以前、天皇陛下や皇族方に関する報道の、敬称の用い方がどうも気に入らなかったり、畏れ多きことながら、お隠れ遊ばされた場合の新聞各社の用語が気に入らない、不敬なのではないか、なんてことをこのブログに書いた。
- 不敬と平板(このブログ)
しかし、ふと思った。確かに、昔はどの新聞も「
そこで、天皇陛下・皇后陛下・皇族方を判る限りリストアップし、その表を携えて図書館へ行った。有名な新聞(朝日・毎日・読売・日経・産経の5紙)について、遡れるだけ遡って、お隠れになった際にどの用語で報道されているかを調べた。
私が見つけることのできたもののうち、最も古い報道は明治41年の
その結果は次のとおりである。
- 主要新聞各社の天皇陛下崩御・皇后陛下崩御・皇太后陛下崩御・皇族方薨去等時の用語(Google スプレッドシート)
調べた結果から、興味深いことが分かる。
日本の右翼新聞というと「産経」で間違いないところだ。産経は先日三笠宮殿下が薨去された時も「薨去」と報道した。ところが、実は産経がこう書いたのは、平成26年に薨去された桂宮殿下の時だけなのだ。
桂宮殿下薨去より前は、産経も他紙と同じように、天皇陛下・皇后陛下を除き、「ご逝去」か「逝去」と報道していたことがわかる。終戦間際の
朝日・毎日・読売・日経はどれもこれも左翼新聞だが、戦後、昭和21年に薨去された伏見宮
それ以降は多くのいわゆる旧皇族方が皇籍を離脱され、報道そのものがないか、臣籍降下後の姓名で報道されていることもあって、薨去という用語は見られない。
戦前は、記事のない産経新聞を除いて、全部が基本的に「薨去」を用いている。天皇陛下・皇太后陛下・皇后陛下については、昭和26年の貞明皇后崩御時に朝日新聞が「御逝去」と報道している他は、言うまでもなくすべての陛下に「崩御」が用いられている。唯一変わっているのは、北白川宮永久王殿下は戦死されているため、各紙の記事も「戦死遊ばさる」等の表現になっていることだろうか。
ここから言えることは、右翼新聞を
また、昭和41年生まれの私は、新聞記事で「薨去」という言葉を見たことがない、ということも明らかなことだ。
だがしかし、それなのに、である。私は「薨去」という言葉を見て育ったような気がするのだ。なぜだろう。
これは、おそらく周りの大人が「薨去」「崩御」という言葉を使っていたこと、また、特に父母などは「昔やったら、天皇陛下が亡くなりはったら『崩御』、皇族方は『薨去』と書いたもんやった」などと普段から言っていたから、それを聞いて育った私は新聞で見たように思い込んでいたのだと思う。
私は、「薨去」等の言葉を知らない人なんて少数派で、単に「ものを知らんだけだろう」と思っていた。だが、上述の調査の結果、それは実は誤りだ、ということも分かった。
昭和28年に秩父宮殿下が薨去されてから62年間、「薨去」と言う言葉は、産経が2回使った他は、新聞では使われていないのだ。したがって、今50歳の私は、生まれてからこのかた「薨去」という言葉を新聞で見たことなど、
新聞という大メディアに載らない言葉を、普通の人が知っているわけはないのであり、「薨去」という言葉を知らないからと言って「もの知らず」ということにはならない。反面、だからと言ってもの知りということにもならないことは自明だ。それら
但し、新聞では使われていないが、公的機関の発表等は厳格に「薨去」が使われている。
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