立待

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 今日は旧暦五月の立待月(十七夜)である。立待月は狭義には旧暦八月の十七夜のことで、仲秋の名月の二夜後だが、広義には普通の十七夜のことをこう呼んでもよい。

 気象庁から「梅雨入りらしい」という発表があったのは先週のことだが、暦の上の「入梅」は今日で、名実ともに梅雨入りしたと言えるだろう。

 それにしても雨が降らない。今のところ空梅雨らしい。一昨夜も昨夜も晴れて、夕方には月が綺麗だった。昨夕など気圧が下がったか、水の匂いがして風向きが変わり、遠雷が聞こえ、頭上に積乱雲が成長する気配すらあったが、結局私の周囲には雨は降らなかった。その後晴れて、暑い夜になった。

 こんな夕方には明るいうちに風呂をつかうにかぎる。

 さっさと汗を流したら、冷蔵庫から氷の塊を出してカチワリをたくさん作り、ウィスキーを飲むのが良い。飲み慣れたバランタイン、ひと瓶千円しない。風呂上がりに飲むなら、(つまみ)も水もいらないや。

 あちこちの植栽の、花皐月(さつき)のよっぽど遅咲きのものもそろそろ(しお)れた。少しすれば盛夏、ある意味また別れと出会いの季節である。

近所の花皐月(はなさつき)

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 私の住む新越谷駅(そば)、市民会館のある「サンシティ」の植栽の花皐月(はなさつき)が満開だ。

 もうすぐ梅雨だな。

梅干に梅シロップに梅酒

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 そろそろ梅雨も終わる感じがするが、気象学上のアナウンスは関東甲信越地方にはなかなか来ないようだ。しかし今日一日など、日中は青空が広がり、雲の峰高く、実質既に梅雨明けだろう、という気がする。天気図には梅雨前線も見受けられないようだ。

 妻は青梅を沢山仕込み、梅酒と梅シロップを漬け込んだ。梅干は姑を手伝って、今年もたくさん分け前にあずかる。IMG_3937

 これらの中でも使い勝手が良くて旨いのが「梅シロップ」だ。香りも味もよく、梅酒とは違って子供が口に入れるのにも心配がない。

IMG_3939 梅シロップは、昔は浸透圧を使って果汁を吸い出すのにわずかにアルコールを添加したりしたものだが、今は昔と違って手早い作り方がある。

 すなわち次の如しである。

  1.  青梅1キロ、氷砂糖1キロを買い込む。
  2.  青梅はよく洗い、竹串や爪楊枝でヘタを綺麗に(えぐ)り取る。黴菌(ばいきん)がつかぬよう、できるだけきれいに作業する。
  3.  漬け込むための瓶は、使う前に熱湯やエタノールでよく消毒する。不潔だと腐る場合がある。
  4.  青梅をビニール袋に入れて冷凍庫に放り込み、完全に凍らせる。
     ここが肝心なところだ。冷凍することで細胞膜が十分に壊れ、アルコールを添加しなくとも果汁が出るようになるのである。
  5.  消毒した瓶にこのカチカチに凍った梅を、同量の氷砂糖と一緒に入れ、冷暗所に置く。
  6.  毎日瓶を震盪(しんとう)しつつ、概ね10日ほども経過すると、氷砂糖が全部なくなり、徐々に作用する浸透圧で梅の果汁が絞り出され、梅は搾りつくされた繊維のような姿に、そして、瓶には澄んで甘い、すばらしいシロップが引き出されてたまる。

 このシロップは、そのまま味わっても旨いし、ゼリーや寒天などの菓子の味付け、清涼飲料として冷水で割ったりかき氷にかけてよし、製氷皿で凍らせればなお珍しい氷菓、ウィスキーや焼酎に割り入れてよし、まったく飽きることのない口舌官能の楽しみとなる。

 但し、漬け上がったあとの梅の実は、梅酒を漬けた後のうまい梅と違って、完全に果汁を搾り取られたカスのような姿になり、食ってもあまり旨くないので、その点注意が必要だ。

そろそろ

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 湿度が高く、光の散る晴れ方の朝だ。このところ、近所の家々の紫陽花(あじさい)はすっかり(しお)れたが、いれかわりに百日紅(さるすべり)の花が鮮やかに咲きはじめた。

 旧暦六月十五日。十五夜だが天文観測上の望月は明後日だという。新暦7月の和名は文月(ふみづき)だが、本来の旧暦なら名前ばかりの水無月(みなづき)である。実際は梅雨の最中で、「水あり月」だ。

