読書

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 あまり乱読はする方ではなく、一つの本やシリーズを最後までシリアルに読み通すほうだ。今は読んでいる最中の平凡社「世界教養全集」にかかりきりとなっている。これは全34巻別巻4巻からなる浩瀚な全集で、ほぼ60年ほども前の、ISBNもない時代のものだ。

 ところが、ちょっと脱線した。去年死去した西村賢太の「雨滴は続く」をこの前読んだら、代表作の「苦役列車」がまた読みたくなった。文庫で蔵書の筈なのだが、なぜか本棚に見あたらない。探すうち、長女にやってしまったことを思い出した。高いものではなし、もう1冊買ってやれと本屋へ行った。先週の土曜、3月18日のことだ。

 新潮の棚の「苦役列車」の横に「(やまいだれ)の歌」があった。これは読んでおらず、思わず手に取った。そして、そのすぐ近くにつげ義春の「新版 貧困旅行記」があり、それもつい手に取った。

 3冊買い、苦役列車は再読だから、土曜のその夜のうちに読み終えた。すぐに「疒の歌」を読み、日曜には読み終えたのだったか。

「新版 貧困旅行記」は通勤の行き帰りにゆっくり読み、先ほど読み終わった。

 なんというか、西村賢太は気になって読んでしまうし、つげ義春は好きだしで、気分が変わって楽しい読書だった。

 追而書き;しかも、土曜日の夜「苦役列車」を再読する直前の同じ土曜日の午前中、新宿で映画「仕掛人・藤枝梅安 一」を見るために、原作の「殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一)」を土曜日の朝に読んでいる。相当乱読かもしれない。

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。

 第24巻の一つ目「アムンゼン探検誌 My Life As an Explorer」(R.アムンゼン Roald Amundsen 著、加納一郎訳)を帰宅後の自宅で読み終わる。

 第23巻から探検ものが続く。わけても、この「アムンゼン探検誌」は私の若い頃からの愛読書だ。そしてロアール・アムンゼンは私が尊敬する人物の一人だ。

 再読してみてわかることだが、アムンゼンが非常に厳しく、強い性格であることが伝わってくる。訳者加納一郎による解説にもそのことが触れられている。

 アムンゼンは本書の中で飛行船ノルゲ号とその操縦士ノビレを糾弾することに多くの紙数を費やしている。ノビレを恥知らずな人物として()()ろして()まない。

 だが、歴史の通り、その後アムンゼンは憎きノビレが同じ北極で遭難したと聞くや、旧恨を捨てて敢然その救助に向かい、逆にアムンゼンは今に至るも永久に不帰の人となり、その勇気を讃えられ惜しまれた。一方のノビレ当人は傷ついた部下隊員を見殺しにして生還し一世の失笑を買ったことは、悉皆世界これを知るところである。

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。

 第23巻の最後「暗黒大陸 Through The Dark Continent」(H.M.スタンレー Henry Morton Stanley 著、宮西豊逸訳)を帰宅後の自宅で読み終わる。

 「ベーリングの大探検」も空前絶後の探検誌だったが、こちらは少し趣きを変える。どうも、現地住民に対する暴力と殺戮が多いということだ。自衛、正当防衛とは言いながらこれは言い訳で、多分、著者スタンレーはアフリカの人を人ではないものと考えていたのではなかろうか。そう書いて書き過ぎなら、「劣ったもの」として見下げているふしが感じられる。探検の壮大さに感動するというよりも、当時の白人の考え方やものの見方を差し引くとしてもそういうところがなにやら不快で、面白い読み物ではなかった。

 第24巻に進む。第24巻は「アムンゼン探検誌 My Life As an Explorer」(R.アムンゼン Roald Amundsen 著、加納一郎訳)、「人間の土地 Terre Des Hommes」(サン・テグジュペリ Antoine Marie Jean-Baptiste Roger, de Saint-Exupéry 著、堀口大學訳)、「たった一人の海 Seul a travers L’atlantique a la poursuite du soleil sur la route du retour」(A.ジェルボー Alain Gerbault 著、近藤等訳)の3書だ。

 このうち、「アムンゼン探検誌」については若い頃から再読三読している。愛読書と言えよう。今回は読み飛ばそうかとも思ったが、また読んでみようと思う。

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 昨年急死した西村賢太の遺作「雨滴は続く」を帰りの通勤電車内で読み終わった。

 私はそこまで西村賢太ファンというわけでもないが、気が付くと「苦役列車」「小銭をかぞえる」「暗渠の宿」「廃疾かかえて」「一私小説書きの弁」など、いくつも買って読んでいる。

