天皇陛下万歳
祝日「建国記念の日」である。玄関先に掲揚した国旗は新春の青空と陽光に映えて美しい。
言うまでもなく今日は昔でいう「紀元節」であり、神武天皇即位の記念日である。日本人すべての新春だ。
オッサンは生きている。
天皇陛下万歳
曇天だが、軒先に高々と国旗を掲揚する。
長女がようやく成人式を迎えることができた。まだ学生の
長女は気分が乗らないらしく、今日は特に衣装を整えたり盛り場に出かけたりと言ったことはしないようだ。せっかく準備していた振袖も、キャンセルしてしまった。それもよい。いろいろな成人式があるということなのだろう。
私自身も、30年前、自分の成人式に出ていない。これは、長女と違って、その日は仕事をしていたからである。
だから、数年前まで「荒れる成人式」というようなニュースを見聞するたび苦々しく思っていた。しかし今は、そういうふうに思っていない。自由に喜べ、と思う。乱痴気騒ぎをする無軌道な若者も許され、また、長女のように、静謐に成人式を送る喜び方も、また許容されるのだ。
成人式だけではない。いまや、人のあらゆる
たとえ苦しくとも、間尺に合わないと感じようとも、これまで自分が我慢し、それを受け入れてきた、というようなことを、相手も同様に受け入れられる、相手もできるはず、それを相手がしないのは、相手が怠けているからだ、相手に忍耐の精神がないからだ、相手の努力不足だ……などと思うのは、自分の思い上がりと言うものなのだろう。
私などは、国民たるもの、
私は、それをも寛容しようと思う。
しかし付言しておけば、だから、逆に、かつて「一旦緩急あれば義勇公に報……」じてきた人々、というものも、相手に受け入れられ、寛容されなければならない、というのは自然の流路と言える。
去年の正月、皇居の一般参賀に行ったが、今年も行くことにした。
ゆっくりと行列の尻に取り付いたが、なんと混雑すること。
後でニュースを見たが、平成最多の13万人近くが訪れたというのだから、さもあるべし。
そうは言うものの、せいぜい3時間待ちというところで、12時40分頃には長和殿前広場に入ることができた。午後最初の御光臨は13時半で、それに先立つ50分ほど前だから、まあ、丁度良いというところだろう。
それにしても人、人、人の波である。
天皇陛下、皇后陛下、皇太子殿下、皇太子妃殿下、皇族方が定刻にお出ましになり、巨大な波のように人々がどよもす。
私も感極まって「天皇陛下万歳!」と、肺腑も破れよとばかり絶叫し続けていたら、すっかり喉が枯れ、ルイ・アームストロングか浪花亭綾太郎ばりのシヴい声になった。
しかし、去年のように周囲に面白いおじさんや迷惑な男女がいるわけではなく、まあ、至って平静な感じの参賀であった。
今年はたまたま、背伸びなどしなくても長和殿のバルコニーが直視可能なごく近いところに位置することができたのだが、残念ながら逆光で、しかも皇居の豊かな緑がガラスに照り映え、
竹橋まで歩く。東西線・竹橋から飯田橋、JRに乗り換えて代々木、代々木から原宿まで行く。
明治神宮に参拝するのだ。今上天皇を参賀したら、今度は明治大帝を偲び、
ともかく参拝を済ませる。わずかな奉納で聖寿万歳から世界平和から自分の生活までよろしくと神頼みするのだから、そりゃまあ、虫の良すぎる話ではある。
お守りに鏑矢(破魔矢)を一つ頂き、御神籤をひく。明治神宮の御神籤は吉だの凶だのとは一切書いておらず、明治大帝の「おおみこころ」が書き記された誠にありがたいものである。
朝から何も食わずに家を出、新越谷のスタバでコーヒー一杯飲んだだけなので、夕方にもなってくるとさすがに腹が減り、北参道(JR代々木駅側)を出たところの露店でお好み焼きなぞ喰う。たまには良い。
酔っ払ってベランダに出てみると、思った通り、今日の月齢は望で、大きな大きな、明るく真ん丸のお月様である。
今日いただいてきた明治神宮の鏑矢と、多摩陵・多摩東陵両陵墓印(大正天皇・貞明皇后)・武蔵野陵・武蔵野東陵両陵墓印(昭和天皇・香淳皇后)を並べてみて、また今日参賀してきた今上天皇陛下・皇后陛下の聖寿万歳を思い、前世紀と今世紀について深く考えるのである。
いやーっ、ナイわー……。
多分、こんなことしたって労多くして功少なく、韓国人はますます絶叫激昂増長興奮、「日王を屈服させた」だの「日王室は朝鮮起源」だのと怒鳴るだけだろう。
恐懼、恐惶謹言。
「あー、2本狂惨盗と申しますが」と名乗る、まるでキチガイみたいな、恐るべき名前の男から電話がかかってきた。
よりにもよって、万物の霊長たる人間に、こんな姓や名があるなどとは思いもよらぬことだ。私自身の油断を言われると恥ずかしい限りだが、虚を突かれるというのはこういうことだ。
こんな姓名、そもそも、どこからが苗字で、どこからが名前かもわからない。
「2本」て、アンタ……。指を2本ですか?やめてくださいよ真ッ昼間っから。なんなんですか、物事は穏当でなくっちゃいけませんよ、ええ、ええ。
その人の電話の仕方も、こんな変な姓名をしている人そのもので、私の応答など関係なしに、ほとんど意味の解らない繰り言を延々と述べ続けるというスタイルだった。名は体を表す、というが、まったくその通りだと思う。
忙しかったのでその旨を丁寧に断り、電話を切った。物凄い名前のその男は、私が断っている最中も休みなくしゃべり続けていた。
よくわからないが、こんなことをしでかすのは多分、社会主義者か共産主義者だろう。ああ、怖い。そのうちにテロでも起こすのではないか。
しっかし、祝日ごとに軒先に国旗を掲げ、家の前で敬礼して「天皇陛下万歳」と叫び、毎年靖国神社に通っているような頭の悪い右翼(笑)の家へ、よく電話なんかかけてくる気になるなあ。エエ根性しとるわ。実際のところ、私の家のポストには、そうした日常の精神力が伝わるのか、変なビラなど1枚も入ったためしがないのだが。