 そろそろ梅雨明けかな、という雰囲気もあるが、あらためて天気図を見ると、列島はまだまだ長く伸びた梅雨前線の水蛇にとりまかれており、もう少し我慢というところか。

 関東に住んでいると、今年は(から)梅雨なのかな、という感じがするが、さにあらず、先日は千葉で冠水騒ぎだったし、関西・東北ではむしろよく降っているという。

 梅雨(つゆ)は「ばいう」とも読むが、この音読で「黴雨(ばいう)」の字を当てる場合もある。高い湿度で(カビ)臭くなるというほどの意味だ。

 思いついて手元の歳時記を繰ると、見出し・傍題含めて、雨に関してはたくさんの季語がある。試みに書き出してみよう。

 夏の雨 緑雨 卯の花(くた)し 卯の花くだし 梅雨 黴雨(ばいう) 荒梅雨(あらづゆ) 男梅雨(おとこづゆ) 長梅雨 梅雨湿(じめ)り 走り梅雨 迎へ(むかえ)梅雨 送り梅雨 戻り梅雨 青梅雨 梅雨の月 梅雨の星 梅雨雲 梅雨の(らい) 梅雨曇り 梅雨夕焼け 空梅雨 (ひでり)梅雨 五月雨(さみだれ) 五月雨(さつきあめ) 虎が雨 虎が涙雨 夕立 ゆだち 白雨 驟雨(しゅうう) 夕立雲 夕立風 喜雨(きう) 雨喜(あまよろこ)

 日本は高温多湿、雨が多く、四季のはっきりした風土なのだなあと改めて感じるのである。とりわけ、梅雨に関する言葉の多さときたら。

 また、「雨喜び」などという季語には、本当に農民の心が表れているな、と思う。

 「驟雨」という言葉には品と格があり、心に響く。それに比べて、最近「ゲリラ豪雨」という言葉が報道などで使われるが、これはまったく品もへったくれもない言葉だ。「ゲリラ」で「豪雨」だよ?いや、勿論、人的被害が出ているようなときに驟雨などと言って澄まし返っているわけにはいかないが、場面場面にちょうどよい言葉を使ってもらいたいものだ。

 テレビで美しいアナウンサーが、その美しさとはうらはらに「凄いゲリラ豪雨になる可能性がアリマス!」などと言い放つと、本当にがっかりする。「凄い」もどうかと思う。まあ、被害が出るような場面での「ゲリラ豪雨」は仕方がないが、「可能性」という言葉をここで選んではいけない。せめて「強い雨が降る恐れがあります」と言うべきだ。

 可能という漢語は「(あと)()く…」する時、つまり積極的な方向性があるときに用いるもので、被害が出るような場面で使ってはいけない。しかし、例えばゲストの大学の先生あたりが学術的な語として「梅雨前線の停滞で豪雨被害が出る可能性もある」というふうな使い方をするのは、これは学究の言葉であるから、まず構わないだろう。

 こう書いて来るとまるで爺ィの繰り言だ。オッサンから爺ィになってきた。

 言葉は時と人により変化していくものなのだから、あまり偏屈な繰り言は言うまい。

 何か雨の面白いものは、と検索すると、Youtubeにジーン・ケリーの「雨に唄えば」があった。

 名作だなあ。これでも見て、繰り言は休題にしよう。

梅雨のフロート

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 雨の匂いはするけれど、簡単には降り出さない。暑い曇りの一日になった。私の住む越谷市は、日本でも有数の暑熱の街で、何年かに1回は南国・那覇をもしのぎ、暑さ日本一となる。さすがに暑熱王国の群馬前橋や、埼玉熊谷には一歩譲るのだが……。

 そんな日曜日の午後である。

 以前、友達が「フロート」というウィスキーの飲み方が好きだと言っていたのを思い出した。

 フロートの作り方は簡単だ。ミネラルウォーターをタンブラーかロックグラスにほどほどに入れ、少しステアし、10秒がところ冷えるのを待つ。そこへ後からウィスキーを注ぐ。この時、ミネラルウォーターと混ざってしまわないよう、そっと注ぐのだ。そうすると冷水との比重の違いにより、美しいグラデーションのシンプル・カクテルができる。

IMG_3884 使うウィスキーはバーボンでもスコッチでもよいが、グラデーションの美しい色合いを楽しみたければ色が濃い方が面白いので、樽色の濃いバーボンのほうがいいかもしれない。

 これはガブガブ飲むものでもなく、いい匂いを楽しみつつ、文庫本の一冊も手元にもってきて少しづつ飲むのだ。しばらくして喉元に(ほの)明るい蠟燭の灯火(ともしび)のようなものが(とも)る頃、不意に澄んだ水の味がして、あっさりさっぱりとする。カクテルの一分類である割にはカロリーも少なく、洒落ている飲み方だと思う。なにより、旨い。

 暑い中、かちわり氷を砕いて、いつもの酒でフロートを作ってみる。

 ()し方、反省と言うのでもなく、だがいろいろと考えるところ多し、である。

入梅

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