 「苦役列車」を読んだのはもうだいぶ前の事だったと思うが、その後はプッツリ読んでいなかった。その間、多くの作品が出されていたようだ。

 この遺作「雨滴は続く」が未完に終わったあと、作中に変名で登場する古書店主や新聞記者が「文學界」の追悼号に文を寄せているという。興味本位だが、読んでみたいものだと思う。

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 昨年急死した西村賢太の「蝙蝠か燕か」を読んだ。このところずっと読んでいる平凡社の世界教養全集を取り敢えず置いておいて、これを読んだ。日曜日の夜から読みはじめ、明け方にはほとんど読み終わった。残りを行き帰りの通勤電車で読んだ。

 あの荒んだ感じが鳴りをひそめ、なにか殊勝らしい感じになっていて、読みごたえと言うことだと覗きのような悪趣味が満足されることはないように思う。

 西村賢太には最近発売されたものにこの「蝙蝠か燕か」の他に「雨滴は続く」があり、両方とも同じ2月4日の土曜日に買ったのだが、「雨滴は続く」は品薄らしく、まだ届かない。

 こちらは遺作で、未完だという。

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。

 第23巻の二つめ「ベーリングの大探検 Vitus Berings eventyrlige opdagerfærd」(S.ワクセル Sven Waxell 著・平林広人訳)を行きつけの蕎麦屋「SOBA満月」に並んでいる間の待ち時間に読み終わった。

 ところで、この巻の最初、S.ヘディンの「シルク・ロード」を読み終わったのが去年の8月22日だ。それから半年ほど経っているのだが、どうしてこんなに間が開いたのかと言うと、その間の9月30日に定年で自衛隊を辞め、今の会社に就職して忙しかったので、ゆっくり本を読んでいる暇がなかったからである。

 さて、この「ベーリングの大探検」。今から300年近くも前、日本で言うと江戸時代に、ベーリング率いるロシア帝国の探検船隊は北太平洋アリューシャン列島を踏査し、島伝いに東方遠く、米国の西海岸までを極めたという。途次日本の周囲を遊弋して沿岸にも立ち寄っている。この記録は日本側にも異国船の記録として残されていて、ベーリングの探検の裏付けとなっている。

 ただ、ベーリングは天候に悩まされ、その名を後にまで残すこととなったベーリング島へ避難してその地で帰らぬ人となり、数千人いた探検隊も著者ワクセルとともに生還し得たのは40人ほどであったというから、凄まじい大探検である。

 引き続き第23巻「暗黒大陸 Through The Dark Continent」(H.M.スタンレー Henry Morton Stanley 著、宮西豊逸訳)を読む。

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第23巻のはじめ、「シルク・ロード The Silk road」(S.ヘディン Sven Hedin 著・長尾宏也訳)を職場で昼休みに読み終わった。

 本書は、スウェーデンの探検家ヘディンが戦前の中国で往古の「シルク・ロード」を自動車で踏破したときの記録である。

 著者は言わずと知れたかのヘディンであり、彼の最も有名な業績は、新疆ウイグル自治区にその名も(しる)き「ロプ・ノール」の探検・発見と、その位置遷移について研究発表したことだろう。

 シルク・ロードの探検時には既に齢70を超えていたという。老いて尚旺盛なる探求心に感服する。


 次は引き続き第23巻「ベーリングの大探検 Vitus Berings eventyrlige opdagerfærd」(S.ワクセル Sven Waxell 著・平林広人訳)を読む。これも探検の書である。

2の(べき)乗漫話

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 このエントリの話は、別のエントリで、少し脚色して、別の話にして書いたことがある。下のリンクの通りだ。

 今回書くのは、上リンクのエントリの元になった話である。

先祖の数とビット数

 ある日、ある時、ある場所で、ある人が次のような話をした。 “2の(べき)乗漫話” の続きを読む

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第22巻の最後、「アルプス登攀記 Scrambles Amongst the Alps」(E・ウィンパー Edward Whymper 著・石一郎訳)を帰りの通勤電車の中で読み終わった。たまの気晴らしで「THライナー」の座席指定券を買い、ゆっくり座って読み終わることができた。

 本書は、ヨーロッパ・アルプスに於けるアルピニズム黎明期の第一人者、ウィンパーその人が記した名著である。

 著者は職業的登山家ではなく、本職は “読書” の続きを読む

読書

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 引き続き平凡社の60年前の古書、世界教養全集を読んでいる。第22巻の3書目、「山と渓谷」(田部(たなべ)(じゅう)()著)を帰りの通勤電車の中で読み終わった。

 本書は、明治時代から昭和まで活躍した登山家、田部重治氏の山行記録である。日本アルプスを中心として、まだ地図もないような時代に山野を跋渉しているが、冒険というようなこととは趣が異なり、山野の美しさや山を行く深い情緒に心底惚れ抜いていることが滲み出るような文章である。

 この「山と渓谷」は色々な編集のものがあり、私は “読書” の続きを読む