読書

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 引き続き約60年前の古書、平凡社世界教養全集を読み進めている。

 第7巻「秋の日本/東の国から/日本その日その日/ニッポン/菊と刀」のうち、三つ目の「日本その日その日」(E.S.モース著)を読み終わった。

 著者のモースは、私なども学校で「大森貝塚」とともに発見者としてその名前を習ったもので、大の新日家として知られる。

 素直な驚きと愛ある(まな)()しで維新間もない頃の日本を見ていて、本人自筆のスケッチを交えつつ克明にこれを記録しており、面白い。

 本巻最初の「秋の日本」(P.ロチ)のような、どこか(さげす)んだところのある筆致ではない。逆にまた、「東の国から」(L.ハーン)ほどの美しい(あきら)めと悲しみも込められてはいない。学者らしい冷静な所感集成だと思ったが、一方で日本への入れ込みっぷり、熱い「日本ファン」、もっと言えば「日本マニア」「日本オタク」のような(おもむき)の感じられるところもあり、そういう点では多少冷静を欠いていると言えなくもない。それは、下の「気に入った箇所」で挙げるところなどにも述べられている。

気に入った箇所
平凡社世界教養全集第7巻「秋の日本/東の国から/日本その日その日/ニッポン/菊と刀」のうち、「日本その日その日」より引用。
他の<blockquote>タグ同じ。
p.265、藤川玄人氏の「解説」より

あるときのこと、本書の訳者の父にあたる石川千代松が、モースに向かって、日本にだって泥坊もいれば、行儀の悪い人もおりますのに……というようなことをいったところ、モースは、そうだろうとも、だが、それはみんな外国人が教えたことだ……といった、という逸話が残っているが、この話などは、モースを伝えて躍如たるものがあるといえよう。

言葉

 これで「(たるき)」と()む。意味は「垂木(たるき)」と同じである。屋根組みなどに使う角材と思えばよい。

p.197より。下線太字は佐藤俊夫による。

一端を臼石の中心の真上の(たるき)に結びつけた棒が上からきていて、その下端は臼の端についている。

 これで「(のき)」と訓む。また「(ひさし)」とも訓み、音読みでは「エン・タン」である。意味は勿論、「(のき)」「(ひさし)」と同じである。

p.200より

(のき)から出ているのはハナショウブの小枝三本ずつで、五月五日の男子の祭礼日にさしこんだもの。

(魚へんに荒)

 おそらくはUnicode IVS依存で、多くの環境でこの部分はうまく表示されないだろう。「魚へんに荒」という字を表示させている。これで「(あら)」と訓む。そのままの訓みだ。

p.209より。ルビは佐藤俊夫による。

江ノ島は漁村であるが、漁夫たちは掃除をするときに注意ぶかく(あら)を全部運び去り、そしてこれを毎日行う。

 ここでは、「アラ」という鍋物などによい魚の一種のことではなく、魚の(さば)(くず)のアラのことを言っている。

堅果の虫癭(ちゅうえい)

 「虫癭(ちゅうえい)」というのは「虫こぶ」のことである。……と言っても、なにがなんだかわからないと思う。

 街路樹などでも、木の幹がところどころ(こぶ)を結んででこぼこになっているのを見かけることがある。樹木の種類にもよるが、これは樹木に虫食いが生じたとき、その樹木は防衛のため、自らの樹液のタンニンを集めてその部分へ送り込み、じわじわと虫を殺すのだ。虫は死んで溶け去ってしまい、その瘤の部分からは黒くなった樹液が取れる。

 この黒液は非常に染色作用が強く、欧米ではこれをインクに用い、そのインクのことを「虫こぶインク」とも言うのである。

p.248より

その一つは粉状で灰に似ている堅果の虫癭(ちゅうえい)を入れた箱で、他には鉄の溶液を含む液体が入っている。

 ここでは、日本の既婚婦人が「鉄漿(おはぐろ)」を使う様子をモースが物珍しく見物し描写している。

 次はB.タウト(Bruno Taut)の「ニッポン」である。

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