百合

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(うつむ)きて泣くや()つ日の雨後(うご)の百合   佐藤俊夫

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表裏(おもてうら)のない若い人

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 私のそばに、表裏(おもてうら)のない人がいる。私よりうんと若い人で、頭がよく、スピードもあり、恬淡としていて、体が頑強で、真面目だ。それらよりまして、正直なことがその人の良いところだ。尊敬すべき人物である。儒語に曰く、「後生(こうしょう)(おそ)るべし」というのはこういうことだと思う。

 その人を見ていて、自分を振り返ると感懐去来する。私はもともと、正直な人物ではなかった。それが芯から底から嫌になったことがあった。そのため、私も表裏のない人になろうとしたのである。人の悪口を陰で言ったりするのをやめよう、その人の前で言えないことは、陰で決して言うまい、陰で言うのなら、その人に直接言おう、極端な話、その人をバカだと思うのなら直接バカと言って怒られよう、というわけだ。

 決意は立派だったが、元来が正直に育った性質(たち)ではないから、正直さが骨の髄まで沁みとおってなどいない。長じてから他人の正直さを羨んでやってみようと思っただけの事だから、所詮、付け(やいば)、やっているふりに過ぎない。

 そんなふうに、中途半端に裏表のない性格の人になろうとしたものだから、変にこじれて、人に対して皮肉を言うようになってしまった。

 つまり、正直さ、表裏のなさから来る人間対人間の摩擦がしんどく、省力化をしようとする。

 人に対して表裏なくふるまうことは結構大変なことで、力が()る、それを省力化しようとして、無駄な部分を削り落とすことにしたのだが、間違ってその弊害の部分、悪い部分、しかも中途半端に悪い部分だけを残して良い部分を削りおとしてしまったのだ。すなわち、バカにバカと言うと相手を怒らせてしまってコッチもしんどいから、「あなたのやり方はあなたの頭脳から言えば上々のうちには入りますよ」などという、よく聞くと「あんたはバカだ」と言っているのだが、かえってひどい言い方で相手を傷つけるという、中途半端な正直さの人、要するに「皮肉家」になってしまったのである。

 今度はそれをも反省してその性格を直そうとしたのだが、これがまたなかなか直らない。最近になってだいぶ直ったが、まだ他人に皮肉を言う悪い癖が残っている。

 何にしたって、人を傷つけるようなことを言うのは、やめようと思う。よく考えても言い方がわからないときは、黙っていようとも思う。