ブラックホールの研究が一歩進んだという。米国を中心とする研究チーム「LIGO」による重力波の観測がそれである。
こうした研究が幅広く進み、ブラックホールのなんたるかが更に詳細に解明されてゆけば、いずれ、SF小説の中にしかなかった人工ブラックホールも作られるに違いない。専門家によると、物質をシュワルツシルト半径と呼ばれる限界の半径以下にまで圧縮すると、これはブラックホールになるのだそうである。例えば、地球ほどの質量のものであれば、直径18ミリにまで圧縮するとブラックホールになるのだそうだ。
そうすると、地面から両手ひと掬い分、10センチほどの大きさの、文字通り「一握の砂」をとり、これを7億分の1ミリメートルほどに圧縮するとブラックホールになるのであろうか。
人工ブラックホールは兵器に転用すると良いだろう。投射可能兵器にして地球に近づく小惑星等にこれをぶつけ、その衝突から地球を救うという妄想もよいが、これにボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーでもくっつければ、なんだか安物のハリウッド・ヒロイックの一丁上がりみたいで面白くない。
ここはやはり、日本による世界征服の野望を達成すべく、人工ブラックホールを作動原理に採用し、核兵器の威力など遥かに超越した「地球粉砕兵器」の建造をこそ目指すべきだろう。緊急総動員した科学者・研究者をして兵器の建造に従事せしめ、地球粉砕を可能ならしむるべきだ。
地球粉砕兵器は、ひとたび起動するや地球全部が粉砕されて消滅するという恐るべき兵器である。日本を含め、地球全部が消滅するので、核兵器のようにロケットなどに搭載して敵国の首都に精度よく投射するというような必要はまったくない。その場で炸裂、即地球消滅であるから、これは地球人全部を人質にとった自爆テロのようなものである。なァに、スーサイド・アタックはカミカゼ以来日本のお家芸であるから、今更なんてことはない。
地球粉砕兵器・ブラックホール爆弾の設置場所は、皇居の地下1000メートルがよい。そして、その起爆権は、畏し、恐れ多くも、ひとり天皇陛下のみがこれを保持したまう。
これを起爆する場合、天皇陛下は衣冠にお姿を改められ、皇居の地下1000メートルまで降りたもうて、そこに設置された地球粉砕兵器におん臨みあそばされる。地球粉砕兵器の起爆トリガーは、「大幣」の姿をしている。そう、神社でお祓いの時に使う、棒に紙垂のついた、あのハタキみたいなやつだ。アレがほの暗い皇居の地下に、三方にのせて安置されているのである。
天皇陛下が神事を執り行われ、この大幣を手に取る。大幣は形こそ古式ゆかしいが、その祓串はハイテクの塊で、天皇陛下の指紋や静脈パターン、脳波、DNA等あらゆる資格情報を検知して識別認証が行われる。天皇陛下以外の者の操作では、起爆は絶対に不可能なのだ。そして、陛下が徐に大幣をサッ!と祓い給うや、見よ、間を置かず、八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣からなる三種の神器が、関東平野全域の地下に張り巡らされた極超大規模光速加速装置、スーパーLHC「大日本帝國号」によって光速にまで加速されて互いに衝突し、たちどころに10億分の1ミリ以下の大きさに圧縮され、「三種の神器ブラックホール」が出現するのだ。地球はおろか、地球周辺を漂う光すらすべて三種の神器に飲み込まれて消滅だ!祓穢の神通力をここに見よ!腐りきった地球人類など全部祓われてしまえ!!
これを可能にすれば消滅の恐怖は世界を屈服させ、すべての価値は万世一系の天皇陛下に帰着し、その遍き御稜威の下にひれ伏すこととなろう。ほんの僅かでも天皇陛下の御感を損ずることあらば、即、地球は粉砕、すべては無である。
まことに恐懼のことながら、将来は女帝の治世も考えられる。全世界がこの女帝に傅くのだ。
嗚呼、畏きかな、あなかしこ、恐懼々々、天皇陛下万歳。ブラックホール万歳。