よほど腹が立ったんだろうなあ
思うに、こういうのって、記事通りの悪辣非道なドコモ側、って話ではなくて、根拠のない憶測ではあるけれども、客の方がよほど腹の立つ、態度の悪い者だったんだろうなあ、という想像が何となくつく。
接客というのは、実に大変な仕事だ。
逆に、こんなことが問題になるほうがおかしい、接客する側にも人格というものがある、日本の接客が丁寧過ぎるのだ、……というような論もある。
日本の接客が諸外国に比べると過度なほどに丁寧な理由というのは、江戸時代の鎖国にまでその因を遡ることができると何かで読んだことがある。
すなわち、鎖国のために商品の需給は完全に内向し、極端な供給過剰となったため、一つの商品にできるだけ多くの関係者がぶら下がって利益を得る構造が出来上がった。これは問屋、卸、仲卸、小売り、……といった再販方式や、傘の骨作り、渋塗り、組み立て、皮貼り、などと言った手工業製品の過度の分業などに表れた。当然、価格は上がる。そのため「買い手市場」を招き、売り手はとことん低姿勢を追及し、慇懃を尽くして売ることに努めるようになった、ということだそうな。
今に至って尚、日本の接客は極めて低姿勢である。
逆に諸外国、特に欧米の接客は、客と対等に口をきき、尊大だったり、チップを要求したりする。客も、日本では「いらっしゃいませ」と店員が挨拶してもプイッと無視するが、欧米だと店員が「ハイ」と言うとあべこべに客の方で「ヘロゥ」と返したりする。これは重商主義時代のヨーロッパでは、商人は貴族の経済を支えるものとして地位が高く、「一般人より偉い人」ということになっていたから、というのも一因だという。日本の商人が、金は多く持っていても、「士農工商」ということで社会の低層に位置付けられていたのとは対照をなしていると思う。
欧米の商人は、王や貴族の行う侵略により外需を得、商品、ひいては経済が侵略先を巻き込んで回るから、自国内で低姿勢になる必要などなかったわけである。
遁走をキメ込んだカルロス・ゴーンが、商人のくせして妙に自信たっぷりで尊大なのは、そのせいかもな、などと思う。
女房まで指名手配とは
カルロス・ゴーンの逃走というと、これがまたなんだか、女房までが追い込みをかけられている。
しかしまあ、アレだな、前の女房のリタ・ゴーンなんて、文春あたりの扱き下し記事によると、日産の会社のカードで自分のレストランで使う食材なんか仕入れたりしてたと言うから、今の女房のキャロルにしたって、何れ、後ろ暗いところも多いんだろ。
「寵愛」て(笑)
しかし、どうでもいいことだけど、上の文春の記事、言葉が変だなあ。
提携交渉の際に企画室次長だった志賀は「ルノー派」だったことから、ゴーンに寵愛されたのだ。
「寵愛」て……。オッサンの職場の話やろ?ホモかっちゅうねん(笑)。国王の後宮とか側室の話じゃねェんだから、ここは「重用された」とか、「気に入られた」というふうに書くべきだろうね。……っていうか、いや、もしかしてホンマに寵愛されてたのか?最近「おっさんずラブ」とかいうのが流行してるからなあ……。
しかし、いくらダイバーシティってったって、モノには限度っちゅうもんがあるわな。時代によってその限度は変わるにしてもさ。
ホモで逮捕されたチューリング
時事ではないけれど、ダイバーシティからの連想で、チューリングのことを思い出した。
私など計算機関係の技術者にとって、英国が生んだ天才「アラン・チューリング」というのは、記憶しておくべき人物のひとりである。
チューリングというと、「チューリング・マシン」「計算可能問題」等についての提唱のほか、戦時中にドイツのエニグマ暗号を解く機械を開発したということで、イギリスにとっては救国の英雄とされている。
で、このチューリング、戦後、逮捕された。その後、失意の内に自殺したと伝わる。
その逮捕容疑が「ホモ」なんである。
「へ?ホモで逮捕?!」と、若い方なんかは思うかもしれないが、そう、イギリスではごく最近まで、「ホモは犯罪」だったんである。ホモで逮捕されると、ホルモン剤なんかを注射され、強制的に治療されたんだそうである。
多様性が尊重される今の世からは、まるっきり想像もつかないことだ。幕府の苛斂誅求極まった江戸時代の日本ですら、「おかま」は別段違法ではなく、「陰間茶屋」などというホモの淫売屋すら公然とあったのである。
その後、ごく最近になって、イギリスの当局はチューリングの名誉を復活すべく、謝罪声明を出したのだそうな。
私は未見であるが、チューリングについては、4~5年前に「イミテーション・ゲーム」という題で映画化されている。左のようにAmazon Prime Videoでも見ることができる。
聞いた話では「ホモに関するくだりは含まれていない」のだそうで、主題はエニグマの解読にあるようだ。