんとなく変な感じがして、もう一度楽譜を見た。「なんだ、親指「ド」じゃないか、ははは」と、その二つ前の臨時記号を見落としてしまった。最初にこの部分を読んだのはおよそ1年半前であり、すぐに覚えてしまったから、その後まともに楽譜を見ていなかったのである。

 せっかく正しく弾けていたものを、間違った方に直すことになった。が、これは、演奏の流れ上、「左手の人差し指で黒鍵のレ♭に触れつつ、1オクターブ下の黒鍵のレ♭と無印のドを親指で弾く」という、だいぶムチャな手の形になる。無理矢理そういうムチャな弾き方に直したが、耳で聴くと、どうも和音がおかしい。

 3日ほどもこのムチャな手の形で練習し続けたあげく、「やっぱりおかしい」と、先程もういちど楽譜をよく見直した。

 わかってみるとまことに単純極まる、初心者らしい間違いだ。

 しかし、私は、仕事でもこういうことをしょっちゅうしでかしているのではないか、と、暗然たる思いになった。

 これからは、「当たり前」だとか、「それは2年前にちゃんとたしかめたから」とか、あるいはちょっとだけ見てわかったようなつもりになり、おかしいことを押し通す、というようなことがないようにしたい。

 珍しく殊勝にも、朝から反省することしきりである。

投稿者: 佐藤俊夫

 50代後半の爺。技術者。元陸上自衛官。2等陸佐で定年退官。ITストラテジストテクニカルエンジニア(システム管理)基本情報技術者

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