読書

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 吉村昭の「大黒屋(こう)太夫」、上下巻とも読み終わる。

 実在の大黒屋光太夫は10年もの間異郷ロシアで過ごす。しかしこの作品での物語の展開はスピーディだ。主人公光太夫がダメもとでオランダ公使に手紙を託すシーンがあって、その文中で「この八、九年と申すものは……」と、突如9年ほどもの時間が経っていることを知らされて読者は驚くのである。多くの読者は、このあたりを読んでいるときには、「あれっ?……まだ(ふた)冬か()冬くらいしか経っていないはずだが……?」くらいの感覚しか多分ないと思う。

 ともあれ、とても良い本で、面白く読み終えた。女帝エカテリーナに拝謁するシーンの緊張感、高揚感、また帰国後将軍に引見されるところなど、光太夫の気持ちが伝わってくるようであった。

 司馬遼太郎が「菜の花の沖」で高田屋嘉兵衛を描いた昭和57年(1982)頃は、大黒屋光太夫の伝記にはまだはっきりしていない部分があったらしく、一般に大黒屋光太夫は晩年不遇であったということになっていたらしい。「菜の花の沖」の中にも、「高田屋嘉兵衛に比べて、大黒屋光太夫は帰国後幽閉のような状態に置かれ、不遇な晩年を過ごした」というような描写がある。またそれは、井上靖が大黒屋光太夫を主人公に据えて書いた名作「おろしや国酔夢譚」でも同じであるらしい。

 ところが、吉村昭が「大黒屋光太夫」を書いた平成15年(2003)頃までには、それまで未発見であった古文書などが見つかり、光太夫はそれほど不遇ではなかったらしいことがわかってきたそうで、そうした古文書の研究結果などが反映され、この「大黒屋光太夫」の作品中ではどちらかというと平穏で恵まれた晩年を送ったように描写されている。あとがきや、Wikipediaの「大黒屋光太夫」の項目などからも、そうしたことがわかる。

 さて、次の読書だ。この実在の人物・大黒屋光太夫に関する基礎資料中の基礎資料は、なんといっても「北槎(ほくさ)(ぶん)(りゃく)」である。これを読まなければ面白くない。

 「北槎聞略」は岩波文庫から出ている。越谷図書館の蔵書にないか探してみたが、どうも、ないようだ。では、とAmazonで探すが、現在は市場にないらしく、入手可能なのは中古品のみである。

 では、ということで、184円+送料350円=534円で購入。Amazon Primeではなく、古本屋の出品なので、月曜以降に届くようだ。
 

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