俺とグレやん

投稿日:

 俺も仕事をボイコットして、二酸化炭素を増やすような奴らは滅んでしまえ!……とか物凄い顔で(わめ)いてみたいなあ。

 しかし、そんなことをすればアッという間にクビになり素寒貧(スカンピン)、一家は離散、昨日の主張もどこへやら、二酸化炭素を放出する企業への働き口を探して右往左往、……だろうなあ。

 だから、(だい)の大人がグレやんの真似をするわけにはいかない。

 そこでふと思いついたのだが、何の責任もない中学生に変な知恵を吹き込んで(あお)り立て、民族主義だとか女権、あるいは男権、宗教など、対立と分断を煽る様なことを言わせて操れば、世間の耳目を集めてちょっとしたビジネスになりそうではある。

 これが女の子であればなおよい。……いや、性同一性障害や薬物中毒など、話題の現代的な疾患に悩む子供なら、更に良いかもしれない。

 戦地から頭の良い子供を連れてきて、これくらいのことを言わせれば、もっと目立つな。

 グレやん。いろいろ参考になるのう。

便箋、賢い人

投稿日:

 文房具店できれいな便箋をみつけた。それを買って、あの人に手紙を書いた。空と海のことと、恋のことを書いた。

 ところが、つかつかと寄ってきた知り合いが、

「便箋で手紙っ!?紙は貴重な森林資源なんだぞ(中略)二酸化炭素(中略)地球温暖化(中略)電力(中略)原子力発電反対ーーー!」

と、横あいからマシンガンのようにまくし立て、あまつさえ便箋を取り上げてビリビリに破いて捨てた。

 私がやめてよというと、はぁお前デジタル使えよツイッターとかフェイスブックとか知らねーのかよバカじゃねーのタブレットだったら森林齧らねえだろ、と言い返された。

 私は、大切なあの人に、心を込めた文字で気持ちを伝えたかっただけだ。二酸化炭素も原子力も私にはわからない。タブレットやツイッターを使えば原子力がいらなくなるという理屈もわからない。私はばかなのだろう。

 手紙を書いたら、そのせいで即座に有害な放射線が私たちに襲いかかってくるという理屈なら、たしかに、悪いやつをやっつけたら、すぐさま核戦争になるから悪いやつをやっつけること自体最初からダメ、ということになるのだろう。それが、賢い人の、賢い論法だ。

 賢い人はなんでもかんでも一足飛びですごいなと思うが、だから賢い人は嫌いだ。計算が早いから嫌いだ、文字をいっぱい知っているから嫌いだ、私をやりこめて黙らせてしまうから大嫌いだ。

 今の私は、きれいな便箋に、空と海と恋のことを記してあの人に送りたいだけだ。

(※ この文章は、妄想を散文化しただけですので、実際の出来事・人物とは何の関係もありません。)

(当時、Facebookに書いたものです。)