時事哀挙

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岡江久美子氏死去

 俳優の岡江久美子氏が時も時、新型コロナウイルスで亡くなったという。

 私などが子供の頃から、NHKの「連想ゲーム」の回答者として活躍していたことが印象に残る。当時、紅組に岡江久美子氏、白組に大和田獏氏が出ていたことも懐かしい。後に大和田氏と岡江氏は結婚したのであった。

 祈冥福(めいふくをいのる)

覚悟を決めて生き、死なねばならぬ

 私も未練を残すまい。

 私はいまや、各種保険に十分に加入しておいてよかったと思うし、およそ40年もの間ただのひと月も欠かさず年金を払い続けてきて本当に良かったと思う。もし仮に新型コロナウイルスに感染して来週死んだとしても、今後遺族が十分に食っていけるだけのお金は残るし、遺族年金も出る。

 過密・密集・密接・密室・密談・密着・内密・秘密、……などと、3密どころか蜂蜜(ハチミツ)ならぬ8密(ハチミツ)、否、八十(やそ)密と言っても過言でない東京などという馬鹿げた(うんこ)のような街へ何十年と通勤し続けていて、それでもし心ならずも新型コロナウイルスに感染して死んだとして、これは命運と言うほか、なにものでもなかろう。

 願わくば、私の死後、家族と親戚一同が、いつまでもグズグズ悩んだり悲しんだりせず、早々に私のことなど忘れ去り、「嫌な奴が死んで本当によかった」とでも言って、清々(せいせい)、晴れ晴れとしてくれればよいのだが。

コロナウイルスどこ吹く風

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 それにしても大東京のサラリーマン諸氏には恐れ入る。学校が休みになろうが政府の自粛指示があろうが、なんの関係もなく押し合いへし合いの満員電車で沈黙通勤、混み具合なんか普段と全く変わらない。「テレワーク?なんスかソレ。営業は足で稼ぐんスよ」みたいな顔をしている人が半分ぐらいいて、残りの半分は「ワシはマスクなんか絶対するものか、アメリカでは効果がないと言っている、だいたいマスクなんてものは、菌がこもって気色悪いんぢゃッ!」……というような顔をしたスッピン・マスクなしの頑固爺の群れである。女の人も、ヒールの(かかと)の音も高くカツカツカツカツ、「何がコロナウイルスよお給料貰わなきゃ生きていけないでしょうがバカヤローあほんだら!」みたいな怒りを眉宇(びう)にパンパンに(みなぎ)らせて、物凄い勢いで下りエスカレーターの右側を駆け抜けていく。

 今日の夜なんて、いつもどおり「ハナキン」の夜、街の居酒屋の入り口をちょっと覗くと、今時(いまどき)煙草の煙がもうもうと立ち込めた店の中で、酔眼のおっさん連中が冷奴なんぞを前に赤い顔して「それがよォ、お(めェ)、アッチのほうがコレもんでよォ」などと、大声で御託(ゴタク)を並べている。ガールズ・バーの前にはいつもと同じお姉さん、キャバクラの前にはいつもと同じお兄さんが呼び込みに余念がない。

 思うに、ネットで恐怖説を拡散しているのは、おそらくこうした、どこ吹く風の実際の光景など全く見ていないような自営業の人などが主体なのではあるまいか。

 人類はこれまで、梅毒やペストや結核や黄熱病など、恐るべき微生物感染症を克服してきた。そこからすると、今般の事態が収束した暁には、また新たな人類に進化しているだろう。無論、それは、このコロナウイルスなどどこ吹く風の強靭な背広通勤集団によってなされるのであろうことに疑いを()れる余地はない。