カシオの電子辞書「EX-word XD-Z6500」を買った。3年半前の製品で、既に製造が中止された型落ち品だ。中古ではないが、旧モデルだから安くなっており、1万9千8百円であった。
なんでそんなものを買ったのかというと、「角川俳句大歳時記」を手元に置きたくなったからである。
私は普段、俳句を詠むのには、若い頃から愛用していた平凡社の歳時記と、10年くらい前に買った角川の合本歳時記第4版、同じものの文庫版、その他小さい季寄せの類を使っている。
ちょっと難しい季語を調べたいときには、図書館で角川の大歳時記を引いていた。
しかし、どうしても手許で大歳時記を引きたくなったのである。それは、「百鬼夜行」という言葉が季語かどうか確かめたかったからだ。ところが、今は
角川の大歳時記は、春・夏・秋・冬と新年の5巻からなり、1巻は4千4百円である。全部新品で揃えて手許に置くと2万2千円という計算で、随分と高くつく。
一方、カシオの電子辞書には以前から角川の大歳時記を全巻内蔵している機種があることを、私は知っていた。自分が電子辞書など持っていないにもかかわらず、人様には「私は持っていませんが、もし角川の大歳時記を安く手に入れたいと思うなら、カシオの電子辞書を買うのも手ですよ」などと勧めたりもしてきたのだ。
実際のところ、カシオの電子辞書には、歳時記についてだけ見ても、角川大歳時記全巻だけでなく、同じ角川の合本俳句歳時記と、現代俳句協会の「現代俳句歳時記」(学研)、「ホトトギス俳句季題便覧」(三省堂)までが収められるという驚くべき充実ぶりだ。歳時記だけを見てもそうだが、他にも百科全書が3種類、三省堂の広辞林はじめ辞書が3種類、英和、和英、現代語、漢和辞典、はては料理レシピや動植物図鑑など、これでもかというほどにコンテンツが詰め込まれており、その数は実に160個に及ぶ。これらを紙で買ったら20万円はかかろうかと思われるほどの大量の辞典類が、わずか十数センチ四方、重さ300グラム足らずのちっぽけな機器に収まっているのだ。無論、検索は紙の本よりはるかに速い。いや、紙には紙の良さがあるが、しかしこの充実ぶりには膝を屈せざるを得ないのである。
さっそく「百鬼夜行」を検索し、どの歳時記にもないことを確かめた。百鬼夜行と言うと夏のような感じがするが、そうではないのである。先日詠んだ拙句
……これの季語は「裸」で夏なのであるが、ひょっとして「百鬼夜行」と季重なりになっているのではないか、と心配になったのだ。愛用の角川合本のほうに載っていない古い季語が、大歳時記の方にはあるかもしれないからである。
結果、季重なりでないことが判って、ホッとした。